かかった夜を越えて
頭の回転が止まらない。
次から次へと思考が流れてきて私を苦しめる。
脳内で将棋を指す私、もったいぶった哲学を語る私、ドビュッシーを聞く私、小説の世界を想像する私、ニュースを見る私、脳内でチェスをする私、映像ごとタイムスリップする私、数学の問題を解く私、ピアノを演奏する私、私、私…。
荒れ狂う思考に身を委ね、この子たちが落ち着くのをただじっと待つ。
布団に頭を突っ伏し、できるだけ思考を深めないように、考えないようにして嵐が去るのを待っていた。
いくぶんの時間がたちようやく私は顔をあげることができた。
ふらふらとした足取りで水の入ったペットボトルにたどり着くと、残っていた水を一気に飲み尽くす。
わずかなの清涼感と安心感と共にようやく私の思考は熱暴走をやめた。
一度止まると今度は楽しい時間が待っている。思考をふりかえる時間だ。
必至をかけて勝った将棋、ショーペンハウアーと意気投合した私、亜麻色の髪の乙女に酔いしれる私、空の塔に旗をたてる私、下らないニュースに失笑する私、勝ちを引き分けにされ憤慨する私、幼稚園の頃の失敗を思いだし落ち込む私、途中で匙を投げる私、月の光を月光の下で演奏する私、私、私、私…。
一つ一つがしっかりと形になって私の中に入っていく。もっと深く掘れるしもっと味わうことができる。それでもここら辺にしておかないと今度は自力で思考が暴走してしまう。
カフェインなんて飲まなければよかった。
でも、美味しいからきっとまた飲んで、飲み込まれていくのだろう。
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