見出し画像

『マジンガーZ対暗黒大将軍』:1974、日本

 夏のある日、ボス、ムチャ、ヌケの3人は、海で遊んでいた。突然の雷雨に見舞われた彼らは、崖の上に謎の機械獣らしきシルエットを目撃した。まばゆい閃光に気絶した3人が目を覚ますと、廃船の舳先に白髪の預言者が立っていた。
 預言者は「間もなくこの世の終わりが来る。墓場から死者が甦り、全世界に不幸を撒き散らすであろう。暗黒大将軍は襲い掛かり、全世界の都市を破壊するであろう。それに立ち向かえるのはただ1つ、鉄の城、マジンガーZだ」と語った。

 光子力研究所に戻ったボスは、兜甲児と弓さやかに預言者のことを話すが、全く相手にされなかった。さやかと踊り始めた甲児は、弟のシローが自分の誕生日プレゼントを買うために町へ行っていることを知る。
 その時、ラジオから、「巨大なロボット軍団が陸と海から出現し、ニューヨーク、パリ、ロンドン、モスクワなどの大都市が壊滅的な打撃を受けました」というニュースが聞こえて来た。

 ゴーゴン大公は「残るは俺が作戦を担当する東京だけか」と不敵に笑い、戦闘獣軍団に出撃を命じた。悪霊型戦闘獣ダンテ、昆虫型戦闘獣ライゴーン、鳥類型戦闘獣バーディアン、爬虫類型戦闘獣ジャラガ、猛獣型戦闘獣マモスドン、魚類型戦闘獣スラバが出現し、東京へと向かった。
 甲児とさやかは次の標的が東京だと確信し、弓教授の元へ赴いた。甲児は弓教授から、マジンガーZでパトロールするよう命じられる。シローがプレゼントを持って来るが、甲児は「急いでるんだ、そいつは後だ」と告げて走り去った。

 マジンガーZがパトロールに出た後、未確認飛行物体の出現が確認されたため、さやかはダイアナンAを出動させる。ボスもボスボロットで出撃した。そこへロボット軍団が現われるが、上空を通過して東京都心へと向かった。
 東京に現れたロボット軍団の前に、マジンガーZが立ちはだかった。機械獣が喋ったので、甲児は驚いた。マジンガーZはスラバによって海底に引き擦り込まれ、その間にダンテたちが東京の街を破壊する。ゴーゴン大公はダンテとマモスドンに、光子力研究所を破壊するよう命じた。

 マジンガーZはスラバを倒して海底から脱出するが、ジャラガにジェットスクランダーの翼を溶かされて飛べなくなった。同じ頃、ダンテとマモスドンが光子力研究所を襲撃していた。光子力研究所のバリアーは簡単に解除され、ダイアナンAとボスボロットも全く歯が立たない。
 光子力研究所は破壊されていき、所員は地下へ緊急避難することになった。弓はさやかにも、ボスと一緒に避難するよう連絡を入れた。ダイアナンAは腹から真っ二つにされてしまい、さやかはスカーレットモビルで脱出した。

 シローは避難する途中、甲児への誕生日プレゼントを置き忘れてきたことに気付いた。プレゼントを取りに戻った彼は、マモスドンに破壊されて崩れた瓦礫の下敷きになってしまう。苦戦している甲児の元に、さやかから「シローちゃんが大変なのよ」という連絡が入る。眼前の敵2体を何とか倒した彼は、急いで研究所へ戻った。
 するとシローは重傷を負い、意識不明となっていた。すぐに輸血をしなければ大変だと言われ、甲児は戦闘で疲れた体でありながら、輸血を願い出た。手術は終わったが、まだシローの意識は回復しなかった。

 マジンガーZの修理が急ピッチで進められる中、「間もなく、この世の終わりが来る」という声がした。甲児たちが外に出ると、そこに預言者が立っていた。預言者は「奴らは大軍を率いて再び攻撃して来る。ミケーネの暗黒大将軍と、奴の手による戦闘獣、七つの軍団だ。マジンガーZは死の苦しみを味わうに違いない」と宣告して姿を消した。
 弓教授は甲児に、彼の祖父・十蔵が亡くなる前に言い残した言葉を語る。それは「地底に眠る七つの種類のロボット、そして暗黒大将軍」という言葉だった。

 ゴーゴン大公は暗黒大将軍の元に参上し、東京の壊滅を報告する。だが、暗黒大将軍はバーディアン、ジャラガ、ライゴーン、スラバが倒されたことを叱責した。
 さらに彼は、ゴーゴン大公が地上のあらゆることを報告するために放たれたにも関わらず、マジンガーZについて黙っていたことに激怒した。暗黒大将軍は獣魔将軍を呼んで司令長官に任命し、「7つの軍団から精鋭を選りすぐり、マジンガーZを捻り潰しに行け」と命じた。

