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Exposure Practice「恐怖の感情を受け入れる訓練」

Exposure Practiceでは恐怖の対象ーー私の場合は揺れるものや回るものーーに直接対峙し、それを繰り返すことで恐怖症を克服しようとしますが、なぜわざわざ怖いものに対峙する必要があるのか?というと、恐怖の感情を受け入れるため、なのだそうです。

つまり、Exposure Practiceでは、怖いと感じることがマストになってきます。セラピストさんが「つらいと思うけど、克服できる」と言ったのは、そういうことなんですね。

これ、私の中では驚きでした。なぜかというと、10代の頃に日本で通っていたセラピーでは、全く逆のことを言われていたから。

かなり昔のことなので記憶が曖昧ですが、かつてのセラピーで言われていたのは、

・恐怖症は基本的には完治しない
・恐怖の感情がなるべく起こらないよう、恐怖対象があったら気をそらす

ということでした。
なので、パニック状態になってしまった時の対処法(呼吸法や自律訓練法など)を練習するのが、私が10代の頃に受けたセラピーのメインになっていました。

この時に言われた「恐怖症は基本的に完治しない」という言葉はとてもショッキングで、当時の私は絶望しました。「恐怖の回路が出来上がってしまうと、それを断ち切るのは不可能」という話をされました。そうなんだな、私の脳では揺れるもの=恐怖という回路は完全に出来上がってしまっているから、もう治すのは無理なんだなと、ずっと思って生きてきました。

アメリカに移住してからは、「もしかしたらアメリカの精神医療は違うかもしれない」とも思いましたが、再び「治らない」と言われるのが怖くてなかなか治療に踏み切れませんでしたが、こんなことならもっと早くセラピーを受けていればよかった!


さて、話をExposure Practiceに戻して。


なぜ、恐怖の感情を受け入れることが必要なのか?ですが、

恐怖感は、避けようとすればするほど、より強固になっていくのだそうです。目をそらしたり、その場から立ち去ったり、ほかの事に集中して気を紛らわせようとしたり……といった「避ける行為」をすればするほど、恐怖の感情はふくらんでいくのだとか。

逆に、直面したまま逃げようとも気をそらそうともせず、ありのままを見つめる(受け入れる)ことで、次第に恐怖の感情は薄らいでいく、という特徴があるのだそうです。

つまりは「慣れ」の一種なのだと思うけれど、

・恐怖の感情を特別なものとして扱わない
・恐怖の感情(それを抱いている自分)を客観視する

これを繰り返すことで、恐怖感が襲ってきても、「あ、また来たな」「この感じだと、パニックレベルこれくらいだな」「何分ぐらいで薄らいでいくから大丈夫だ」という風に、「恐怖感の予測」ができるので、落ち着いて対処できるようになり、さらに冷静な対処を繰り返すことで恐怖感自体もしぼんでいくのだそうです。


セラピストさんからこの説明を聞いて、今まで私は、全く真逆のことをし続けてきていたんだな〜と、愕然としました。

揺れるものがあると、それを目の端でキャッチしたらすぐさま体ごと角度を変えて絶対に視界に入らないようにするし、なんなら立ち去るし、どうしても立ち去れない場合には携帯で漫画や動画を見たりする等の気を紛らわす行為をしていました。

恐怖を避ける行為をし続けてきたことで、自分で自分の恐怖症をどんどん加速させていたんだな……。もっと早くに知りたかったな〜これ。


セラピストさんの説明は、聞けば聞くほど「本当に私の恐怖症は治るかもしれない」という確信を強くしてくれました。これまで日本での自分のセラピー体験や、メディアからのなんとなくのイメージで、セラピーってもっと共感や慰めを主とした「お悩み相談」のような印象が勝手にありましたが、全く違うんですね。とても具体的で、実践的。セラピストさんは「それは大変だね〜」みたいなことは、ちょこっとは言ってくれますが、基本もっと淡々としていて、なんというか、スポーツのコーチやトレーナーに近い感じ。

ほんと、もっと早くにこのメソッドができる人と出会えていたら、私の人生もっと違ったものになっていたかもな、と思っちゃいます。

まあ、それでも大差はなかった気もしますが。でも格段に生きやすくはなっていたと思う。


さて、Exposure Practiceで恐怖の感情に向き合うことの有効性がわかったところで、

それが恐怖症の克服に必要不可欠とはいえ、やっぱり恐怖感に真正面から向き合うのは勇気がいりますよね。何の策もなく恐怖を受け入れるって、かなりの拷問です。下手したら、突発的に自傷行為に走ってしまうかも、頭がおかしくなってしまうかも、なんて気もします。

ではどうしたらいいのか?

じつはちゃんとしたインストラクションがあるので、それについて次回書いていきたいと思います。

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