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ミラクルミッション #2ラフストーリーは突然に

 文化部次長が電話で確認したところ、S商事からは
「市役所訪問と打ち合わせは、早急に、それこそ明日、明後日にも行いたい
また、午前中は市職員との打ち合わせを行い、昼は地元の食材を利用したところで食事をしたい。午後は地元のアグレッシブな農家さんを訪問して、農業関係者の声を聞きたい」との要望があった。
「明日か、明後日に対応できる?」
また、他人事だと思って、軽く言う人もいたものです。
「何とかします。ただ、農家さんや関係職員との調整をこれから行いますので、明日ではなく、明後日、25日(金)の打ち合わせでお願いしたいと思います」
と、誰とも何の調整もしないまま、日程を了承することだけを回答していただいた。

 それから、筆者は慌てて政策開発課、観光課、商工振興課、農政課、農業振興課の各課を訪問し
「文書は後で持参するから、25日(金)の打ち合わせに同席して欲しい」
旨を伝えた。当然「迷惑だ」と嫌がられる話ではあるが、こちらの「錦の御旗」は「マラソン大会のスポンサー」である。
 S商事へスポンサードの依頼を行う発案者は、ちょっとだけコネがあった市長である。市長案件について成果を上げるための動きについて、反旗は許さなかった。当然、そのことは各課担当者にも伝えておいた。

 打ち合わせの出席依頼に重ねて、農業振興課では
「F農園さんとM農場さんのアポ取りしたいので、連絡先を教えて欲しい。できれば、打ち合わせの後、午後は一緒に農家を訪問して欲しい」
とのお願いをした。
 あつかましいことこの上ないが、筆者の業務とは、まさに畑違いのため、農家の方については、名前はともかく場所も顔もわからないのである。
農業振興係長からは、
「面白そうだから協力するけど、その日午前中、当課主催の会議があるから、俺は出席できない」
との回答。
(あなたを一番頼りにしていたのに)との言葉を飲み込み
「わかりました。誰か一人だけでも参加していただければ助かります」
と応え、F農園、M農場の連絡先を手に職場に戻った。

 筆者と農業振興係長は、一緒の職場で仕事をしたことはないものの、飲み会で何度か同席したことがあり、その役人らしからぬキャラクターにシンパシーを感じ、今回の打ち合わせの戦力として、大きな期待を抱いていたのであるが、流石にこれ以上無理を通す訳にはいかなかった。

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