桐沢もい

連載小説「小じさん(こじさん)」見ていってください。詩もたくさんあります。

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マガジン

  • 【創作】詩

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  • 或る医ケア児とその家族の詩

  • 【創作】連載小説「小じさん」

    不思議生命体「小じさん(こじさん)」。それは、なんだかんだいてくれて嬉しい、小さなおじさん。

  • 息子の詩

  • 【創作】短歌

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最近の記事

【詩】或る医ケア児の詩

 親のアテレコ追補版 オレのおしりが火を吹くぜ (プリッ) お、新人ちゃん(看護師)だな。しめしめ。僕いいコでちゅ〜NGチューブ抜いたりちまちぇ〜ん (チラッ この間、入院中に出会った同じ医ケアの友達にな、パパの顔ゾウに踏まれたみたいに潰れてて見てられへんねんって言ったら、 「いやいや医ケアできるだけマシやて。うちなんかパパ逃げてもうて、もうおらんからな」 「そうか〜、そりゃまた大変やなあ」 なんて言い合うてな、 たしかに、逃げてまうよりはマシかいな〜。 どう思う?

    • 小じさん第十九話「黒い小じさん? 2」

      「ついにあいつが出てきてもうたか……こら、あかんわ」  小じさんはいつになく、まいった様子で首を振り、もう一度「こら、あかん」と言った。  僕たちは店を急いで出たあと、少し離れたところにある公園に来ていた。公園には親子や友達同士で遊びに来ている子どもたちなど、ちらほらと人がいた。この人たちには僕はひとりで公園に来ているように見えるのだろう。小じさんの姿を見ることができる人間は限られているのだから。  店を出るとき2階の窓を振り仰ぐと、黒黒とした店内が見えた。そういえば、店内

      • 小じさん第十八話「黒い小じさん? 1」

         あれから僕は、精神状態にしても、日々の生活にしても、少し落ち着きを取り戻していた。短いひとり旅から都会生活へ帰還した僕は、毎日決まった時刻に出社し、決まった時刻まで決められた業務をこなし、決まった時刻に退社した。心は驚くほど穏やかだった。小じさんが優しい言葉をかけてくれたからだろうか。小じさんが、なんとかしたると言ってくれたからだろうか。  はっきりとした理由はわからないが、今の僕は妙な安心感に満たされていた。  あの男のことは羨ましかった。僕の中に湧き起こるその感情を、

        • 小じさん第十七話「砂地の小じさん 4」

          「よう。また会うたな。こんなとこで何しとんのや?」  小じさんはにやりと笑って言った。もちろん、小じさんはのっぺらぼうなので、彼の表情について本当のところはわからないのだが。 「雨が降ってきたので、ここで少し雨宿りをさせてもらっています。……ていうか、そんなこと聞かなくてもあなたには分かってるんじゃないですか?」 「もちろんや。ワイを誰や思てんねん」 「小じさんです。分かってるならどうして聞くんです?」 「なに言うとんねん。ただの挨拶に決まっとうやん」  僕は小じさんを

        【詩】或る医ケア児の詩

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        • 或る医ケア児とその家族の詩
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        • 【創作】絵本、童話、童謡詩
          7本

        記事

          【詩】エイプリルフール

          今日が、 いつも嘘であってほしいと思っている現実を ほんとうに嘘にしてくれる日であればよかった そうして1年をリセットして またゼロから嘘であってほしい現実を 積み重ねていく ぼくたちは、日ごろから 嘘であってほしい現実にまみれて 嘘であってくれと願うように嘘をつく 毎日エイプリルフールやってんだ だから今日は、 嘘であってほしい現実を ほんとうに嘘にする日であるべきだ

          【詩】エイプリルフール

          【詩】夢のカケラ

          夢をいっぱい詰め込んで背中にしょったランドセルは、初めはどの面もピンと張り、内からの力も外からの力も等しくいなし、その箱型をぱっつんと維持していた。きみがぐんぐん成長し、肌艶を煌めかし、表情に強い意志が宿るにつれ、彼は反対にくたびれてゆき、内からの力にも外からの力にも軟弱に歪み、きみの背中に対してめっきり小さくなった。その対照的な変化はきみが彼の生気を吸い取ったようだった。否、それは違う。きみがそれほど彼に興味を示さぬうちに、きみが彼のことなど道具としてしか見ていぬうちに、あ

          【詩】夢のカケラ

          【詩】それはどうしようもなく悲しい

          ひとは人形ではない 街を歩いているのは、まぎれもなくひとだ 多様性と無個性が矛盾なくmixした渋谷の異様な空気も 誰もが殻を破る一歩手前で悶えているような新宿の錯雑した空気も 人形には醸せない どんな街にも愛と憎が入り乱れているが、それらはひとの根源にある美しい性質群の個々の表現型に過ぎない 起源は同じなのだ だから愛と憎は状況に応じてよく入れ替わる 人形に愛も憎もない ひとが人形になれば、渋谷と新宿は失われる ところで、 ひとがひとを殺すのは何故だろう ひとは何故戦

          【詩】それはどうしようもなく悲しい

          【詩】或る医ケア児の詩

          親のアテレコで雄弁 にくまれ口も自由自在さ  おい、おっさん。帰ってきたのに挨拶なしかよ  ほら、はよオムツ変えんかい  たるんどんちゃうか  おっさん、イケメンの気持ちわかってへんやろ  ほら、目ヤニ残ってんで。はよ取ってや  (いやいや、◯◯くんそんなこと言ってへんって)パパ大好き(ってひたすらそれだけ言ってるんやって)  アテレコすんのはいいから、せめて統一してや あゝ、かわいい子.

