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スウェーデン留学記#35 スウェーデンのクリスマス料理会

ヨーロッパではクリスマスが日本のお正月と同じくらい大切な行事で、クリスマスにはみんな家族や親戚とともに過ごす。私が留学中に住んでいたシェアハウスの住民はみんなヨーロッパの子達だったので、当然クリスマスは全員一時帰国することになっていた。「あなたはクリスマスどう過ごすの?」と聞かれ、「何にも予定がない」と答えるとハウスメイト達は一斉に「そんな!クリスマスには1人で過ごすなんてとんでもない!」と憐れまれた。確かに9人在住のシェアハウスは1人で過ごしたらとんでもなく広陵と感じられそうだ。自分でも不安に思ってきた。とはいえ初めてヨーロッパでクリスマスを過ごせるチャンスなのに、日本に一時帰国するのは勿体なすぎる。

あれこれ思案して、ルンド大学で出会った日本人の友達数名とクリスマスパーティーをすることにした。せっかく広いシェアハウスなのでうちに呼ぶのがいいだろうと、ハウスメイトに許可を求めた。ハウスメイト達は「もちろん!これであなたがぼっちクリスマスを過ごさなくて済むなら安心!」と快諾してくれた。

どんな風なクリスマスパーティーがいいかなと友達と画策して、やっぱりスウェーデン風のクリスマスを過ごしたいと意見が一致した。そこでスウェーデンのクリスマス料理を全部再現しよう!ということになった。スウェーデンでは、様々な料理を一気にテーブルに並べて提供するビュッフェ形式のsmörgåsbordという料理形式があり、これがクリスマスにはjulbordと呼ばれて提供される。

このjulbordのメインディッシュはクリスマスハムと呼ばれる大きなハムの塊だ。クリスマスの起源であるヴァイキングの冬至の祭りに、イノシシを生贄として捧げていた慣習に由来するらしい。ハムの元となる塊肉が、この時期スーパーに大量に売られていた。これを友達と買い込み、ハム作りに挑んだ。

まず一晩塩漬けにしておいた塊肉を軽く洗い、弱火で1時間ほどじっくり茹でた。これを冷まし、表面に片栗粉をまぶした。そしてパン粉と卵とマスタードを混ぜた衣を塗りたくり、オーブンで高温で焼き上げた。時間はかかるけれど、オーブンさえあれば簡単なレシピだ。どんな味になっているかドキドキだ。

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次にスウェーデン風のミートボールと、「ヤンソンさんの誘惑」という料理を作った。スウェーデン風のミートボールには、ホワイトソースと甘酸っぱいリンゴンベリーソースが添えられている。ミートボールに甘いソースなんて、と日本人には賛否両論あるかもしれない。酢豚のパイナップルと同じだろう。ただ、スウェーデンが好きで留学していた私達は「スウェーデン人が食べているならきっと美味しい!再現しよう!」と忠実に作った。肉団子は一般的な作り方と一緒で、合い挽き肉に卵、牛乳、ナツメグ、パン粉などを混ぜ込んで練って練って成形した。これをフライパンでジュージュー焼き、生クリームをたっぷり使って作ったホワイトソースを別添えにした。リンゴンソースは市販のものを買っておいた。

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「ヤンソンさんの誘惑」はじゃがいもグラタンのような料理で、美味しすぎて菜食主義のヤンソンさんまで誘惑されて食べちゃった、といういわれらしい。まずジャガイモと玉ねぎを細く切り、玉ねぎはバターで炒めて火を通す。そして、耐熱皿にじゃがいも、玉ねぎ、アンチョビを次々に重ねて層を作っていく。耐熱皿が満杯になったら、上から生クリームをひたひたになるまでたっぷり注いで、パン粉を振りかける。これをオーブンで小一時間ほど焼けば完成だ。これも時間はかかるけど、簡単なレシピ。

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その他、簡単なオードブルを作ったり、パンを切ったりして、食卓を埋めた。そしてデザートは、日本人だしやっぱりショートケーキ食べたいよねということで、これを作ることにした。いいとこ取りの欲張りメニューである。

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そして、乾杯用の飲み物にGlöggを作った。Glöggはスウェーデンのクリスマス用の飲み物で、赤ワインにスパイス、レーズン、アーモンドを入れて作るホットワインだ。Glöggを作るための、アーモンドやレーズンのセットが売られていたので、すでにスパイスで風味づけられたGlögg用のワインとともに買っておいた。これを飲む直前に混ぜて温めた。

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3時ごろからひたすら料理を作り続け、ようやく全ての料理が完成したのは6時ごろ。食卓をキャンドルで飾りつけて、Glöggで乾杯した。スパイスが効いたホットワイン、甘苦くて美味しい!

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クリスマスハムは、外の衣がカリカリでマスタードが効いてるし、お肉がジューシーで想像以上の絶品だった。全ての料理の中でこれが1番人気だった。

「ヤンソンさんの誘惑」は、あんなに簡単なのにほんのり甘い生クリームに、アンチョビの塩気がいい感じに溶け出し、思わずにやけてしまうほど美味しかった。クリームの濃厚な舌触りとジャガイモのホクホク感のハーモニーも絶妙だ。

肉団子はふわふわで、一口サイズなのでぱくぱくと食べてしまう。リンゴンベリーが意外と爽やかなので、ホワイトソースと一緒に食べると重くなりすぎずに美味しく食べれる。

そして、最後は締めのショートケーキ。日本人にとってはやっぱり定番で王道の美味しさだ。これを食べてようやくクリスマスを満喫した気分になれる。

こんなにたくさんの料理を一度に作るのは大変だったけれど、友達とわいわい賑やかに過ごすのはやはり楽しかった。クリスマスの数日前からハウスメイトが皆帰国していたので、ガラ空きの家に1人ぽつんと残され、正直寂しかったのである。

こうしてルンドで過ごしたクリスマスは、スウェーデンのクリスマス料理を美味しく堪能し、人と過ごせるありがたさを噛み締めた、記憶に残るクリスマスとなったのである。

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