 弓教授は甲児たちに、滅亡したはずの古代ミケーネ人について語る。十蔵の遺品を調べた結果、暗黒大将軍の率いる古代ミケーネ人が地底に潜み、再起の時を待っている可能性が高いと記されていた。「彼らを迎え撃つ手段は何も無い」と弓教授は言う。マジンガーZは修理に時間が掛かり、今は無力に近い状態だというのだ。
 その頃、獣魔将軍は昆虫型戦闘獣ワーダム、人間型戦闘獣アルソス、鳥類型戦闘獣オルピィ、爬虫類型戦闘獣グロスデン、猛獣型戦闘獣ブルンガ、魚類型戦闘獣アルギモンを率いて日本ヘ向かっていた。

 光子力研究所は、戦闘獣が日本へ向かっていることをキャッチした。甲児はシローが意識を取り戻したと知り、ドクターに弟を任せた。彼はマジンガーZの修理が終わっていないにも関わらず、弓教授の制止を振り切って出撃することを決める。
 さやかは甲児に、シローのプレゼントを手渡した。それはオルゴールだった。傷だらけのマジンガーZに乗り込み、甲児は戦いに向かった。

 マモスドンを倒したマジンガーZはジェットスクランダーで空を飛ぶが、やって来たダンテに翼を破壊されて墜落する。そこには獣魔将軍と新たな戦闘獣が待ち受けていた。
 光子力ビームが通用せず、甲児は「強い、手が出ない」と弱音を吐く。ボロットが「俺が助けに行ってやりてえや。しかし今からじゃ間に合わねえ」と言うと、さやかは「ボス、空を飛ぶのよ」と言い、ボスを連れて行く。

 マジンガーZはアイアンカッターを獣魔将軍に簡単に壊され、オモチャみたいなロボットと見下される。ルストハリケーンはダンテに弾き返された。ボスボロットが突っ込んでダンテを倒すが、あっさりとワーダムに弾き飛ばされた。
 マジンガーZは必死に戦うが、敵の圧倒的な力に破壊され、絶体絶命の危機に陥った。その時、預言者が現れ、「マジンガーZが倒れる。見殺しには出来ん」と口にした。預言者の正体は、死んだはずの甲児の父・剣造だった。

 剣造は「ブレーンコンドル!」と叫び、「剣鉄也、時は来た。グレートマジンガーを出動させ、暗黒大将軍の七つの軍団を叩き潰せ」と指令を出した。剣鉄也が乗り込むブレーンコンドルが飛び立った。
 「マジーンゴー! ファイヤー・オン!スクランブル・ダーッシュ!」の掛け声で、新たなロボット、グレートマジンガーが出撃する。海でボスが見た機械獣らしき姿は、グレートマジンガーだったのだ。グレートマジンガーはマジンガーZの前に現れ、圧倒的な強さで戦闘獣を次々に倒して行く…。

 演出は西沢信孝、原作は永井豪とダイナミック・プロ、脚本は高久進、製作は登石雋一、製作担当は茂呂清一、企画は有賀健&旗野義文、作画監督は角田絋一、美術監督は辻忠直、撮影は吉村次郎&相磯嘉雄、編集は千蔵豊、録音は池上信照、音響効果は伊藤広道、音楽は渡辺宙明、主題歌『空飛ぶマジンガーZ』『グレートマジンガー』は水木一郎。

 声の出演は石丸博也、田中亮一、江川菜子、沢田和子、八奈見乗児、大塚周夫、大竹宏、田の中勇、富田耕生、小林清志、内海賢二、加藤修、野田圭一ら。

 東映まんがまつりの一編として公開された43分のアニメーション映画。前年の『マジンガーZ対デビルマン』に続いて作られた劇場版“マジンガー”シリーズの第2弾。
 今回はTVアニメ『マジンガーZ』の終了後に放送されることが決まっていた『グレートマジンガー』の主人公・剣鉄也とグレートマジンガーを登場させている。TVアニメ『マジンガーZ』でも最終回で引継ぎが行われたのだが、それに先駆けて、「動くグレートマジンガー」を初登場させているわけだ。

 『グレートマジンガー』の登場人物に関しては、TV版とは声優が異なっている。剣鉄也は、TV版では野田圭一だが、この映画ではデビルマンの田中亮一が担当。剣造役は、TV版では柴田秀勝で、本作では大塚周夫。
 暗黒大将軍役は、『マジンガーZ』の最終回では富田耕生、『グレートマジンガー』では緒方賢一だが、この作品では小林清志が担当している。獣魔将軍はTV版では登場せず、この映画だけのオリジナルキャラクターだ。

