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『ガールズ&パンツァー 劇場版』:2015、日本

 第63回戦車道全国高校生大会で優勝した県立大洗女子学園は、地元の大洗町で開催された優勝記念エキシビジョンマッチに参加する。隊長の西住みほや武部沙織、五十鈴華、秋山優花里、冷泉麻子たちは、西絹代が率いる知波単学園と連合軍を結成した。
 対戦相手はダージリンやオレンジペコたちにローズヒップが加わった聖グロリアーナ女学院と、カチューシャやノンナにロシアからの留学生であるクラーラを加えたプラウダ高校との連合軍だ。

 聖グロリアーナ女学院は泰然とした態度で待ち受け、みほは連合軍に前進を指示した。しかし知波単学園が勝手に特攻してしまい、次々に攻撃を受けた。背後からはプラウダ高校が現れ、県立大洗女子学園と知波単学園は挟み撃ちにされてしまう。
 みほは不利な状況だと考えて撤退し、山を下って敵の勢力を分断しようと試みる。しかし聖グロリアーナ女学院は分断作戦に乗らず、市街地を移動しながら大洗女子を追い詰めた。

 フラッグ車に乗るみほは、他の戦車に指示を出しながら作戦を練る。しかしウサギさんチームが市街戦で沈められ、レオポンさんチームも行動不能になって防衛線を突破される。砂浜で敵と1対1になったカバさんチームも、砲撃を受けて白旗を掲げた。
 プラウダ高校に追い込まれたあんこうチームは、アクアワールドに乗り込んで聖グロリアーナ女学院のフラッグ車に勝負を仕掛けた。しかし攻撃を回避され、大洗女子と知波単の連合軍は敗北した。

 試合を終えた面々が銭湯で交流していると、角谷杏が学園に呼び出された。みほたちが大洗女子学園へ戻ると、校門が封鎖されていた。そこに学園艦教育局の役人が現れ、杏に生徒たちへの説明を指示して立ち去った。
 杏はみほたちに、大洗女子学園が8月31日で廃校になることを伝えた。戦車道全国大会に優勝し、大洗女子学園は廃校を免れたはずだった。しかし、それは確約ではなく、あくまでも存続を検討するという意味だったのだ。

 生徒は転校先の振り分けが決まるまで待機、戦車は文科省の預かりとなることが学園艦教育局によって決定されていた。杏は戦車を紛失したように偽装し、サンダース大学附属高校のケイやナオミたちに預かってもらった。みほたちは陸に上がり、大洗女子の船を見送った。生徒はバスに乗り、学科ごとに分かれた。
 戦車部の面々は古い校舎を借り、しばらく共同生活することになった。ケイたちは輸送機を使い、戦車を届けた。あんこうチームは戦車でコンビニに立ち寄った帰り、寂れたボコミュージアムを見つけた。みほは興奮し、仲間を誘って立ち寄った。みほはショーでボコを応援する少女に遭遇し、ラスト1つだった激レアの人形を譲った。

 杏は学園艦教育局の役人と交渉するが、全く相手にされなかった。彼女は蝶野亜美の仲介で日本戦車道連盟理事長と会い、文科省が2年後の世界大会を誘致するためのプロリーグ発足に動いていることを知る。
 みほは転校手続きの書類に親の印鑑を貰うため、久々に実家へ戻る。姉のまほは彼女を温かく迎え、母のしほに気付かれないよう部屋まで案内した。まほは書類を預かり、母の印鑑を拝借して押した。みほは姉に駅まで送ってもらい、仲良く遊んでいた幼少期を回想した。

 蝶野はしほの元を訪れ、大洗女子の廃校を防ぐために動いてもらう。蝶野は学園艦教育局の役人と会い、大学強化選手に勝てば廃校を撤回するという言葉を引き出した。交渉の場に同席した杏は、誓約書に署名させた。
 しほは大学強化チームの責任者を務める島田流戦車道家元の島田千代を訪ね、協力を要請した。千代の娘で後継者の愛里寿は、みほたちがボコミュージアムで出会った少女だった。愛里寿は千代から試合の話を聞き、勝ったらボコミュージアムのスポンサーになってほしいと要請した。

