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とらのひとりごと


長い一本の
畦道を歩いていくと


あの子に逢える


あの子は

いつの日からか
あの家の庭に住み着いている


気が強いけど

可愛いんだー

まぁ
オレの片想いなんだけどね


あの子の
住み着いた家には

優しいおばさんがいてさ

オレに会うと話しかけてくれてさ

ご飯もいっぱいくれるんだ


そして

オレは

いつの日か

あの子より

おばさんに逢いに
いくようになったんだ



ある日

おばさんが
オレを去勢手術に連れてった

TNRって言うんだってさ



手術は無事に終わったんだけどね

帰ったら
おばさん泣いてるんだよ

オレね

横隔膜ヘルニアなんだって


多分あれが
原因なのかなー
って

心当たりあるんだけどね


おばさんは
手術しようとしてくれたみたい


だけどね

実は
オレには飼い主がいたのさ

名前もあった


オレのこと

とら

って名付けて呼んでたし
おばさんびっくりしてたよ


おばさんは

飼い主に
オレの病気のことを話した

飼い主は
オレを自然に任せると言った


そこは

仕方ないよね

おばさんにもオレにも
決められないからね


その日からも
オレは通ったよ

おばさんとあの子に逢いに!

おばさんは変わらず
オレに優しくしてくれたし
見守ってくれた

あの子ともいい感じになったし
仲間も出来た

楽しい毎日だったよ



10月のある暑い日だったな

やっぱりダメだったよ
身体がキツくなった



もう死ぬんだな

って感じた


林の中で
こっそり
死のうとも考えた

でも

出来ることならば

おばさんに
オレの亡骸見つけて欲しくてさ

おばさんちの玄関脇を
最期の場所に選んだんだ

案の定
おばさんはオレを見つけた

かなり泣かせたけど

おばさんの庭には
沢山思い出があって

あの子や仲間が居たからさ

みんなにお別れ言いたかったんだ



ここで過ごした時間

忘れないね

みんなもオレを
忘れないでね

ずーっと見守ってるよ
ありがとう


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