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ハマるために必要なもの

趣味はなんですかと聞かれるのが苦手だ。プロフィールの趣味欄とかにも何を書けば良いか分からない。昔から器用貧乏で、手芸や工作など一時的にハマるものの一回なんとなくの作品を作り上げると満足してしまう。

空いている時間に何をしているか考えると、何かこれと決まってしていることがない。その時々でぼーっとしたり本を読んだり漫然とテレビを見たり。何か作る気にもならない。

ハマっていることがある人が羨ましい。隙間時間があらば絵に興じる人やピアノを弾き続けている人、打ち込める何かがある人はかっこいい。仕事でもそうだ。自分の周りには研究職という仕事柄か、好きを仕事にしたような人ばかりだ。暇さえあれば実験したい、論文読みたいと、家に帰っても研究のことを考えている。そうなれない自分に焦る時期もあった。仕事は仕事と割り切ってしまう。家に帰ったらなるべく別のことを考えたい。仕事が嫌いなわけではない。どちらかというと自分の中では好きだから選んだのだ。数ある職業選択肢の中で、自分が一番向き合って続けていけると思う。ただ、好きのレベルが他の人より低いのだ。

そんな私がここ半年ほどパン作りにハマっている。私にしては長い方だ。毎度微妙にうまくいかない。それがハマる要因だ。発酵具合、成形、焼き加減と失敗の要素は山ほどあるが、生き物であるイースト菌との共同作業でデリケートな生地からパンを作り上げる工程は毎度異なる。パンは食べるのも大好きなので理想も高い。なかなか理想のパンに辿りつかない。だが、失敗はあるものの焼き立てのパンは幸せな美味しさをもたらし、練習するごとに上達の実感が得られるため、注ぎ込んだ努力に対する報酬が得られるのだ。仕事はそうもいかない。実験はすればするほど研究成果を得られる確率はあがるが、徒労に終わることの方が多い。努力に見合った報酬は得られない。最近は自分の研究が上手くいかないこともあってか、やればやるほど上達するパン作りに打ち込むことで息抜きをしている説も濃厚だ。

なかなか一つのことが続かない私がパン作りにハマって思ったのは、ちょうどいい距離の鼻先に人参がぶら下がっていることがハマるためには必要なのだろうということだ。もうちょっとで届きそう、がハマる秘訣だ。

#趣味 #ハマる #パン作り #つぶやき #エッセイ