唯一、家族でやったゲームと母の話。

僕の家は父、母、弟の4人家族。
そんな家族で唯一、一緒にやったことあるゲームが2005年に発売された、脳を鍛える大人のDSトレーニング。
当時、CMなどでかなり話題になっていて、父が買ってきた。
一つのDSで順番にプレイし、誰の脳年齢が実年齢より若いだので盛り上がったのを覚えている。

ただ、僕にはそんな楽しいだけの記憶でなく、衝撃だった記憶がある。
それは母が小学校低学年でも解けるような簡単な足し算や引き算が全くできていなかったのだ。
その結果、母の実年齢を大きく上回る脳年齢で、その場はみんなで笑っていたが、僕は心の中では笑えていなかった。

それ以来、僕はちょうど中学生になる時期で、思春期も重なり、どこか母を下に見るようになってしまった。態度にも少し出てしまっていたと思う。

僕は高校卒業後、夢を追って東京で生活するのだが、夢のためだけでなく、母親が嫌だった理由も正直あった。

僕が東京で生活を始めてから4年ほど経った頃、母がうつ病になったと連絡があった。
母がそんな状態になったにもかかわらず、僕は母と向き合えず、近くに住む祖母が母の介護をしてくれた。

そんな祖母もガンを患い、今年の夏に亡くなった。祖母の介護は、祖母のおかげでうつ病が良くなった母がしてくれた。

祖母が亡くなった喪失感により、母のうつ病が再発してしまうかもしれない。
ここで母と向き合わなければいつか後悔する日がくると思った。
祖母は僕の夢に力を貸してくれたのに、僕は何一つ恩返しできなかった。
僕が母と向き合うことが、祖母への恩返しになるなんて、僕のわがままな考えでしかないけど、祖母にできなかった分、母と向き合おうと決めた。
僕は仕事を辞め、地元に戻り、母と生活をすることになった。

そして今日、母とデイケアの見学に行ってきた。家族以外の人と話す、母の姿を見て、母は話すことが苦手だったことを思い出した。
話すこと、計算できないないのは、考えることが苦手なのではないかと思った。
デイケアで良くなればいいが、僕も力になりたいと思い、母のスマホで脳トレのアプリをダウンロードした。
アプリで簡単な計算ができない母を見て、子供の頃に家族でやった、脳を鍛える大人のDSトレーニングを思い出した。
簡単な計算ができない母を避けるようにしてしまったが、もう逃げずに向き合う。

もうすぐ50歳になる母が、小学校低学年でも解ける計算ができない、それをできるようにする、側からみれば恥ずかしい馬鹿げた話かもしれないができるようにしたい。
そうすればもっと人生が楽しくなって、子育てが生きがいでしかなかった母に、生きがいが見つかるかもしれない。

子供の頃はショックで何も言えなかったけど、
今の僕なら優しく教えられる。

12ひく9は4ではなく、3だよと。

#心に残ったゲーム #母 #日記

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