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私は不倫している。第11話バレそう

惚れた方が負けという言葉を聞いたことがあるが、私たちの場合完全にこっちが敗北者である。そして私はそれでよいと思っている。
その方が都合が良いからだ。妻といるときに頻繁に連絡が来たりするのはコチラが困るし、急に会いに来られても対応できない。

先日、若い従業員から「雨男さん橘さんと話すとき態度違いますよね。」と言われてしまった。完全に隠し通せていると思っていたが、女性は鋭い。この時はちょっと汗をかいた。
「なぜそう思うの?」と聞いたら、「見てれば誰だってわかりますよ。」とのことだった。
迂闊だった。社内では全く態度に出さないよう(最初のころは反省しているが)にしているつもりなのになぜそう思われてしまったんだろう。

男性は好きな女性を目で追いかけてしまう習性があるらしい。これは男性特有のもので、特に顕著なのは目当ての女性がほかの男と会話していたりする時だそうだ。オスは競争社会の中で活きている。自分のメスである彼女とかがほかのオスに奪われるのを本能的に我慢できないそうだ。これは当然のことで、生物の根本的な欲求はつまるところ繁殖にある。自分の子孫を残すためにはほかのオスの存在を認めるわけにはいかないからだ。一方女性の場合、より強い遺伝子を持つオスを選ぶ権利があり沢山の中から厳選することが可能だ。何より子育てする場合、何十年も育て上げるわけだからより強いオスを選んだ方が良いに決まっている。

つまり私が橘絵里を目で追っているというのをこの若い従業員は気づいていたのだ。仕事のことであっても彼女がほかの男性と楽しそうに談笑していると我慢ならないときがあるのも事実だ。そういう時は大して意味もなく、呼んだりして簡単なことを質問したりしている。なんと大人げない。

色んな自分に気づかされる毎日だ。というわけで毎日敗北を実感している私だが、嬉しいことに彼女は時々手を触れてくる。会社ですれ違う時や給湯室などでそっと手が当たる程度だがそれがたまらなく心地よい。

多分こういった行動が積み重なり、社内にバレていくのかもしれない。
気を付けよう。

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