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ミラクルミッション #8人事を尽くして

  現地視察後、土地についての追加データ、法的な規制の状況、S商事に売却・賃貸借する場合の課題や手続き、市内、県内の果樹生産量、気象データ、事業に利用できそうな優遇制度など、毎日のように様々な資料を求められる日々が続く。

 責任感の強い、真面目な職員であれば
「担当じゃないので、わかりかねます。担当課に確認してください」
と、言いそうなところであるが、無責任で不真面目な筆者は、庁内をかけまわり、情報を収集し、ざっくり回答していた。

 役所的な対応で
「文書で照会してください」「それは教えられません」「上司に確認して連絡します」
 なんてことで、事業が遅延したり、当市の印象が悪くなることは避けたかった。
 企業誘致の業界では、担当職員の対応の悪さや回答の遅さを理由に、誘致が失敗するということはざらにある。(しかし、担当者が良い人だから工場を作りますといことは、皆無である)

「問い合わせがくるということは、候補地として検討しているはず」
と前向きに考えるものの、土地の可否について回答はいただけず、文化部次長からは
「マラソン大会のスポンサー契約は、どんな感じ」
ともせかされるものの、こちらも良い回答はできない。

 相手は日本有数の総合商社。社内手続き等も考えれば、そう簡単に結論が出ないことは、当然のことであった。

 優遇制度について情報交換をする中で、「ふくしま産業復興特区」の活用を視野に入れることとし、観光課に対して協力を依頼した。
 この制度は「製造業」「農業」「観光」の分野で、復興に資する「事業と地域」を市町村が定めておくと、民間事業者が復興支援事業として認定された時に、固定資産税を5年間免除することができるという税優遇の制度である。
 筆者は観光分野の復興計画が策定中であることを知っていたことから、担当者の元に赴き、田原地区を観光特区の地域に入れるよう依頼したのである。これはS商事のためだけではなく、田原地区の観光振興を視野に入れてのシティプロモーション係長としての考えでもあった。
 筆者は観光課の担当者に依頼した。
「とりあえずG温泉とI温泉の北側にある「田原」と周辺も特区の対象地域として入れておいて。課長には後で説明しとくから、今すぐ、資料を修正して。特区の区域を考える時に、現状の点とか線で考えては駄目なのですよ。少なくとも5年、10年のスパンを踏まえて、面で網をかけておかないと」
と、老婆心ながら、特区制度の活用方法について担当に助言したのである。

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