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雨上がりの公園は魔性の女

雨上がりの公園って、爽やかそうであるが、時に残酷だ。
幼い心で遊ばないでほしい。

僕の小学生時代を振り返ると、サザエさんの中島であった。

ただ、家まで行って「おーい、磯野ー、野球しようぜ」とは言わない。

クラスの電話帳を上から順に男子のお家に電話をかける、
テレアポ方式をとっていた。野球の人数集めである。

週に何回も電話を掛けてくる僕に、
世のご両親達は何を思っていたのだろう。

時に、「息子は塾です。」と話も聞いてもらえなかったことを覚えている。

まあ、フルメンバーじゃなくても5-6人いれば野球は成立する。

テレアポの努力の結果、本日も6人程度メンバーを集めることが出来た。
基本的にお友達の両親には礼儀正しく接する良い子なので、
比較的嫌がられずに友達を集められる。当時はピュアの塊。

にわか雨が降ってきた。

あ~あ〜。どないしょ。

基本的には雨天決行で野球はしたい。
もうプレイしてたら、雨で止めるつもりは毛頭ない。

ただ、母が僕の気持ちを静止してくる。

風邪ひくし、みんなに迷惑かけるから、今日はやめとき。

僕は未だ諦めない。

ほな、一旦今日は様子見って奴やな。

絶妙に母の意向を汲みながら、遊ぶ可能性を残す
合意形成を図った。

未だ集合まで時間あるし、
結構野球が出来る公園は距離があるので、
とりあえず電話で一旦様子見よと皆に伝えた。

まあ、にわか雨である。
割とすぐに上がった。

雨が上がると、いざ出陣である。

水溜りで遊べないかも知れないよ。
知るか。行ってみないと、分からないのである。

書きながら思ったのだけど、公園って凄い。

雨が降っていると、遊具が濡れていたり、お子さんにとって危険なので、
どんな都心部に公園が存在して、周りに人がいようと、
公園の中には人間はいない。

人間は、雨の日の公園を前に何も出来ないから。あの静けさって、美しい。

話を戻すと、雨が上がったその瞬間に
電話越しに出陣の知らせを友に伝え、
公園へ自転車を爆走させた。

もう、オチはわかっているでしょう?

大きめの水溜りが、我々を拒むかのように、
広がっていて、無傷に野球を行える空間ではなかった。

ピッチャーが投げるたびに、
水溜りがスプラッシュする野球はしたくない。

雨が上がったポジティビティを盾に公園は人を誘い込み、
そして最後に嘲笑ってくるのである。

雨の日は勿論、雨が上がった日でも人は公園に対して無力である。

奴らの幼き心をくすぐる変幻自在さは愉快である。
晴れの公園は、マイベストフレンド。ウェイウェイ。
雨の公園は、絶対に子供は入るなという厳格な先生。ただ、少し寂しそう。
雨上がりの公園は、誘っておいて、急にプイってそっぽむく魔性の女。

雨上がりの日に公園に行って、立ちすくんだのは一度や二度じゃない。
僕たちは、ずーっと魔性の女に誑かされ続けた小学生だった。
けど、後悔はしていない。
たまに、機嫌がいい時は雨上がりに遊んでくれたから。

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