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『温泉スッポン芸者』:1972、日本

 京都のストリップ劇場「DX東寺」で、沖縄返還・本土復帰特別公演に、浅井夏子はストリッパーの三条さゆりとして出演する。客の毛利高麿や山本明たちが興奮する中、彼女は踊りながら服を脱ぐ。
 夏子はバイクで大学へ行き、様子を見に来た姉の良江から「アンタだけは立派に大学を卒業して、いいトコへお嫁に行ってもらうんだからね」と言われる。良江は夏子を大学へ通わせるため、温泉芸者として働いている。しかし夏子は姉の希望に対し、「古いなあ」と軽く返す。

 友人の信治が声を掛けて来た後、複数の男たちが夏子を食事に誘う。夏子は全て断った後、「これだから大学生活はやめらんないのよ。一銭もお金が掛からないしさ」と良江に言う。その夜、彼女は「今日は私がおごるわ。いいアルバイトしてんの」と告げ、ビアホールへ良江を連れて行く。
 夏子がバニーガールとして働いていると、男子学生たちが大学教授の山本を連れて現れた。信治は驚くが、山本は三条さゆりが働いているのだと受け取った。夏子は学生証を見せるが、山本に偽物だと見抜かれた。2年間も騙されていたと知った良江は、ショックで悪酔いした。

 良江は実家が浅草で6代も続いた老舗スッポン料理屋だったこと、父親が天然物にこだわったせいで店を潰したことを語り、「お店を失っても誇りだけは忘れて欲しくない」と妹を責めた。次の日、夏子が信治から「偽学生でもいいから大学に戻って欲しい」に頼まれていると、毛利が現れた。彼は「君を捜し求めていた。君は抜群のプロポーションだが、ブロンドの髪と白い肌が欠けている」と言い、人体改造の技術者である自分に任せてほしいと持ち掛ける。
 毛利は夏子を工房に案内し、アイルランド系アメリカ人への改造に成功した女性を見せる。そこへ田舎娘が来てパリジェンヌへの変身を希望し、金を渡した。毛利はパリジェンヌが無理だと考え、「ニグロに改造しよう」と告げた。彼はエキスを混ぜ合わせ、田舎娘を黒人女性に変身させた。

 良江が危篤だという電報を受け取った夏子は、すぐに姉の働いている城崎温泉へ電車で向かう。同じ列車には、無限精流の流祖である竿師段平と師範代の黒竿段吉、高弟のピストン健も乗っていた。
 彼らは全国の温泉町や歓楽街を巡り、片っ端から色仕掛けで女を骨抜きにしてトレードすることによって巨万の富を得る女体ブローカーだった。夏子を見た段平は「出来る」と呟き、「いずれ改めて」と彼女に告げて列車を降りた。

 温泉町の個人病院を訪ねた夏子は、良江の遺体を目にする。置屋の女将である横溝富子は、戻ってから良江の様子がおかしかったこと、座敷に出ないで酒ばかり飲んでいたこと、ダンプカーにはねられたことを語った。富子から良江が好きだった服部倉次郎のことを聞いた夏子は、川沿いの小屋に住む彼を訪ねて「どうして結婚してくれなかったの」と尋ねる。
 すると倉次郎は「そんなことは出来やしません。命の恩人とこのお嬢さんに」と言い、戦災孤児だった自分が夏子の父に拾われて板前をしていたことを語った。夏子の父は15年前、小屋の前を流れる川に五百匹のスッポンの子供を流した。そのスッポンを見つけ出すため、倉次郎は小屋で暮らしているのだった。

 町を歩いていた夏子はカメラマンの篠山義浩に声を掛けられ、観光協会のポスターでモデルをやってくれないかと頼まれる。夏子は10万円の謝礼でOKし、温泉芸者の姿で写真を撮った。温泉芸者の鶴丸、花千代、清葉、佐度奴たちが経総連御一行様の接待へ出向くと、理事長の石橋は接待役の木下にポスターを見せた。
 石橋は夏子が初恋の相手に瓜二つだと言い、連れて来るよう要求した。夏子は富子や置屋組合の面々から、町の発展のために石橋と寝て欲しいと頼まれる。富子は姉の借金である200万から20万を差し引くと約束し、組合は30万円を謝礼に出すと持ち掛けた。

