スウェーデン留学記#1 旅立ち
スウェーデンに行きたいと思うようになったのは小学生の頃だ。アストリッド・リンドグレンとの出会いがきっかけだった。「やかまし村」に「長靴下のピッピ」、「エーミール」。彼女が生涯で書いた全ての本を読破して、自然豊かなスウェーデンの農村の暮らしに憧れた。
スウェーデンは福祉や環境保全の先進国としても有名である。特に自然保護の研究など学んでみたいこともたくさんあるし、何より憧れのスウェーデンに住んでみたいという理由で留学を決めた。留学先はスウェーデン南部の「ルンド」という町にした。実はルンドに留学する前に、「ウプサラ」というスウェーデン中部の町に一ヶ月ほどの短期語学留学に行ったことがあった。この時にストックホルムなど中部の観光をしたので、もう少し田舎町の雰囲気を味わってみたいというのが留学先に選んだ理由である。
9月からの新学期に合わせて、8月中旬成田空港発でポーランドのワルシャワ・フレデリック・ショパン空港を経由してデンマークのコペンハーゲン空港に着陸した。そこからルンドまでは鉄道に乗って海を渡っていくことができた。スウェーデンについた瞬間に、あの北国独特の空気感を感じた。夏なのに、ひんやりして少し湿った北国の森を思い出させるような香り。再びスウェーデンに来たのだという実感がわいた。ルンド駅には大学の関係者が迎えに来てくれ、そこから手続きなど色々済ませて一年間住むことになっていたシェアハウスに向かった。大学から徒歩20分ほどの一軒家である。女の子限定のシェアハウスで、私のほかに各国からルンド大学に留学に来ていた8人の女の子が住んでいた。半年で留学を終える子もいたので途中で何人かメンバーの入れ替わりがあったが、フランス人のアメリとクラーラ、オーストリア人のシモーネ、イギリス人のアレクシー、ドイツ人のマリー、オランダ人のウィルマインが初期のメンバーだった。後に出会う別のハウスメイトも含めて彼女たちとの出会いとシェアハウスでの暮らしが私のルンド留学における最も大切で楽しい思い出となる。
到着初日は彼女たちとあいさつを済ませた後、家を案内してもらった。玄関から入ってすぐに共有の居間があり、目の前には暖炉がある。暖炉は昔は使われていたが、今は煙突をふさいでしまって使えないとのことである。その奥にキッチンがあり、今から左手にはシャワー室に続くバルコニーと素敵な庭があった。さすがスウェーデンで、色とりどりの花が植えられた花壇や、ルバーブやベリー系の果実が植えられた区画が丁寧に手入れされ、井戸やリンゴの木まであった。木陰のスペースにはテーブルとベンチが置かれ、晴れた日にはそこで食事もできそうだ。まさに夢に見ていた通りの申し分ない暮らしが送れそうでワクワクした。(続く)