見出し画像

自分の実践に影響を与えた本紹介12

特別支援学校で働いている、公認心理士の川上康則さんの新刊です!
「教室丸トリートメント」について書かれている本です。

そもそも「教室マルトリートマント」とは

この言葉を知ったのは、昨年度のことでした。職場の教頭先生が研修でお話ししてくださった時に「毒語」という言葉を使われていました。何だろう?と思って聞いていると、今回の「教室マルトリートメント」につながっていきました。

「マルトリートメント」という言葉は、国際社会では広い意味での子ども不適切な関わり全てを意味します。

『不適切な関わりを予防する教室「安全基地」計画』川上康則、p.12

国際社会と書かれているように、世界保健機関(WHO)が使っている言葉のようです。マル(mal)は「悪い」、トリートメント(treatment)は「扱い」という意味で、「避けたい関わり方」「不適切な養育」という捉え方ができます。

川上さんは、このような「マルトリートメント」という状態が、家庭だけでなく、学校でも起こっているのではないかという問題意識のもと、「教室マルトリートメント」という言葉を造られました。

家庭において、「しつけ」という名の下に虐待行為が行われていることがあるのと同様に、学校においても、「指導」という名の下に、実は無意識に子どもの心を傷つけていたり、無自覚に子どもの意欲を失わせていたりすることがあるのではないか・・・。

『不適切な関わりを予防する教室「安全基地」計画』川上康則、p.14−15

学校で普段私たち教師が行なっている「指導」に、「教室マルトリートメント」という状態が生まれている可能性があると指摘されています。その一つの具体例として、最初にお話しした「毒語」があります。

「毒語」

毒のある言葉、略して「毒語」。皆さんは学校で子どもたちに以下のようなことを口に出したことはありませんか?



「何回言われたらわかるの?」どうしてそういうことをするの?

「やる気がないんだったら、やらなくていいよ」(本当は「やりなさい」)

「あなたの好きにすれば」(本当は「きちんとしなさい」)

「早くしないと〇〇させないよ」

「お母さんに言うよ」「〇〇先生に叱ってもらうよ」

「そんなこと1年生でもしないよ」

「さようなら、バイバイ」「じゃあ、もう良いです」



いかがでしたか?恥ずかしながら、結構子どもたちに向かって使っていた言葉が多かったです。これらは全て、「指導」という名目で子どもたちに当たり前のように使っていることがあると思いますが、実は子どもの心を傷つけている恐れがあり、「教室マルトリートメント」の状態を引き起こす原因となってしまいます。

「虐待」は家庭の問題?

日本には「児童虐待防止法」という法律があります。そこで「虐待」について書かれていたのですが、この法律の第2条で、保護者以外からの「虐待」と類似した行為は法律上、「虐待」とは言わないと書かれているそうです

つまり、学校現場で教師が子どもたちに対して「虐待」まがいの行為を行なっていても、それは実は、「虐待」として認定されないということになります。

よく学校教員のわいせつ行為や体罰問題でニュースになったりしています。川上さんはそのような「真っ黒な不適切な問題」が今まで教師の「不適切な指導」と捉えられてきたが、これからは「グレーな不適切な問題」として、先ほど挙げた「毒語」のような「教室マルトリートメント」の状態を作りだす教師の「不適切な指導」があるのではないかと考えておられます。

つまり、体罰やわいせつ行為のような法律で罰せられる行為ではなく、法律に認知されない、教師からの「虐待」のような指導があるのではないかという考え方です。

「教室マルトリートメント」が生まれる要因

簡単にですが、最後に要因をお話しして終わりたいと思います。川上さんはいくつか要因について触れられています。その一つが「枠組み」です。

その「枠組み」とはすなわち、「学校とはこういうものだ」とか「何年生なら、こういう姿だ」などの私たちが子どもの姿を見取る際のよりどころになるような「前提」といってもいいかもしれません。

『不適切な関わりを予防する教室「安全基地」計画』川上康則、p.58

国が定める学習指導要領があり、県や市が定める学校教育の基本指針があり、学校単位で定める学校教育目標があり、学年目標、学級目標があります。

その「目標」に向かって、私たち教師は日々子どもたちに「指導」していくわけですが、この「枠組み」によって、「教室マルトリートメント」が引き起こされているのではないかということです。

学校には、その目標が達成したのかという評価を受ける瞬間がいくつかあります。

授業参観、研究授業、体育大会(運動会)、音楽会などのイベントで保護者や同僚の先生、他校の先生などに教室の状態を見られ、評価を受けます。そこで、「枠組み」にきちんとはまっているか、「枠組み」に向かって子どもたちが進んでいっているのか、というポイントが見られます。

担任として、評価を受けたい一心で、毒語が出てしまう。子どもたちに厳しく指導する。すると、一見落ち着いて学習しているように見えるが、教師の顔色をうかがって過ごすようになる。


まだまだ書きたいですが、一旦ここまで。この本は続きが書けそうです!
次回は、「教室マルトリートメント」に対する具体的な対策について書きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?