 夏子は快諾し、芸者姿で石橋の座敷へ出向いた。いざセックスに及ぶと、夏子の名器は石橋のアソコをくわえ込んだまま離れなくなった。石橋は「スッポンだ」と喘ぎ、夏子と共に病院へ担ぎ込まれた。医者が何とか引き離そうとするが、雷が鳴ると石橋の体は自由になった。
 富子の置屋で使用人をしている八木陽子は父の訪問を受け、妹が修学旅行に行くことを聞かされる。母は寝たきりで動けず、父は露天商の仕事が芳しくなかった。陽子が手持ちの金を喜んで渡すと、父は商品であるゼニガメを「お守りとして持っとき」と差し出した。陽子は弱気な父に、「待っててや。ぎょうさん金稼いでみせるからな」と強い決意を示した。

 石橋が「スッポン芸者」として騒ぎ立てたため、夏子は富子から芸者として働かないかと誘われる。夏子が快諾すると、それを聞いていた陽子は「ウチも芸者にして下さい」と富子に頼む。そこで富子は、2人とも温泉芸者として使うことにした。
 花千代たちと仕事に出掛けた夏子は、倉次郎がスッポン探しに没頭する様子を目撃する。花千代たちから嘲笑される倉次郎に歯痒さを感じた夏子だが、辞めるよう説いても彼は耳を貸さなかった。

 毛利は城崎温泉を訪れ、ストリップ小屋を営む小島に改造した女性2人を引き渡して報酬を受け取った。そこへヤクザの笹沢が子分2人を引き連れて現れ、毛利がシマのキャバレーで働いていた女3人を垂らし込んだことを指摘する。彼らが毛利を暴行していると夏子が駆け付け、争いを仲裁した。
 大企業である実裏化粧品の会長が来ることになるが、花千代たちは座敷へ行くことを嫌がった。夏子が理由を訊くと、会長の角蔵には5人の女が廃人にさせられているのだと花千代は教えた。角蔵はベッドから落下して以来、ずっと勃起したままなのだ。万年勃起症を治すために女を抱き続けると、相手が廃人になってしまうのだ。

 角蔵は宴会を開き、重役の木持与三郎や息子の信治を同席させる。角蔵は幹部たちに、信治が大学を卒業したら後継者にすることを話した。しかし信治は、家業を引き継ぐことを望んでいなかった。座敷へ出向いた夏子は、信治がいたので驚いた。
 信治は夏子を連れて座敷から逃げ出し、陽子は50万円の報酬を得るために角蔵を誘った。夏子は信治から求婚されるが、家を飛び出した母を重ね合わせていると知り、冷たく突き放した。木持は未亡人の富子を夜這いするが、激しく拒絶された。

 角蔵は処女の陽子を抱いたことで万年勃起症が治り、大喜びする。しかし今度はインポになってしまい、勃起させた女性に100万円の賞金を出すと発表した。夏子が立候補して角蔵とセックスすると、また体が離れなくなって病院へ担ぎ込まれた。
 角蔵が死去し、信治は「女なんて信じられへん」と漏らす。毛利は「私は女を変えることで支配している」と彼に話し、女の本質を自分の工房で学ぶよう勧めた。信治は毛利の工房で勉強し、夏子に瓜二つのダッチワイフ製作を開始した。

 夏子は子供たちからキチガイ扱いされて石を投げられている倉次郎を助け、金を渡して「この町を出て」と頼む。しかし倉次郎はスッポン料理屋の暖簾を守るため、絶対にスッポンを見つけ出すという強い意志を示した。
 夏子は仲間の鮎子がお百度参りを続けているのを知り、好きな男がいるのだろうと考える。すると鮎子は、竿師段平に会って復讐したいのだと明かす。5年前、母が段平に弄ばれて色狂いにされ、精神病院で死んだのだ。

 日和山海岸を訪れた段平は、戦友の毛利と再会した。毛利が城崎温泉の芸者を改造したがっていると知り、段平は「俺と組もう」と持ち掛けた。彼は弟子たちと片っ端から温泉芸者を色狂いにするので、それを改造すればいいと持ち掛けた。段平と弟子たちが次々に芸者たちを色狂いにして、毛利は外国人に改造した。
 鮎子は段平と山陰スタジアムで対決するが、惨敗して廃人にされる。直談判に訪れた富子も段平の虜となり、毛利によって改造された。段平は夏子に対決を持ち掛け、負けた場合は1千万円を渡して全ての芸者を置屋に引き渡すと約束する。観光協会と置屋組合から勝てば200万円を渡すと持ち掛けられるが、夏子は勝負を断った…。