          【詩】或る医ケア児の詩

          【詩】息子の詩

          マンガ読んでないで宿題しなさい!  と言われると  きみはニヤリと笑って、 「パパのせい!」 パパはいま会社でしょ!  と返せば  きみは憤然として、 「パパが僕を操縦してるんだ!」 じゃあ、パパのせいで宿題忘れましたって、先生に言いなさい!  と最後の一撃かましてみると  論破されたきみは言葉ではなく地団駄で応戦する 家が壊れるからやめなさい!  そんな話を妻から聞いて  オレの鼻の下は緩むけれど  きみとのそんな応酬をして、 もう第千次世界大戦くらい!  と言う

          【詩】息子の詩

          【詩】息子の詩

          妻からの視点で2篇 * 学校から帰ってくると 誰々くんと遊ぶ約束した〜って 嬉しそうに言う どこで、何時に待ち合わせ? わたしが念のため確認すると、 わかんな〜いって こともなげに言う それじゃあ会うこともできないじゃん そんなふうにして小学生が始まったね * まだ入りたてのサッカーチームで 練習試合 そう! そこだ! いけー!  って、わたしが応援すると  よく聞こえなかったきみは ママなに〜?  って、ボールそっちのけで  保護者席めがけて走り寄ってきたね

          【詩】息子の詩

          【詩】或る医ケア児の詩

          光を映さないきみの目は きっと誰よりも お顔をかわいく見せている 音を知らないきみの耳は きっと誰よりも お顔をチャーミングにしている 酸素を使うのが下手な きみの呼吸は きっと誰よりも 力強い ほとんど何もできない きみの身体は 誰よりも僕たちを優しくさせる ぬくもりに満ちている

          【詩】或る医ケア児の詩

          【詩】悲劇の原理というか僕の個人的な願望

          この世界にはきっと錯覚しかなくて、素敵な錯覚、酷い錯覚、ウキウキする錯覚にゲンナリする錯覚、世界を変えてしまうほどの錯覚に何にもならない錯覚と、各種錯覚取り揃えておりますってなもんで、でもこれ全部ただの錯角です。「きみのこと理解してるよ」みたいな顔するのやめてほしい。口に出すなんてもってのほか。と、なぜなら全部錯覚ですから。ゆらゆら実体の定まらない陽炎、実はそこにはない蜃気楼。僕はあなたとこの世界に溶けてただよいたいだけなのに、うまくいかないね。輪郭は鋭い刃物だ。そんな刃物を

          【詩】悲劇の原理というか僕の個人的な願望

          短歌8つ(6)

          満月に届かぬ夜にきみ思う このままいっそ駆(欠)けてゆきたい 息子氏が折り紙を折る昼下がり 眠たく香るスタバのORIGAMI 自転車に乗れずに泣く子怒る親 ともに成長途上なるかな 即死して人生プツリ終わったが 世界そのままなんとも妙だ 喧嘩した昼の彼女は背中向け 華奢な身体がベッドに浮かぶ 人間は鼻汁(はなじる)さえも愛おしい 夢を抱くな食われちまうぞ 待ちわびて待ちわびてなお待ちわびて 何を待つのか忘れてしもた 搾取され蓄積しゆく鬱憤よ 我望むのは無何有郷(む

          短歌8つ(6)

          【詩】いとしさとせつなさと、鼻汁

          鼻をかめばべとべと汚い鼻汁がティッシュを汚すのが人間だ。わたしは鼻をかむたびにその汚さに尻込みし、これまで自分に、ひいては人間に対して抱いていた夢をチューニングする。こんなものが体内から出てくるなんて、人間とはそんなに綺麗なものではないのだ、と夢の下方修正をするのだ。油断すると夢はすぐ上振れする。鼻をかむことで適正な夢のサイズを保つ。ゆえに、花粉の飛ぶ時期や風邪をひきやすい寒い季節においては、夢は概ね適正サイズに保たれる。それ以外の季節には別のチューニング方法が必要となるが、

          【詩】いとしさとせつなさと、鼻汁

          【詩】死

          目の前に死体がある。自分の家族かもしれないが、家族のように慕っていた友人かもしれない。或いは数年に一度会う程度の浅い付き合いの友人の可能性もあるが、赤の他人である可能性がいちばん高いようにも思う。死因は事故か、病気か、或いは通り魔による殺人かもしれない。いずれにせよ、目の前に死体がある。その事実だけが確かだ。そこにあるのは、人間ひとりの人生という大きな時の流れの切断だ。途方もなく巨大で深淵な流れが、ふつりと止まり、今やまったき無と化している。しかし一方で、世界の時は引き続き一

          【詩】令和6年の人間

          それ、わたしには関係ありません。わたしはそうなるなんて思ってなくて、ただなんとなくそうしただけですから、はい。そうなることが分かっていてわざとそうしたなんて、そんな、だれかに迷惑かかることをわざとするわけないじゃないですか。そう、ほんとうに、ただなんとなくなんです。それいじょうでも、それいかでもないんです。ながれです。ながれ。そう、ながれ。まあ、それは置いとくとしても、それをとめることができた人は他にもいると思います、はい。そうなると薄々わかっていた人、何人かいませんか。いま

          【詩】令和6年の人間