私は不倫していた。20話:求める

誰かを失ったからにはやはり心に穴が開くのだろう。私に圧倒的に足りないのは癒しだ。詳しくは書けないが、私の家庭環境は全くと言っていいほど癒されるものではない。

強いて言うなら、一緒に住んでる猫と犬には癒されるが残念ながら妻との関係は癒しというにはほど遠い。
しかし、決してここで悪口をいうつもりもないし、別に嫌いなわけでもない。ただこの何年かで癒し合える関係ではなくなったというだけで生活のパートナーには変わりはない。複雑なので詳しくは割愛する。

人の幸せは大きく分けて3種類あると言われている。脳科学的な話をすればそれはセロトニン、オキシトシン、ドーパミンという脳内ホルモンによって感じる感覚だ。ざっくり言うとセロトニンは安全に生きていられる幸せ、オキシトシンは誰かと触れ合う幸せ、ドーパミンは金や勝利などの時の幸せを差す。この中で大きな割合を占めるのは実はセロトニンとオキシトシンで幸福全体の実に80%がこれにあたる。私に当てはめればセロトニンはとりあえず満足できている。食いっぱぐれる心配も今のところないし、雨風をしのげるマイホームもある。ドーパミンについては元々ギャンブルもしないし、金にそこまで執着もないので筋トレでおそらく補完できている。とすると問題はオキシトシンだ。誰かと触れ合う幸せ。犬や猫でもある程度良いらしいが、私は性的にそれらに興奮する特殊性癖は持ち合わせていないため出来れば人間でその幸せを感じたいと思っている。やっかいなことにこのオキシトシンは金銭を介した関係では出づらいと言われており、夜のお店で解決できないのが特徴だ。まあ元々行く趣味はないんだけど。
よって、私がオキシトシン的な幸せを感じるには恋人を作る以外に方法はなさそうだ。
じゃあ私にとっての癒しは何なのか。ちょっと前までなら言うまでもなく橘絵里だったが、元カノの存在に癒しを求めてもどうなるものでもない。かといって新しい出会いを能動的に探すというのも心のブレーキが働いてしまう。気の置けない友人(職場にいる全くタイプでない腐れ縁女性)からはマッチングアプリを進められたが、どうも食指が伸びない。

そんな中最近できた新しい友人とのやりとりに結構救われていたりする。知り合って期間はまだ短いが、実に誠実な印象の人だ。こちらもご本人のこともあるので詳しくは書かないでおくが、今一番私が癒しを感じているのはこの人とのやり取りだと思う。私にとってはかけがえのない友人であると思い始めている。いつもありがとう。

しかし現実問題として、実際には多くの時間を一人で消化しているため、その時間をどう埋めるかが現在の私の課題だ。難しい御託を並べたが、要は単純にドキドキしたいだけかもしれない(笑)不倫をする人は一つの恋愛が終わると繰り返す癖がつくという。実は元カノが初めての不倫だったため、まだ私は不倫初心者であるともいえる。諸先輩方はどのように恋人を失った寂しさを埋めてきたのだろうか。
そして、どのように今のパートナー(不倫であってもそうでなくとも)と出会ったのだろう。結婚後、橘さんとしか出会わなかったため、恋愛的な出会いの感覚を忘れてしまっている。もちろん誰でもいいわけではないので、自分から積極的に行動しないと多分「そうなる」ことはない。かといってその辺でナンパをするにはそれなりに年を取りすぎている自覚もある。流石に40に近いおっさんがその辺の街中でナンパというのも最高にカッコ悪い。
運命的な出会いがあるほどのイケオジでもないので、本当に今は筋トレ、仕事、料理、犬の散歩しかすることがない。あれ、これ結構詰んでる?

別に一人で楽しんで生きていけばいいだけというような気もするが、ときめきが欲しいと感じているのも事実だ。とりあえずいつか来るかもしれない来るべき日のために自分磨きには精を出しておくが、積極的に出会いを求めて行動するほど傷が癒えていないと感じている11月の寒い夜だった。

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