 監督は鈴木則文、原案は掛札昌裕、脚本は関本郁夫&鈴木則文、企画は天尾完次、撮影は増田敏雄、照明は金子凱美、録音は堀場一朗、美術は雨森義充、編集は神田忠男、助監督は関本郁夫、音楽は荒木一郎、主題歌『温泉スッポン芸者』は杉本美樹。

 出演は杉本美樹、山城新伍、城恵美、女屋実和子、三原葉子、名和広(名和宏)、菅貫太郎、成瀬正孝、金子信雄、殿山泰司、笹沢左保、由利徹、岡八郎、大下哲矢、月亭可朝、岡部正純、大泉滉、松井康子、潤まり子、牧れい子、衣麻遼子、田中小実昌、福地泡介、団鬼六、園かおる、松村康世、榊浩子、中村錦司、遠藤かおる、蓑和田良太、佐々木松之亟、有島淳平、望月節子、美柳陽子、橋本房枝、京町一代、牧淳子、那須伸太朗、久田雅臣、片桐竜次、白井孝史、疋田泰盛、畑中伶一、奈辺悟、川谷拓三ら。

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 温泉芸者シリーズの第5作。前作『温泉みみず芸者』に続き、鈴木則文が監督を務めている。脚本は『セックスドキュメント 性倒錯の世界』の関本郁夫と鈴木監督の共同。前作でデビューした杉本美樹が、今回は主役の夏子を演じている。
 前作で主演デビューした池玲子が次々に主演作を貰う一方、杉本は不遇の扱いを受けていた。しかし池が歌手への転向を宣言して『徳川セックス禁止令 色情大名』のヒロイン役を降板し、代役に起用された杉本が、その3ヶ月後に公開された本作品でも主演を務めることになったのだ。

 毛利を山城新伍、陽子を城恵美、鶴丸を女屋実和子、富子を三原葉子、信治を成瀬正孝、倉次郎を菅貫太郎、角蔵を金子信雄、石橋を殿山泰司、山本を由利徹、植村を岡八郎、篠山を月亭可朝、木持を大泉滉、花千代を松井康子、鮎子を潤まり子、清葉を牧れい子、佐度奴を衣麻遼子が演じている。
 段平役の名和広(名和宏)、健役の大下哲矢、段吉役の岡部正純は、前作と同じキャラクターでの続投。このシリーズは5作目だが、同じキャラクターが再登場するのは今回が初めてだ。

 シリーズの恒例となった文化人枠では、作家の団鬼六(前作に続いての登場)、作家の田中小実昌(第2作『温泉ポン引女中』以外は全て出ている)、漫画家の福地泡介が経総連の理事として登場。宴会で芸者と絡むシーンをノリノリで演じているのを見ると、とても好感が持てるね。また、毛利を脅すヤクザの親分役として、作家の笹沢左保が1シーンだけ出演している。
 アンクレジットだが、子分を演じているのは前作に続いての登場となる菅原文太と、シリーズ第3作『温泉こんにゃく芸者』を撮った中島貞夫監督だ。笹沢左保が杉本美樹の大ファンなので、『木枯らし紋次郎』の原作&主演&監督トリオで出演することになったそうだ。

 冒頭、川谷拓三が司会を務めるストリップ劇場で、夏子のショーが開かれる。看板に「沖縄返還 本土復帰特別公演」と書いてあるが、戦争関連のネタを盛り込むのはソクブンさんの得意技。その下には「新星 三条さゆりショウ」と書いてあるが、その芸名が超人気だったストリッパーの一条さゆりから取られていることは言うまでもない。実際、司会者は「引退した一条さゆりの後継者」と夏子を紹介している。
 そして夏子がストリップをする様子をバックに、オープニング・クレジットが表記される。前作のオープニングは池玲子のイメージ・ビデオみたいな状態だったが、今回は「杉本美樹が主役ですよ」ってのを強くアピールする形になっているわけだ。

 ソクブンさんの監督作品なので、いつものようにサービス過剰な内容になっている。悪く言っちゃうと、「色んなネタを盛り込み過ぎて、散らかりまくっている」という状態だ。
 序盤で言うなら、夏子が偽学生だとバレたら、すぐに「姉が死んだと聞いて温泉町へ行き、そこで温泉芸者として働き始める」という展開にすればいい。何しろ『温泉スッポン芸者』というタイトルなんだから、さっさとヒロインを温泉芸者に変身させればいいのだ。
 ところが、その前に「毛利が人体改造を持ち掛け、工房へ案内する」という展開を入れてしまう。これは話の流れからすると、明らかに脱線でしかない。

