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【創作】連載小説「小じさん」

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不思議生命体「小じさん(こじさん)」。それは、なんだかんだいてくれて嬉しい、小さなおじさん。
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#小説

小じさん第四話「緑の小じさん(再び?)」

 両足で小刻みにステップを踏む。顎先から汗が滴る。 「いっ!」  マスクの内側でおもいき…

桐沢もい
1年前
9

小じさん第5話「灰色の小じさん」

 あれは本当にあったことなのか、それとも何かの見間違いだったのか、ちょっと自信がない。で…

桐沢もい
1年前
18

小じさん第七話「黒い小じさん」

 気がついたらいつもの天井があった。僕の部屋の天井。僕は仰向けになっているらしい。背中の…

桐沢もい
1年前
8

小じさん第8/八話「私/僕 (小じさん)」

 う〜ん、う〜ん……  私は部屋の中を、ひとつの壁から反対側の壁まで、何度も何度も往復し…

桐沢もい
1年前
10

小じさん第9話「かたのり小じさん(前編)」

「ちょ! なにこれ。マジうま」  感激の叫びを上げ、フォークを口に加えたまま丸々とした目…

桐沢もい
1年前
7

小じさん第10話「かたのり小じさん(後編)」

「え? いや、……ううん。ちょっとぼぉっとしてただけ。何だっけ?」  と、私がごまかすと…

桐沢もい
1年前
1

小じさん第十一話「砂地の小じさん 1」

 川面が反射する光の粒に、僕は心を奪われていた。それは僕の視界の中できらきら、ちろちろと、無邪気な小人のようにせわしく動き、僕に何かを語りかけようとしているみたいだった。それはほとんどこの世の景色とは思えなかった。僕にとってそれはあくまでテレビや映画のスクリーンの向こうに見る景色であり、それを見る僕はいつも自宅の椅子(脚の長さが不揃いでガタガタいう)、または映画館の座席に腰を落ち着かせているはずだった。  しかし今、僕はこの景色の一部としてここに立っている。  長らくスランプ

小じさん第12話「遊園地と小じさん 1」

 どうしよう……  私は自室のベッドに向かって途方に暮れていた。といっても、問題はベッド…

桐沢もい
1年前

小じさん第13話「遊園地と小じさん 2」

 遊園地は盛況だった。ここはディズニーランドかと突っ込みたくなるほど、人で溢れかえってい…

桐沢もい
1年前
3

小じさん第十四話「砂地の小じさん 2」

 ――ときどき心を生かしてやらんと、いずれお前さんの心はここみたいに、山奥で人知れず死ん…

桐沢もい
1年前
1

小じさん第十五話「砂地の小じさん 3」

 男は小屋の扉の取っ手を握り、扉の左下あたりを思い切り蹴ると同時に扉を引いた。すると、扉…

桐沢もい
1年前
1

小じさん第16話「遊園地と小じさん 3」

 みっちょんの頭頂から小じさんの顔が私に向けられている。私はその顔を見る。何もない顔。の…

桐沢もい
1年前

小じさん第十七話「砂地の小じさん 4」

「よう。また会うたな。こんなとこで何しとんのや?」  小じさんはにやりと笑って言った。も…

桐沢もい
7か月前
1

小じさん第十八話「黒い小じさん? 1」

 あれから僕は、精神状態にしても、日々の生活にしても、少し落ち着きを取り戻していた。短いひとり旅から都会生活へ帰還した僕は、毎日決まった時刻に出社し、決まった時刻まで決められた業務をこなし、決まった時刻に退社した。心は驚くほど穏やかだった。小じさんが優しい言葉をかけてくれたからだろうか。小じさんが、なんとかしたると言ってくれたからだろうか。  はっきりとした理由はわからないが、今の僕は妙な安心感に満たされていた。  あの男のことは羨ましかった。僕の中に湧き起こるその感情を、