 杏は戦車道部のメンバーを集め、大学強化チームとの試合で勝てば廃校が中止される確約を取り付けたことを話す。ただし大学強化チームは社会人チームも撃破した強豪で、愛里寿は飛び級で大学に入った天才少女だった。愛里寿の写真を見たみほは、ボコミュージアムの少女だと気付いた。
 大学強化チームの戦車は30両だが、みほは「普通は無理でも、戦車に通れない道はありません」と言う。しかし当日になり、学園艦教育局がフラッグ戦ではなく殲滅戦に決定したことを知らされる。それでも、みほは退く気など全く無かった。

 試合直前、まほと逸見エリカが黒森峰女学園の仲間と戦車4両で現れ、大洗女子ほの短期転校手続きを済ませて連盟の許可も取り付けたことをみほたちに話す。さらにサンダース、聖グロリアーナ、プラウダ、アンツィオ、知波単、継続の面々も短期転校の形で加わり、戦車は合計30両になった。
 大学選抜チームは異議を唱えず、みほたちは作戦会議に入った。みほ、まほ、ケイが中隊長を務め、たんぽぽ中隊、ひまわり中隊、あさがお中隊として動くことが決まった。

 試合が始まり、黒森峰とプラウダの参加するひまわり中隊は高地の頂上を目指す。愛里寿はひまわり中隊を放置し、中隊長のアズミとルミに指示を出して先にたんぽぽ中隊とあさがお中隊を潰そうとする。みほたちは応戦するが、あさがお中隊では知波単の2両が撃破された。
 頂上に着いたひまわり中隊は援護しようとするが、頭上から謎の砲撃を受けた。2両が撃破されたひまわり中隊は、たんぽぽ中隊との合流を目指して下山する。カチューシャを逃がすため、プラウダのノンナやクラーラたちは盾になって撃破された。

 みほはひまわり中隊と合流する前に、頭上からの攻撃を何とかする必要があると考える。彼女は杏、磯部典子、アンチョビ、ケイの4人に頼み、どんぐり小隊を臨時編成してもらった。4両が行動を開始すると、愛里寿は陽動作戦だと感じて無視した。アンチョビは大学選抜チームの秘密兵器であるカール自走臼砲を発見し、3両の戦車が護衛に当たっているのを知る。
 典子は作戦を思い付き、どんぐり小隊の面々に協力を要請した。ケイの戦車が護衛の戦車を誘い出している間に、アンチョビたちが自走臼砲を倒した。みほはチームを再編成し、個々の能力を活かして戦うことを通達して遊園地跡へ向かう…。

 監督は水島努、脚本は吉田玲子、企画は川城和実&井上俊次&村田嘉邦&太布尚弘&古迫智典、アニメーションプロデューサーは丸山俊平、プロデューサーは杉山潔&松村起代子&京谷知美&西川和良&林洋平&菅原慎一、チーフプロデューサーは湯川淳&伊藤善之&小岐須泰世&深尾聡志&堂下律明&石垣毅、キャラクター原案は島田フミカネ、キャラクターデザイン・総作画監督は杉本功、考証・スーパーバイザーは鈴木貴昭、キャラクター原案協力は野上武志、ミリタリーワークスは伊藤岳史、キーアニメーターは吉田亘良&佐藤修、美術設定は長尾仁(St.ちゅーりっぷ)&大平司(St.ちゅーりっぷ)、美術監督は岩瀬栄治(St.ちゅーりっぷ)&本田敏恵&羽根広舟&高橋忍(スタジオアカンサス)&片野坂悟一(スタジオWHO)&片岡一巳(じゃっく)、色彩設計は原田幸子、撮影監督は関谷能弘(グラフィニカ)&朴孝圭(グラフィニカ)、編集は吉武将人(グラフィニカ)、3DCGI監督は柳野啓一郎、モデリング原案は原田敬至&ArKpilot、CGIエグゼクティブプロデューサーは吉岡宏起、CGIプロデューサーは野嵜敦夫、音響監督は岩浪美和、音響効果は小山恭正、録音調整は山口貴之、音楽は浜口史郎、音楽プロデューサーは関根陽一。