 ただ、その毛利というキャラクターのクセの強さは、ある意味では魅力的と言えなくもないんだよな。前作の山城新伍は「女性のアソコの型を取って土産物を作ることに情熱を捧げる男」を演じていたが、その強化版とも言えるキャラになっている。
 「人体改造で日本人を白人や黒人に変貌させる」という奴なんだから、言ってみりゃマッド・サイエンティストだ。実際には日本人が顔を塗ったり髪を染めたりしているだけであり、ものすごくチープだけど、「エキスの爆発で田舎娘がアフロ頭になる」というバカバカしさも含めて、この映画のノリには合っている。

 姉が危篤だという電報を受け取った夏子が電車に乗ると、段平と弟子2名も登場する。そしてナレーションによって、彼らがどういう職業なのかを説明する。そういうのも、そのタイミングで入れる必要は全く無い。
 夏子が温泉芸者として働き始めた後に登場させれば、それで充分に間に合う。「以前に会っていた」という状態にしておくメリットは何も無いし、そこで「全国の温泉町や歓楽街を巡って云々」というナレーションの説明を入れるのは不恰好だ。そんなは後回しで、さっさと夏子を温泉町へ行かせた方がスムーズだ。

 夏子が温泉町で姉の死を知った後も、まだ蛇行運転は続く。「スッポンきちがい」と呼ばれる倉次郎を登場させ、シーンを切り替えるとカメラマンの篠山義浩が登場する。たぶん大半の人は分かるだろうが、その名前は篠山紀信と立木義浩から取っている。
 で、その篠山に頼まれたポスターで温泉芸者のポスターをしたことで、夏子は石橋に目を付けられる。その後、篠山は二度と登場しない。名前が表示されるわけでもないので、出オチにもなっていないけど、「月亭可朝が演じている」ってトコに意味があるんだろう。

 経総連御一行様の宴会シーンでは、主な出演者の芸名が職業付きで表記される。最初に出るのは殿山泰司だが、()の中に「俳優兼作家」とあるのは違和感が強い。そりゃあ彼はエッセイも執筆していたけど、「俳優」ってことでいいと思うからだ。
 ただ、そういう表記にしてある理由は明白で、続くの団鬼六、福池泡介、田中小実昌が全て文化人だからだ。なので、そこは「同じ括り」で統一したかったわけだ。
 ちなみに芸者と絡むシーンでは、福地泡介が麻雀を打ち(彼は雀士としても有名だった)、田中小実昌は女に小便を漏らされて「とんだ濡れ場だよ」と愚痴り、団鬼六は女を縛って「君はサドかマゾか、どっちなんだ」と質問している。

 前作のヒロインは、母が作った借金を返済するために温泉芸者として働き始めた。今回のヒロインは、姉の借金を返すために働く。まあ微妙に違うけど、ほぼ似たようなモンだ。シリーズ作品なので、似たようなプロットになるのは、当然っちゃあ当然だ。
 ただ、前作の母親が「男好きで簡単に金を渡して持ち逃げされる」というキャラだったのに対し、今回の姉は「妹のために働いていたが、騙されていたと知ったショックで酒に溺れ、交通事故で死ぬ」という形だ。
 つまりヒロインは理不尽な形で借金の肩代わりをさせられるのではなく、本人にも罪の意識があるような状態になっているわけだ(まあ映画を見る限り、贖罪の気持ちで働いている様子は皆無だけど)。まあ、どっちがいいか悪いかってのを考えると、実は「どっちでもいいや」という答えになっちゃうんだけどね。

 城崎温泉へ来た毛利は、白人と黒人に改造した女性を小島に売却した時、「今度はホッテントットを作ってくるさいかな」と口にする。「ホッテントット」とは聞き慣れない言葉だが、アフリカに住む民族のことで、現在では「コイコイ人」と呼ばれている。
 ちょっとヤバい匂いのする人種ネタだが、当時は全く問題が無かったわけだ。そもそも日本人の皮膚に色を塗って白人や黒人に改造するというネタ自体、今だったら「差別的」ってことで難しそうだ。

 毛利が小島から金を受け取っていると黒塗りの車が現れ、ヤクザの親分と子分2名が姿を見せる。この親分を演じているのが笹沢左保で、画面には「『木枯らし紋次郎』原作者」と表示される。
 そんな笹沢の煙草に火を付けるのが菅原文太で、紋次郎のように長い楊枝を咥えている。笹沢は複数の台詞を喋るだけでなく、「おめえさんの顔を立てて」と喧嘩の仲裁に応じると、お礼として夏子からキスされる役回りも担当する。大ファンの杉本美樹からキスされるんだから、役得だわな。

