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スウェーデン留学記#15 庭のリンゴ

9月下旬にもなると夏の面影はほぼ去り、ルンドも秋の気配で満たされ始める。

秋は実りの季節だ。

私が住んでいたシェアハウスの庭にはリンゴの木があった。ある日、庭を散歩しているとリンゴの実がもう真っ赤に染まっていることに気づいた。一ヶ月くらい前に見た時は真っ青だったのにいつの間に!シェアハウスの庭になっているものは、大家さんからは食べていいという許可をもらっていなかった。けれど以前ブラックベリーが大量に熟していた時は、管理人のアントニーがバケツにごっそり収穫して、消費してくれと言わんばかりに私たちのところに置いていってたのを思い出す。だから、きっと食べても問題ないのだろう。そう思って、一番低い枝に手を伸ばした。が、微妙に届かない。ジャンプしても届かない。そうこうしているうちに、家の中から外を覗いていたシモーネに気づかれた。シモーネも庭に出てくると、真っ赤なリンゴの存在に気づく。二人で何とかリンゴに手が届かないかと苦心した努力も空しく、結局リンゴを手にすることはできなかった。

その後しばらく天候の悪い日が続いた。リンゴの木は激しい風雨にさらされ、せっかく実ったリンゴがぼたぼたと地面に落ちてゆくのを私はなす術もなく見守った。リンゴ、もぎ取って食べてみたかったなあ。

ようやく天気が落ち着いた日、庭には見るも無残にたくさんのリンゴが転がっていた。窓からしょんぼりと庭を除いていると、リンゴの間で何か動いていることに気づいた。え?ウサギ???慌てて、ソファでスマホをいじってるシモーネを呼びに行く。「え?ウサギ?嘘!ヤバい!!可愛い!!!」

二人で大騒ぎしていると、食事をしていたクラーラもやってきた。クラーラは以前にも見かけたことがあるらしく、「あー、たまに来ているよ。可愛いよねー。」と落ち着いてコメントする。

あとから知ったのだが、ルンドには野生のウサギが結構いるらしい。この時庭で見かけたウサギは私達のシェアハウスとその周辺の家々の庭をテリトリーとしているらしく、その後ちょくちょく見かけるようになった。

私は自分の住んでいる家の庭にたまにウサギが来るという状況に胸をホクホクさせた。リンゴ食べれなかったの残念だけど、ウサギのご飯になったのならまあいいか、と一人会心する。

その数日後、玄関のドアをトントンとノックする音がして、両腕いっぱいにバケツを抱えたアントニーが入ってきた。歓声を上げたシェアハウスの住人たちは、その後しばらくリンゴを食べ続け、最後には余ったリンゴで大量のジャムを作った。リンゴ、美味しかった!

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