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旅する『漢詩の名句・名吟』に酔ってみようか?

図書館で借りて読み終えた。
漢詩の名句・名吟/村上哲見/分類921ム』
「名句」が気になって手にとった本。


◇酔ってみようか?

 今から千二百年ほどむかしのこと、長安を旅立ってこの道をたどって行く人を見送る有名な詩を思い出していただきましょう。「君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒」というのがあります。

本書 序章 漢詩をどう読むか 15頁より

これはもうのんじゃおうか ワンカップ 気分は旅人
でものみながらは読めない、読むのはしらふで。

芭蕉の句、

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。

芭蕉の「奥の細道」書き出し

李白の一節、

それ天地は万物の逆旅にして、光陰は百代の過客なり

李白の「春の夜に桃季の園にて宴するの序」最初の一節

―――そもそも天地とは万物を迎い入れ送り出す旅館のようなもの、そして月日、時間はそこをおとずれては去って行く永遠の旅人である。(中略)

「浮生は夢の如し、歓びを為すこと幾何ぞ。」(中略)
―――夢のような人生、よろこび楽しむことがどれだけあるだろう。

 本書 Ⅰ 李白と酒 50-52頁より

芭蕉も唐詩をヒントに詠んだのかもとある。
旅は人を詩人にする、詩は人に旅を感じさせ

◇背景はドラマチック

漢詩といえば、李白の月だそう。

長安 一片の月        長安一片月
万戸 衣を 擣つ声      万戸擣衣声
秋風 吹き尽さず       秋風吹不尽
総べて是れ玉関の情      総是玉関情
何れの日にか胡慮を平げて   何日平胡慮
良人 遠征を罷めん      良人罷遠征

本書 Ⅱ 月の光 (李白「子夜呉歌」)70頁より

「一片の月」に私はすっきりな夜空にぽっかり浮かぶ月を想像したよ。

唐詩の翻訳詩集を下地にアレンジされたオペラ「大地の歌(グフタフ・マーラー)」があるというのでYouTubeを見る。んん?感想はいえない。

戦に重ねられよく知られる、これは

国破れて山河在り
城春にして草木深し

本書 Ⅵ 杜甫の律詩 (杜甫「春望」)116頁より 

757年、杜甫46才のとき安禄山の乱、長安における作。この「春望」を作ったあとに杜甫は長安を脱出。失脚、左遷、官職を捨てる。漂流の旅に出たという。詩の背景の物語はドラマチック。

◇シルクロードの旅愁に、想う

筆者の解説でイメージがわき、どっぷり旅愁、

葡萄の美酒 夜光の杯          葡萄美酒夜光杯
飲まんと欲すれば琵琶 馬上に催す    欲飲琵琶上馬催
酔うて沙場に臥するを君笑うこと莫かれ  酔臥沙場君莫笑
古来 征戦 幾人か回る         古来征戦幾人回

(中略)
かがやくグラスに注いだぶどうの美酒を飲もうとするおりしも
酒をすすめるかのように琵琶が馬上でかなでられる。―――
(中略)
すっかりできあがって砂原にひっくりかえった。このようなぶざまなすがたを笑ってくれるな。「なぜなら」
むかしからいくさには出陣したものも何人が無事に帰れたことか―――
この異境の地でいつはてるともしれないこの身なのだ、

本書 Ⅶ 旅愁・シルクロード(王翰「涼州詩」)205頁より

遊牧民族の風習、ゴビ砂漠の風景、戦いのむなしさ。
読み手に想像させる。自由に感じていいのだ。
漢詩を咀嚼する人たちのセンスよさは学びにあると思った。
漢詩、渋い。酔った気分。

奈良・平安時代をおもう。「なぜなら」
みんな 今もいきている。
日本語、漢字ひらがなカタカナに乾杯

ではでは

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