 ところで、この映画の予告編では「女ヒコヒコ、男ウハウハ」というキャッチコピーが使われているのだが、「ヒコヒコ」とは謎の擬音である。その言葉、主題歌でも使われており、イントロや歌の途中で「ヒーコヒコヒコ、ヒーコスッポン」という男声コーラスが入る。
 それにしても、主題歌の曲名まで『温泉スッポン芸者』ってのは、凄いセンスだよなあ。そもそも、この手の映画で主題歌があること自体、バカバカしいけど。でも、そういうの、嫌いじゃないよ。ちなみに、曲自体は普通の明るいムード歌謡で、コーラスの言葉がヘンテコという以外、特に珍奇なわけではない。

 前作に続いて登場する段平は、ますますクドいキャラクターになっている。ちなみに彼が女体ブローカー(そもそも、この呼び方も前作に無かったモノだ)になった理由は、「戦争から戻ったら妹も初恋の女もアメリカ兵のパンパンになっていたので、悔しさを感じた」ってことになっている。
 また、毛利の方は「捕虜になってアメリカの女性将校にセックスを仕込まれ、セックスに人種や国境は無いと学んで人体改造を始めた」ってことになっている。そうやって戦争関連のネタを持ち込むのは、ソクブンさんの得意技だ。

 今回の段平と弟子たちは、温泉芸者を色狂いにするシーンで技の名前が表示される。「無限精流 佐渡渡り」は女を縛って乳を揉み、「無限精流 笛吹童子」ではアソコを笛で吹き、「無限精流 鉄火巻き」では女を抱いた状態でゴロンゴロンと転がる。
 そうやって彼らが色狂いにした後、今度は毛利のターン。「レッスン1 歩行」として、芸者たちに外国人らしいオーバーな歩き方を教える。ちなみに、その時点で既に芸者たちは改造されている。続いて「レッスン2 体位」ではバックスタイルのセックスを推奨し、「レッスン3 理論」では陰毛の形から性格を判断する学問を教える。

 そんな風に段平と毛利がバカまっしぐらな存在感を発揮する一方、その時間帯はヒロインである夏子が消えてしまうという問題が生じる。そもそも夏子だけじゃなくて陽子も存在感をアピールしていたが、それは女性キャラだから、まあ良しとしよう。ただ、男性キャラのクセが強すぎて女性キャラの存在感が薄くなってしまうのは、あまり望ましい状況とは言えない。
 で、毛利のレッスンが終わると、さすがに夏子が再登場するのかと思いきや、「鮎子と段平の対決」「富子が改造される」というエピソードが挟まれる。夏子が対決を断った後には、「陽子が信治の愛を勝ち取る」というエピソードがある。ソクブンさんの作品はサービス精神が旺盛なので、多くの要素を持ち込んで散らかっちゃうのは仕様なのよね。

 夏子は対決を断った後、倉次郎と関係を持つ。川沿いで、なぜか激しい雷雨の中での濡れ場である。今回は「アソコでチンコを咥え込んだまま離れなくなる」という現象が起きないのだが、それに関する説明は無い。
 かなり無理があるが、きっと「雷が鳴っていたので膣痙攣が起きなかった」という理屈なんだろう。で、セックスが終わると何匹ものスッポンが現れ、夏子は「倉次郎の夢を手伝うため」ってことで、段平との勝負を受ける(つまりスッポン料理屋を開業する資金を捻出するためってことね)。

 前作のクライマックスは、「ヒロイン&母&妹vs段平&弟子たち」の3本勝負だった。今回は1本勝負なので、前作よりパワーダウンしている印象がある。せっかく「金に執着する陽子」「段平に恨みを持つ鮎子」という面々がいるんだから、そこで3本勝負にしても良かったんじゃないかと思うんだけどね。なんなら勝ち抜き戦にしてもいいし。
 で、回転ベッドで開始された対決は夏子が優勢に立つが、毛利と弟子たちが落雷の音を流して形勢を逆転させる。彼らが軍歌を合唱すると段平は奮起するが、何だか良く分からない内に夏子が勝利する。
 夏子は倉次郎に金と手紙を残し、「もっと新しい自分を発見するために」と温泉芸者姿のままでバイクを走らせて旅に出る。そして彼女は、新宿赤ヘル団の女番長になるのである(すまん、最後だけ真っ赤な嘘だ)。

(観賞日:2016年9月27日)

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