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「柿の種」が好き

「柿の種」。私にとって強烈な中毒性を持つワード。聞けばひとたび、こがね色に艶めく小さな三日月形のそれが脳内にフワリと浮かぶ。あの香ばしい醤油ダレの味が一度からだに染みついたら、もう知らなかったあの頃には戻れない。

私はかれこれ20年来の「柿の種」好きだけれど、正直なところ、出会いの瞬間はまったく覚えていない。ただ、気づいたときにはもう「柿の種」はごく当たり前にそばにいて、典型的な寝スタイルドラマウォッチャーである私の人生を彩っていた。


オススメの食べ方

私史上、もっとも理想的な「柿の種」の食べ方を紹介したい。

1. 一粒ずつ、5〜10分程度かけて、まわりを覆う醤油ダレの色がほぼなくなるまで舐め尽くす。
2.ヤワヤワになった柿の種をていねいに食す。
3.柿の種がなくなるまで、1・2を幾度となく繰り返す。

子どもの頃大好きだった「ウメトラ兄弟」も同じように舐め回して食べていた。許してほしい。気持ち悪いのは自覚している。だが、この食べ方は醤油ダレの豊かな風味を余すことなく堪能でき、一袋を食べ切る時間も極端に長くなる。無限状態でいつまでも柿の種を楽しむことができ、食べ切ったあとは一種の達成感すら生まれる。

ただ、最近は大人になり気持ちが急いてしまっているのか、ボリボリ噛んで食べてしまうことも多い。そうして食べ終わったが最後、17時までの記憶がまったくない休日のごとく後悔することになるので、やはり柿の種は童心にかえって、心豊かに味わうのがベストだと考えている。


「亀田の柿の種 6袋詰」に想いを馳せる

「柿の種」という商品自体はさまざまなメーカーから発売されており、そのバリエーションも多種多様。わさび、梅しそ、チョコレートといったフレーバー違いや、サイズ違いの「大きな柿の種」もある。包装も、小袋に分けられていたり、おばあちゃんの家にあった梅酒を漬ける瓶みたいなのに入っていたりもする。そのアプローチの幅広さには、作り手の情熱を感じざるを得ない。

ただ、ここではっきり言わせてほしい。私にとっての「柿の種」は、「亀田の柿の種 6袋詰」一択である。

実は私は、子どもの頃に床に落ちていたピーナッツを拾って半分に割ったら小虫が出てきた、というしょうもないトラウマのせいで、ピーナッツがあまり好きではない。柿ばかり食べて、ピーだけがむなしく残った小袋を量産しては両親に怒られていたので、あるときピーナッツなしの柿の種を見つけたときは心が踊った。

しかし、なぜだかピーナッツなしの柿の種よりもピーナッツありの小袋の柿の種の方がおいしく感じてしまい(この謎を亀田製菓さんに解き明かしてほしい)、結局ピーの小袋量産が止まることはなかった。

今でもピーナッツなしの柿の種にはあまり手が伸びないし、コンビニのプライベートブランドから出ている柿の種も、地元の本格おかき屋さんが売り出しているちょっと上質っぽい柿の種も、「亀田の柿の種 6袋詰」にはかなわないと思ってしまうから不思議である。

最近、「亀田の柿の種」の柿とピーの割合に変化があった。国民投票の結果、6:4から7:3へ・・・これは歴史的な変革だ。

こんなにも長く愛されていながら、ファンの声に応えて変化を恐れないその姿に私は感動した。ちょっと気持ち悪い食べ方をするやつもいるけれど、いつまでもファンの愛を受け止め続ける「亀田の柿の種」であってほしい。​

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