ペーパーレス化のための3つの「けん」
世間はテレワークへの移行が一気に進むと思いきや、意外と進んでいないようで、その問題点も世の中に知れ渡るようになってきました。僕らのようなペーパーレスに長年関わっている人間からすると、「そりゃそうだよね」ということなのですが、世間の多くの人に知るところになりました。
ハンコや紙処理のために命がけの出社
テレワークを進めるにあたって超えなければならない障壁ですが、一つはよく報道されている「ハンコ」の壁、そしてもう一つは「紙」の壁です。
日経BizGate 2020/4/7
「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁
この記事によると、テレワークしている最中でも、約4割のケースで出社せざるを得ない業務が発生するとのこと。第一に「請求書や押印手続き、印刷など紙データの処理」という紙処理が絡む業務での出社とのこと。
高々ハンコを押したり、紙の領収書や請求書を処理するために、感染リスクを背負って出社しなければならないなんて本当に気の毒でしかないですが、紙で取引情報をやりとりし、確認・承認をしている以上、テレワークは不可能だと思います。ここで、業務プロセスと取引書類の電子化(ペーパーレス化)は、もはや待ったなし です。
ペーパーレス化を進めるにも、いろんな法律が絡みすぎてる!
とはいえ、ペーパーレス化を進める上で何を留意しなければならないのでしょうか? ちょっと調べてみると、いろんな法律が出てきます。特に経理関係は「電子帳簿保存法」という、紙で作成・保存・保管している帳簿や書類を「電磁的記録」(法律ではこんな言い方をするのですが、要は「データ」です。)として保管・管理するための法律です。✳︎
✳︎ 本法令に関しては、後日、まとめ記事(一部有料)を書きます。
その他、いわゆるe文書法と呼ばれる法律や、それぞれの法令で作成・保存・保管が義務付けられている書類は数多くあり、どう対処すればいいのか、わかんないぞ!!! と思われると思います。(私も電子帳簿保存法の存在をしり、初めて学んだ際には、正直「え、何言ってるのかよくわからない」という状態でした。)
なので、この多岐にわたる法令とその複雑さが、ペーパーレス化を阻んできた一因でした。
とはいえ、対応のめんどくささにかまけていても、そこで感染リスクを放置しているわけにもいきません。もっと法律を活用しやすいようにシンプルに変えてくれという話も当然ありますが、それを待っていても時間がかかってしまうので、まず「ペーパーレス化」を進める上で、留意すべきポイントをお伝えします。
ペーパーレス化に必要な、3つの「けん」
よく要点をお伝えするときに「要は3つにまとめると」なんて話をしますが、ペーパーレス化に必要な要素も、3つにまとめられます。しかも、3つの○● と言った形で、覚えやすいように、今回は3つの「けん」ということでまとめます。
ペーパーレス化に必要な3つの「けん」
1.見読性(けんどくせい)
2.検索性(けんさくせい)
3.検証性(けんしょうせい)
1.見読性(けんどくせい)
見読性は、文字通り「見て、読む」ことが問題なくできるか ということを指します。e文書法という法令で求められているものは、多くがこの「見読性」のみを要件として求めています。
つまり何ができればいいかというと
1.パソコンやタブレットなどの情報端末で、書類の内容が明りょうな形で表示され、問題なく読めること。
または、
2.プリンタや複合機などで、コピーを出力し、紙として取り出せること
ができると、「見読性」を満たしているといえます。
この詳細は書類や法令ごとに詳細に規定されていることもあれば、ただ見読性を満たせばいいという場合もありますので、書類ごとに関連する各法令を確認してみることをお勧めします。
(詳細をご相談されたい場合は、当社までご相談ください。)
2.検索性(けんさくせい)
検索性とは、これもシンプルで「書類をキーワード検索できるようになっていること」です。ただ、ここで求められている検索性は、業務上求められているもので
・ 複数のキーワードで検索できるか(例:取引先名・金額・日付 など)
・ 期間を設定して検索できるか(日付の期間、金額 など)
などが求められます。
この検索性に関しても、検索できればいいと言っている場合もあれば、検索の要件を詳細に規定している法令もありますので、確認が必要です。
3.検証性(けんしょうせい)
「検証性」というのは、「真実性」だとか「真正性」という言い方の方が法令では使われることが多いですが、取引が、社内ルール及び法令に基づき適切に行われているか、またはその書類が適切に発行・承認されたかということが、検証できるか ということを指します。
特に、税務関係 ならびに医療関係で作成された書類に関しては、当該書類が適切に作成され、承認されているか ということに関して問われることが多いので、電子化・ペーパーレス化を進める上では、専門家の助力を得た上で、慎重に進める必要があります。
また、最近流行りの契約書の電子化、つまり電子契約に関しても、「検証性」をどの程度まで求めるかによって、導入する電子契約が変わってきます。そこで、電子契約を導入する際には、1)自社で求める「検証性」のレベル はどの程度か ということと、2)そのレベルを担保するためのコスト を検証の上、導入するソリューションの候補を選定することをお勧めします。
おわりに
以上、ペーパーレス化に求められる3つの「けん」を紹介しました。ペーパーレス化を進めることにより、テレワークをより推進できるようになり、業務の効率化や、場所を選ばず仕事をできるようになるため、意思決定スピードの向上にも繋がり、企業の生産性の向上にも繋がります。また、固定の大きなオフィスを都心に持つ意味もなくなるので、オフィスにダウンサイジングや、家族の転勤などで会社をやめざるを得なかった人材の継続雇用も可能となります。
実際に私が顧問をしている会社では、経理担当者の方が家族の地方転勤により会社を辞めざるを得ない状況になったのですが、テレワークの導入により、引越し後も継続して経理業務を見てもらえることになったそうです。
さらに業務ならびに書類の「ペーパーレス化」は、AIやRPAの導入などにより、業務の自動化にもつながっていきます。定型業務を自動化することで、人が関わらなければならない仕事(営業や企画・製品・サービス開発といった付加価値を生み出す仕事 など)に力を注力できるようになり、より、付加価値の高いサービスの提供が可能になります。
ぜひ、この3つの「けん」に留意した上でペーパーレス化を検討してみてください。また、質問やご相談ありましたら、当社(info@ta-company.jp) までご相談ください。
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