 『マジンガーZ対デビルマン』ではタイトルのようなマジンガーZとデビルマンの戦いは無かったが、今回もマジンガーZは暗黒大将軍と戦っていない。その手下と戦うだけだ。その手下である戦闘獣は、ロボットと言うよりも、デビルマンの妖獣に近いイメージだ。
 TV版の最終回で登場した戦闘獣は2体だけだが、映画では13体も登場する。また、TV版とは異なり、言葉を話している。

 『マジンガーZ対デビルマン』はTV版前期に公開され、これは後期に公開された。その間に、ホバーパイルダーがジェットパイルダーになり、アフロダイAがダイアナンAになり、さやかの声優が江川菜子に交代し、ボスにはボスボロットが与えられた。
 ちなみに前作とはキャラクターの絵柄が少し異なっているが、これは別にTV版後期に合わせているけではない。作画監督は前作と同じ角田絋一なので、たぶん原画担当者の持ち味なんだろう。

 甲児は最後の戦いに出撃する前に、甲児は父・剣造と祖父・十蔵の写真を見ながら、「正直言って、出撃することが怖い。でも僕は、マジンガーZと共に命を懸けます」と誓う。出撃しようとする直前、甲児はシローが意識を取り戻したのを知り、「兄貴みたいなムチャな真似はすんな」と涙を浮かべる。
 弓教授が「マジンガーZの修理はまだ終わっていない」「君は多量の輸血をして弱っている。今、出撃することは死を意味する」と制止しても、「覚悟しています。戦って戦って、それでも敵わない時は、マジンガーZと共に死ぬだけです」と強い口調で告げる。
 熱いぜ。そして感動させるぜ。

 マジンガーと共に死ぬ覚悟を固める甲児に、さやかはシローからのプレゼントを渡す。ここも感動的なポイントなんだけど、さやかが涙を流して「甲児くん」と言うだけで走り去るのは、ちょっと不満が残る。せめて甲児が抱き締めるシーンが欲しいよなあ。
 たぶん子供向け映画だからラブシーンは避けたんだろうけど、キスを回避するのはともかく、抱き締めるぐらいはいいんじゃないか。

 とにかく今回は、戦闘獣の強さがこれでもかというぐらい描かれる。序盤からマジンガーZは大苦戦を強いられ、何とか敵を倒すものの、かなりのダメージを負ってしまう。
 これまで多くの機械獣を倒してきたマジンガーZがメタクソにやられる姿を描くことで戦闘獣の強さを示し、その戦闘獣を簡単に倒すグレートマジンガーの強さをアピールしようというプロモーション戦略なのである。

 真打ちであるグレートマジンガーの登場を盛り上げるために、今回のマジンガーZは、やられ役を担当している。だから、ちびっ子が本気で危機感を覚えるぐらい、徹底的に痛め付けられる。
 ジェットスクランダーの翼を折られ、放熱板を溶かされ、アイアンカッターを破壊される。攻撃しても、光子力ビームが通用せず、ルストハリケーンはダンテに弾き返される。ジェットパイルダーの風防を叩き割られ、胴体を串刺しにされてしまう。

 しかし今回のマジンガーZは、前作『マジンガーZ対デビルマン』のデビルマンとは全く意味が違う。ただの噛ませ犬ではない。言ってみれば、プロレスのタッグマッチにおけるジョバーのような仕事をやっているのだ。力道山と組んだ時の吉村道明のような役回りを担当しているのだ。
 しかも、ただグレートマジンガーを引き立てるためだけで終わっていない。タイトルに「マジンガーZ」とあるように、やはりマジンガーZは主役なのである。

 だから最後の戦いも、グレートマジンガーが全ての敵を倒すわけではない。マジンガーZはグレートマジンガーから投げ渡されたマジンガーブレードでブルンガの攻撃を受け止め、ドリルミサイルで倒す。グレートマジンガーがグレートタイフーンで獣魔将軍の炎を弾き返した後、マジンガーZがマジンガーブレードで突き刺す。
 マジンガーZとグレートマジンガーは力を合わせ、ブレストファイヤーとブレストバーンで獣魔将軍を葬り去るのだ。

 一つ不満を挙げるとするならば、相手の数が多すぎるってこと。だから力の強さというよりも、数が多いからマジンガーをメッタ打ちに出来ているという感じにも見える。まあ、それをグレートが簡単にやっつけることで、グレートの強さは際立つわけだが。
 ちなみに永井豪は『マジンガーZ』を長く続けたかったそうで、それを終了させて『グレートマジンガー』を開始するのは玩具メーカーの要望だったらしい。しかし、関連商品の売り上げで、グレートマジンガーはマジンガーZを上回ることが出来なかった。

(観賞日:2011年1月22日)

この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,576件

#映画感想文

67,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?