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ミラクルミッション #10二次予選

 2回目の「夜ミーティング」は、6月25日、S商事本社近くの居酒屋で開催された。

 今回のミッションとは別件で、農業振興課長、農業振興係長がS商事本社を訪問することになり、東京で「夜ミーティング」が企画されたのである。
 農業振興係長からの筆者に対する
「筆者君、参加できなくて残念だね」
との声がけに
「何をおっしゃる。休暇をとって自費でかけつけますよ」
と応えて、筆者も参加した次第である。

 そして、この楽しいミーティングの翌日から、二次予選が始まった。

 S商事からの電話の声は、実に事務的であった。(昨夜の盛り上がりは何だったのでしょうか)
「田原の土地について、社内で検討する上で、1点突破とは行かないです。
比較物件がないと稟議があげられないのです。
 私としても、このまま貴市と事業を行い、あの土地を活用したいと思うのですが。そこでお尋ねです。更地の適地は無いとのことですが、活用できそうな廃校はありますか。あれば資料をいただけますか。
 また、田原町の環境では不便すぎて、集客が見込めないのではという声も社内で出ています。例えば、A町の方が果樹と観光のイメージがあるのではないか、駅前の方が集客を期待できるのではなどの意見が出ています」
「承知しました。先日の田原町よりも不便になりますが、いくつか、廃校がありますので、直ちに資料を送付します。また、田原町で事業を行う利点について、地元としての考えをメモにまとめ、別途送付させていただきます」

 実際のところは、当市以外のところで、既に比較物件を準備しているのかもしれない。まぁ、結果として他市に落ちても仕方ない。が、できればではあるが、当市で事業化して欲しい。
 そのためには、市内での比較物件を出さなければ、と考えながら教育委員会に向かった。
 廃校の担当者は、以前の同僚だったので、面倒な話をとばしてお願いした。
「ということで、情報提供の依頼があったので、資料をデータでください。選んでいただける可能性は低いので申し訳ない。文書が必要なら後で届けるから、データは今すぐ筆者宛にメールして欲しい」

 そして、S商事に対しては、当市でも辺境な地である田原町であることを逆手にとり
「田原町で事業を行いたい7つの理由」
と題して、A4用紙2枚のレポートを送付した。
1 福島県の農業支援を目的としていること
2 福島県全域を支援の対象としていること
3 地域性・拡張性(発展可能性)が高いこと
4 広域観光性が高いこと
5 公共性が高いこと
6 開拓者精神・未来への希望を表現できること
7 効果的な地域プロデュースが期待できること
要約すれば
「ある程度、市街地が形成されているよりも、何にも無い、僻地のような場所の方が、競合しないし、変な色も着いてないし、面白いのではないですか。既存事業所を利することがないので、他市町村からも参入しやすい。また、僻地の住人は地域活性化に積極的で、協力してもらえると思います」
という提案である。

 根拠がない詭弁だろうが何だろうが、他市町村ではなく当市で、当市であれば田原町で事業を実施して欲しい一心である。いつもどおり、内部の決裁は受けていない、無責任な独断専行である。

 実のところ田原町で事業を行って欲しい「真の理由」は、筆者が田原町出身ということに尽きる。
 しかし、いくら厚顔無恥の筆者と言え、田原町の役に立ちたい、田原町に貢献したいという思いをレポートに記載することはできなかった。

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