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スウェーデン留学記#11 新しいハウスメイト

私が借りていたシェアハウスは3階建てで、1階に3人、2階に4人、3階に1人住めるようになっていた。これらの部屋とは別に、地下にはアントニーという名の管理人さんが住んでいて、庭の手入れや、電球交換、水道の修理、壊れた家電の修理、自転車の修理…など困ったときに呼ぶとなんでもやってくれた。

私が入居した当初、3階の部屋は空き部屋で入居者が決まっていなかった。9月に入って少しすると、この空き部屋に新たにオランダ人の子が来ることになった。

新しいハウスメイトは、リアンヌという名の、そばかすと笑顔が可愛い金髪美少女だった。可愛い見た目とは裏腹に、実はオランダのナショナルチームに所属しているスピードスケート選手だというから驚きだ。なるほど確かに、なかなかたくましい体つきをしている。しかも医学部生だから、文武両道美少女という天から二物も三物も与えられたような天才少女であることが分かった。

ところが来て早々、リアンヌはアレクシーとちょっともめた。スピードスケートの選手は下半身の強化をするため、ロードバイクに乗りトレーニングをする。リアンヌも自分のロードバイクを持参していた。シェアハウスには屋根のある駐輪場がないので、大事なロードバイクを雨露から守るためには一階の室内バルコニーに置くしかなかった。リアンヌはバルコニーに自転車を置いていいかと皆に聞いた。大抵の者は特に気に留めなかったが、アレクシーはよくバルコニーで洗濯物を干していたので不満を述べた。結局、自転車はよく拭いて汚れを落とし、なるべく隅っこに置くという条件でバルコニーに置いていい、という結論に落ち着いた。

一件落着し、シェアハウスではリアンヌの歓迎会を兼ねて、例の料理会を開くことになった。今回の料理担当はアレクシーだ。アレクシー自身はイギリス出身だが、アレクシーのおばあちゃんがイタリア人らしく、おばあちゃん直伝のイタリア料理を披露してくれることになった。メニューはピザとカルボナーラ。ピザには、トマト、モッツァレラチーズ、ブリーチ―ズを乗せていた。チーズは好きなものなら何でも乗せていいらしい。

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次にカルボナーラ。パスタを大鍋でゆでている間に、ボウルで卵やベーコンを混ぜ合わせる。最後にパスタとソースをボールで合える。アレクシーは「この混ぜる瞬間が命なのよっ!」と、真剣な面持ちで大急ぎでパスタを混ぜていた。大急ぎで混ぜた甲斐があって、パスタに滑らかにソースが絡んだカルボナーラはとてもおいしかった。

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デザートはヘーゼルナッツのケーキ。甘くて食べ応えのあるケーキだが、これもみんなでペロリ。

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リアンヌはすっかりみんなと打ち解け、和やかな会となった。これで新たにオランダ派閥ができるのか、とシモーネが冗談半分に嘆いた。というのも、シェアハウスには今、フランス語が行き交うフランス派閥と、ドイツ語が行き交うドイツ派閥という二大勢力が存在していたからだ。もちろんこれらの自国の言語で話すことにより、他の外国人が居心地の悪い思いをすることになる。なので、シェアハウス内では皆なるべく英語を話すように配慮していたし、他の人が来たら会話の途中からでも英語に切り替える、というのが暗黙の了解になっていた。とはいえ、自分達だけで話す時に自然と母国語が出てしまうのは仕方がないことだろう。やれやれ、と思いつつ私もそういう状況には慣れてきていた。第二外国語の勉強、もっとちゃんとしておけばよかったな、と今更ながら後悔してはいたが (しかもフランス語選択だったのに)。

美味しい料理でお腹を満たし、皆大満足の歓迎会となった。私個人的には、これまでシェアハウスには私以外に理系の子がいなかったので、リアンヌと研究の話ができることが分かって嬉しかった。そして何よりリアンヌとアレクシーが完全に仲直りしたみたいでよかった。

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