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忘れられない初恋〜言わせてしまった別れたい〜

「別れたい」
電話でそう告げたのは、僕ではなく、映画館のともみちゃんの方からだった。

旅行に行きたいと言っていたから、映画館のともみちゃんの誕生日の3月にお祝いをして、伝えようと思っていた。

先に言われてしまった。
先に言わせてしまった。
僕の気持ちに薄々気づいていたんだと思う。
旅館の予約をとろうとしたら、自分でとると言われたとき、そんな予感がしてた。

付き合ってからは、楽しい毎日だった。
大きな喧嘩もちょっとした喧嘩すらしたことがない。
映画館のともみちゃんが大学を卒業してからは、就職の関係で神奈川で一人暮らしをはじめ、予定が合わなくなることが増え、別れる直前は月1回くらいで会うようになっていた。
会えば楽しく話すけど、LINEのやりとりは挨拶だけになったりしていた。
嫌いなったわけじゃない。
好きが見えにくくなってしまっていた。

2年付き合って、いることが当たり前になってしまったからだけではない。
僕に初恋のともみちゃんの気持ちがありながら接してしまっていたのも原因だと思う。

5個下の映画館のともみちゃんは、付き合うのが僕が初めてで、年齢分のある僕の恋愛経験をよく聞いてきた。
初恋の話を聞かれたとき、あきらかに動揺してしまった僕をみて、何かを察したのかもしれない。

先に言わせてしまって、申し訳ないと思いながらも僕も決めていたので、別れを受け入れた。

3月末、映画館のともみちゃんの家に置いていた荷物を取りに行く。

その日の昼はおうちでピザのデリバリーをとって食べた。
僕の家に初めて呼んだ時と一緒だった。
嫌いで別れるわけじゃないから最後も楽しくいたいと僕の考えに映画館のともみちゃんも賛成してくれた。

僕が荷物をまとめ出すと、映画館のともみちゃんは静かに涙を流していた。
思わず、僕も涙が溢れる。
2人で泣きながら楽しかったねと思い出を語り合った。

夕方になり、そのまま帰ろうとしたけど、映画館のともみちゃんの提案で、付き合った夜に行った鳥貴族で最後のお別れをした。

お互いまた何度か泣きそうになったけど、人前だからぐっと堪えて、涙のかわりにたくさん笑った。

お互いの幸せを願い、それぞれの駅のホームへ向かう。

2022年、3月。
2年9ヶ月付き合った、映画館のともみちゃんと楽しくお別れをした。
数えることの恋愛をしたことしかないけど、こんなにいい別れ方をできたのは初めてだった。

こんな素敵な思い出になる経験をできたのだから、次は初恋のともみちゃんとしっかりと向き合わなくては。
忘れてはいけない夜を経験した僕だった。

#忘れられない恋物語

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