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”めんどくさい” の先に

昨日に引き続き、便利で機能的なものの価値が下がり、自分にとって意味のある”めんどくさいものに価値がある”という話の続き。

前回は、店舗で買い物をするめんどくささに、販売員さんがどのように価値提供コミュニケーションをするのかについて。

今日は、めんどくさいもの(商品)の価値について。
そして、やっぱり販売員の目線でお客様にどのように接するのか?について。

3つのブランドで学んだ商品とお客様の関係性

私が初めてアパレル企業で働き始めたのは約20年前。

百貨店系のキャリアブランドで、業界内ではトップシェアのブランドに所属していた。今は100億くらいのブランドになっているが、全盛期は300億を超える、どの百貨店にも存在するブランドだった。

当時は、ファストファッションが上陸する前で、さらには国産であることが当たり前の時代。お客様への商品説明も”どこで作られたのか?”と”どのようにメンテナンス長く綺麗な状態を保てるのか”についての説明は必須だった。

キャリアブランドに10年弱努めた後、サンローランやクロエなどのメゾンブランドを取り扱う高価格帯のバイイングブランド(セレクトショップ)にブランド異動をし、その3年後くらいに地方の50億くらいの中価格帯のアパレル企業に転職をした。

お客様のニーズの違い

百貨店系キャリアブランドでは品質とスタンダードであり品があることを重視していた。

路面店系のセレクトショップでは自分の個性が活きること、希少価値の高いものであることを重視。

ショッピングモール系の中価格帯ショップでは、自分の個性が活きることと、他人と違いすぎないこと、長く着られることを求めていたように思う。

もしかすると、私がアパレルで努めた20年間の外部環境も変化の激しい時代なので、そのブランドごとに感じたお客様のニーズに、ブランドにのみ求めているものだけでなく、外部刺激もあるのかもしれないけれど。

めんどくさいに価値がある

私は、始めのブランドがキャリア系のブランドだったので、品質の良さとお手入れのしやすさや便利さはとても重要なものだと思っていた。

なので、たとえば繊細なレースはひっかかたら一発アウトだし、あまりにも体にフィットしたコンパクトなジャケットは動きにくい、ファスナーではなく大量のボタンでの脱着や、毎回ベルトの開け閉めをするアンクルストラップのシューズなど、めんどくさいが溢れていた。

店長として配属されたにもかかわらず、この世界の商品はあまりにも知識がなく、素敵だけれど日常に着るなんで理解不能だ。

そんなわたしの価値観をガラリと変えてくれたと今になって思うエピソード。

”大切に扱うから、整うんですよ。”

店舗でサンダルを選んでいた時のこと。めちゃくちゃ可愛い!けれどネックはアンクルストラップがフックではなく、1回づつベルトの穴に通すタイプ。

休憩中はシューズを脱ぐし、朝の忙しい時間もめんどくさい。
けれど、かわいい。
けれどめんどくさい。
どうしようかと悩んでいたときに副店長のFさんが言ってくれた言葉に心を撃ち抜かれる。

「和子さん、繊細なものを1回づつ丁寧に扱うから、その仕草が凛とした女性らしさを生み出すんですよ〜。何を選ぶかで仕草変わりますよ〜」と。

ズキュン!となった最初のエピソードだ。

何を選ぶかで、ガサツさを生むか否か。

自分のライフスタイルにモノを合わせるのではなく、自分の好きなものに生活を合わせていくという感覚は、お買い物は未来の自分への投資と考えてた私の心を揺さぶった。


ネガティブな反応に対して

もちろんのこと、そのサンダルは購入。MARC JACOBSだったな。

私が、Fさんの一言でモノは便利さではなく、理想の自分の佇まいを造るものだと教えてもらったことで、私の接客も変化した。

”繊細だからこそ、丁寧に行動することでエレガントな佇まいが引き立ちますよ。”

”お子様がいらっしゃると、真っ白は避けてしまいがちですが、思い切り漂白ができたり、染め直しができるという点でも、実は長く使っていただけますよ。ママだからって好きを諦めるのはもったいないかもしれないですよ。”

など。

こういったコミュニケーションでお客様にご購入いただく確率は数段上がったのだけれど、それ以上に、お客様の表情がぱっと明るくなるのがなにより嬉しい。

それは決して、高価格セレクトのお客様だけに効果があったわけではなく、その後の中価格のショップでも同じ。

店舗のメンバーは人生のガイド

めんどくさいは、めんどくさい。

けれど、めんどくさいには価値がある。

めんどくさいの価値に気づくのは、便利さを追求している渦中の人には気づけない。だからこそ、販売員さんの何気ない言葉が人生のガイドになる。

そんな、大切な役割を私たち販売のメンバーは担っている。そう思うと、やっぱり素敵な仕事だなと心から思うのです。

買い物って好きな自分への贈り物


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