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キャッシュトラック('21・米)【”ガイ・リッチー節”をあえて封印?!硬派すぎるステイサムに酔いしれる壮絶な復讐劇】

「歩いてるだけで強そう」でおなじみ(嘘)、ステイサム扮する”H”が、LA屈指の現金輸送車の警備会社に入社。寡黙で謎に満ちた彼は、実はとんでもない戦闘能力を持っており、次第になぜこの会社に彼が就職したかの理由が徐々に明らかになっていきます。オリジナルは、フランス映画の『ブルー・レクイエム』(未見)とのこと。

新作を観るたびに心酔してしまう、大好きな監督ガイ・リッチー。先日公開された『ジェントルメン』が、まさに『スナッチ』や『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』などの初期作品を彷彿とさせる原点回帰作だったのに対して、本作は良い意味で”ガイリチ節”を封印した異色作!コミカルな場面よりも、圧倒的にシビアな場面のほうが多くて、彼の新境地を垣間見た気がしました。なんといっても嬉しいのが、前述の『ロック~』以来ガイリチ映画にたびたび出演してきたジェイソン・ステイサムが16年ぶりに彼とタッグを組んだこと!チート級に強すぎるミステリアスな主人公”H"の内に秘めたる野心を見事に体現し、まさにステイサムにしか演じられない役柄のように感じました。

邦題の"cash truck"(現金輸送車)が物語のキーとなるのは間違いないのですが、個人的には邦題の”wrath of man"(男の怒り)というタイトルのほうがしっくり来る内容。冒頭の輸送車襲撃の様子が映された監視カメラの映像に始まり、その事件と"H"の関連性、さらになぜ彼が”怒って”いるのかの真実が明かされていきます。回想シーンがたびたび差し込まれるのですが、そこはまさにガイリチ様の伝家の宝刀。一見複雑に見える事象や人間関係が、最後にパズルのようにぴったりハマった瞬間の気持ちよさといったらありません。
真実が明らかになった後は、ブラック・フライデー当日のとある強奪計画を軸に、”襲う側”と”守る側”の必死の攻防を描き、ラストまで一気に畳みかけ。特筆すべきは、”襲う側”の人々の人間味あふれるバックストーリーも描かれていること。ただの悪人で終わらせず、彼らが犯行に至る経緯や葛藤にもフォーカスしている点がすごく斬新でした。(中心人物となるジェフリー・ドノヴァンが最高にイカす!!)

いぶし銀の役者さんが揃い、さらにはガンファイト・シーンもきわめてリアルなので、他のガイリチ作品に比べると少し地味な印象は否めません。しかし、だからこそキャラクターの本質的な部分が描かれていて、人間ドラマとして非常に見ごたえがある作品でした。涙も汗も血も流さないステイサムより、時に弾丸を受けて負傷したり、感情的になる瞬間があるステイサムのほうが個人的には好きなので、終始楽しめました!
久々に大作で見かけたジョシュ・ハーネット、さらに強欲な役柄で印象をガラリと変えたスコット・イーストウッドの好演も光っていました。

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