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毒書地獄

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2020年4月の記事一覧

【読書】上久保敏『下村治 「日本経済学」の実践者』ー ”特異点"としての下村治

【読書】上久保敏『下村治 「日本経済学」の実践者』ー ”特異点"としての下村治

本書は「評伝・日本の経済思想」(日本経済評論社)の一冊として出版された下村治に関する評伝である。沢木耕太郎『危機の宰相』など下村に関する評伝は何冊かあるが、本書は下村治が作り上げた理論そのものに焦点を当てているのが特色だ。下村の著作はほとんどが絶版なので、下村の理論を知るには貴重な評伝であると言える。

大蔵官僚としての下村治下村は1934年に東京帝国大学を卒業して、その年に大蔵省に入省。1948

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武田徹の新書時評|真贋は一筋縄で括れない

武田徹の新書時評|真贋は一筋縄で括れない

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

小林秀雄の「真贋」は人気のエッセイだ。大枚払って買った良寛の詩軸が偽物だったと知って憤慨した小林は日本刀で一刀両断バラバラにしてしまう。この威勢の良さに小林ファンは魅了される。

真贋は今でも話題になる。2019年1月には東京湾岸の日の出埠頭で見つかったネズミの落書きが著名なストリート・アーティスト「バンクシー」の真作か否か、

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