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母のポタージュを笑ったフランス人

娘が生後5か月を迎えた日から離乳食をはじめた。アレルギーが出てもすぐに小児科に駆け込めるよう、はじめて食べる食材は平日の昼に1日1種類ずつ。アレルギーの有無をチェックしながら離乳食を進め、生後6か月と半分が過ぎた先日、食べた食材は30品を達成した。

31品目目、今日はとうもろこしをあげてみようと青果店で夏の香りがする大ぶりのとうもろこしを購入。

とうもろこしを茹でたりこしたりしているときにふと、母が作ったコーンポタージュを笑ったフランス人のことを思い出した。

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小学校のころ、父の仕事の都合でフランスに住んでいた。

ある週末に親しい同級生数名とママ達を自宅に呼び、ホームパーティーをすることに。フランスではまだ珍しかった「手巻き寿司」や「そうめん」などの日本らしい手料理を用意する中、母はやさしいミルクの風味がただようこってりとしたポタージュスープも作っていた。

パーティがはじまり、日本の家庭料理に目を輝かせる面々。

するとポタージュスープを見たフランス人が「見て、ポタージュよ!」と笑ったのだ。その笑みに悪意は無かったが、感嘆と疑問が入り混じった感じだったと記憶している。

母も私も首をかしげた。寿司、そうめん、と来たら やはり味噌汁だっただろうか。ところがフランス人はこう続ける。

「Bebe(赤ちゃん)の食べ物ッ!」

……なるほど、知らなかった。フランスではコーンポタージュというのは離乳食初期に与えるメニューだったらしい。日本でいう「十倍粥」というところだろうか。

今となっては当時のカルチャーショックも含めて楽しかった思い出のひとつなのだが、帰国から10年以上が経ったいまもポタージュスープを見るたびに思い出してしまう。高級フレンチ店でポタージュスープが出てきたときはなおさらだ。

フランス人は日本の外食店でポタージュが出てきたら、どう思うだろうかと想像するも、観光で来日したフランス人がわざわざ日本でフレンチ店に行く可能性は低いだろう。日本人がフランスで和食店を選びにくいのと同じで。

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そんなわけで、コーンを裏ごししながら、「これは正しく離乳食だな」と思った私であった。少々量を作りすぎたので、せっかくだからと夫と私のポタージュスープを作った。遠いあの日を思い出しながら。

2020/06/02 こさいたろ


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