 声の出演は渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香、福圓美里、高橋美佳子、植田佳奈、菊地美香、吉岡麻耶、桐村まり、中村桜、仙台エリ、森谷里美、井上優佳、大橋歩夕、竹内仁美、中里望、多田このみ、山岡ゆり、秋奈、小松未可子、井澤詩織、山本希望、石原舞、金元寿子、喜多村英梨、葉山いくみ、倉田雅世、上坂すみれ、喜多村英梨、 石原舞、明坂聡美、高森奈津美、倉田雅世、川澄綾子、伊瀬茉莉也、平野綾、吉岡麻耶、早見沙織、大地葉、金元寿子、上坂すみれ、ジェーニャ、小笠原早紀、佐藤奏美、田中理恵、生天目仁美ら。

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 メディアミックス展開されたTVアニメ『ガールズ&パンツァー』の劇場版。監督や水島努や脚本の吉田玲子など、TV版のスタッフが再結集している。
 みほ役の渕上舞、沙織役の茅野愛衣、華役の尾崎真実、優花里役の中上育実、麻子役の井口裕香、杏役の福圓美里、柚子役の高橋美佳子、桃役の植田佳奈、典子役の菊地美香、妙子役の吉岡麻耶、忍役の桐村まり、あけび役の中村桜など、TV版のレギュラー声優陣は続投。
 ローズヒップ役の高森奈津美、クラーラ役のジェーニャ、ミカ役の能登麻美子、アキ役の下地紫野、ミッコ役の石上美帆、西役の瀬戸麻沙美、愛里寿役の竹達彩奈らは、劇場版の新キャスト。

 「女子高生が戦車に乗る」というプロットや、萌え系の女性キャラばかりが登場するビジュアルだけで、「生理的に無理」と受け付けない人も少なくないだろう。実際、そういう系統のアニメであることは否定できない。
 ただし、そういう萌え系アニメとしての側面もありつつ、一方で本格的なミリタリー・アクションもやっている。戦車に関しては実際に戦争で使われた物ばかりを登場させており、そこはリアルなデザインで描写している。各校の作戦も、荒唐無稽な部分は入れつつ、基本はキッチリとした戦術を組み立てている。

 TVシリーズの劇場版ってのは、当然っちゃあ当然だが、基本的には「TVシリーズを見ているファンが観賞すべき」ってことになる。しかし、この映画に関しては、どうやら「TVシリーズを見ていなくても楽しめる」という意見の人が少なくないようだ。その意見に賛同できる部分もあるが、「でもTVシリーズを見ておいた方がいい」と書いておく。
 「賛同できる部分がある」ってのは、この作品はキャラの数がものすごく多くて、そもそもTVシリーズでの紹介も薄かったのだ。メインとなるあんこうチームのキャラ紹介さえ薄味であり、対戦校に至っては「登場したらすぐに対戦が始まり、ほとんどキャラを掘り下げることも無いまま終わる」ってことが繰り返されていた。なので「どうせ軽いキャラ紹介しか無い」って意味では、「TVシリーズを見ていなくても楽しめる」と言えるわけだ。

 劇中でも説明されるように、TVシリーズは大洗女子学園が廃校を阻止するための戦いだった。そして大洗女子学園は戦車道全国大会に優勝し、無事に存続が決定したはずだった。そういう大団円のハッピーエンドだったのだ。にも関わらず、この映画では「それは確約ではなく、検討するという意味でした。そして検討した結果、やっぱり廃校にします」ってことになっている。シナリオとしての質が高いとは言えないし、「映画版を作る上で安易な方法を選んじゃったな」とは思う。
 ただ、「TVシリーズの結末を無かったことにするのかよ」という憤りは全く感じない。そういうユルさ(もっとハッキリ言うと適当さ)は、余裕で甘受できちゃうタイプの作品なのよね。それがいいことか悪いことかは別にしてさ。ただ、そのためには、TVシリーズを見ておいた方がいい。先に観賞しておけば、「そういうユルさを許せるタイプの作品」という前提で見ることが出来るからね。

