冬のにいがた備忘録 #1
ギリギリまで終わらないと思っていた仕事。なんとか赦されるくらいには処理をして、恵比寿のスカイウォークを小走りで駆け抜ける。まだ、バックパックが済んでいない。でも今すぐにでも東京から旅立たないと、惨めに過ごす誕生日を迎えることとなる。
2回目の「これ」だ。人と長い時間を共にすることには、本当に不慣れな人なのだなと嫌気がさす。そして、3分後には開き直っている。4年ほど前から変わらない。昔から変わらないことはなんですか?の問いには、原則その人の強みであったりとか熟した思考であったりとかが返ってくると認識していたのだがその例から漏れたらしい。
4年なんて短いものだろうという声が遠くから聞こえる気もするけれど、20年ほどしか生きていない身からすると人生の1/5ということを忘れないでほしい。
自分の部屋に着き、google先生に「国内旅行 持ち物リスト」を聞いて荷詰めを始める。出発まで1時間もないけれど、どうしても頭を洗いたい。15分ほど浴室に篭り、5分ほどバスタオルを羽織りながらタバコを吸って、ドライヤーの風を必死に頭に当て続ける。
やばい、着るもの決めてないじゃん。とつぶやながら、その辺にあった服を掴み、大学時代に使っていたリュックサックに入れる。足りないものは出先で買えばいい。社会人になってから無駄遣いが増えた気がするけど、生活のことに気を回している心の余裕がない。少し使いすぎたなら明日の昼を抜けばいい。
10分後の電車に間に合えば、バス乗り場には15分ほど余裕を持って到着できるはずだ。まだ湿り気のある髪の毛を夜の空気に晒しながら、できうる限りの防寒用品を携えて駅まで走った。
夜行バスに乗るのは数ヶ月ぶりだった。GWにゼミの同期たちに会うために、京都へ行った。6:30ごろに友人に車で迎えに来てもらったけれど、寝不足でどうにも気持ち悪さが残ってしまう、もう学生気分の身体でいない方がいいなと後悔したばかり。
けれど、新幹線で魚沼に行くよりもバスで新潟(日本海付近)に行く方が費用を抑えれるのなら……と浅ましさが出てしまった。そのため、必ず寝ることに集中して過ごすことと、できれば酔い止めを持って行くことを心に決めていた。結果、酔い止めはすっかり忘れてしまったけれど、バスの中で幸いにも快眠を得ることはできた。
北海道でサークルの先輩と選んだ耳がもこもこになる帽子をしっかりと被り込み、ラムネを口に含みながら到着までの時間をまった。
早朝、新潟に着く。新潟県新潟市新潟駅。紛れもない、正真正銘の新潟だ。23年初めての雪景色を前に、白い息が弾んだ。一瞬で悴んだ手でリュックのポケットを漁りつつ喫煙所に向かい、白い息を吸って、吐いて。繰り返しながら、明日以降の目的地をgoogle map上に立てていく。
今夜はゼミの読書会があるから、そんなに観光できると思っていない。朝ごはんを食べたら、駅の近くにある酒蔵の見学にだけ行く予定だ。それでも、今回の旅は期待が大きい。
バイト時代に仕込み体験をさせてもらった大分の酒蔵での景色を思い返して、少しニヤけながら火を消した。取り急ぎ、なんでもいいから腹に入れたい。
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