 TVシリーズでは、大半の時間を戦車戦のシーンに割いていた。そのミリタリー・アクションに特化した作品の方向性は、劇場版でも引き継がれている。しかも劇場版の場合、「みほたちが戦車道の履修を要求される」「使える戦車を捜索する」「実戦練習を行う」といった手順を盛り込む必要が無い。
 なので、全体における戦車戦の割合は、TVシリーズより増しているんじゃないかと思っていた。何しろ映画が開始されると既にエキシビションマッチの最中で、そこから30分ぐらいは延々と戦闘シーンが続くのだ。

 しかしエキシビションマッチが終わると、廃校の決定を知らされ、大学選抜チームとの試合が開始されるまでに40分ぐらいの時間がある。ただ、それで残念に思うかというと、そんなことはない。そういう戦闘から離れているシーンが、とても楽しいのだ。
 もちろん廃校が決定したのだから、大学選抜チームとの試合が決まるまでは寂しさや虚しさが漂っている。ただ、戦車道部の面々が共同生活を送っている日常シーンに、何となくホッコリさせられるんだよね。

 待機生活に入ると、今まで厳格に風紀を取り締まっていた園みどり子がやる気を失い、やさぐれてダラダラする。しかし麻子の言葉に心を打たれて泣き出す。そういうシーンは、心にグッと来るモノがある。
 でも、それって「TVシリーズから見ているからこそ」なんだよね。みほを姉が優しく迎えるとか、幼少期を回想するってのも、やはりTVシリーズから見ているからこそ伝わる部分が大きいし。そもそも、「廃校が決まった寂しさ」に共感できるのも、TVシリーズから見ていないと難しい。

 これまで戦った高校の面々が大洗女子のために短期転校という形で加勢するシーンの高揚感や感動も、やはりTVシリーズから見ていないと味わえない。かつては敵だった面々が協力して戦うとか、プラウダの面々が盾になってカチューシャが涙の撤退を選ぶとか、そういうシーンもTVシリーズを見ていればこそ心を動かす部分が圧倒的だ。
 そんな風に、今までの経緯が分からないと、何も感じられない箇所が多いのよ。だから、やっぱりTVシリーズは見ておくべきだわ。

 後半、仲間が包囲されて窮地に陥っているのを目にしたウサギさんチームが助ける方法を考えていると、紗希が「観覧車」と言って指差す。するとメンバーは即座に理解し、「ミフネ作戦」を実行する。柱を撃つと車輪の部分が外れて坂を転がり、敵チームへ向かう。その間に、仲間が包囲網からの脱出に成功する。
 このシーンが『1941』へのオマージュであることは、オタク系アニメばかり見ている人には絶対に分からない。単に萌えキャラと戦車を組み合わせただけでなく、この作品は戦争映画のマニアックなネタを色々と持ち込んでいるのだ。言っておくけど、観覧車が転がるからって、決して『シャークネード』へのオマージュではないからね。

 TVシリーズではあまり存在感を発揮できなかったり、ほぼ役立たずの状態だったりしたチームやキャラクターにも、ちゃんと活躍の場が用意されている。この辺りは、ファンにとっては嬉しいポイントの1つだろう。それも、ちゃんと「成長の跡」を示した上で、見せ場が与えられているからね。
 劇場版の新キャラでも、継続高校と知波単学園には、ちゃんと見せ場が用意されている。一方で大学選抜チームは描写が薄くて存在感が弱いけど、それは仕方がないかな。何しろ、ものすごくキャラが多いからね。

 あと、劇場版の主題歌がChouChoの『piece of youth』ってのは不満。そこはTVシリーズのエンディングテーマ『Enter Enter MISSION!』の方が、気持ちが高まったんじゃないかと。劇場版のスペシャル感を出したいのなら、主要キャスト全員の歌唱バージョンにするとかさ。

(観賞日:2020年7月9日)

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