いちごフロート
小学生の頃、席替えをきっかけに仲良くなったAちゃんと、夏休みの自由研究を一緒にすることになった。
急激に距離が縮まったきっかけや、自由研究のテーマはサッパリ思い出せないが、Aちゃんの家に行くのが楽しかったことは今でもはっきりと覚えている。
Aちゃんには歳の離れたお姉ちゃんがおり、その当時中学生か高校生だった。
わたしの知らないマンガやアニメのグッズをたくさん持っており、毎日自由研究そっちのけでAちゃんと一緒にお姉ちゃんから借りたマンガを夢中になって読みふけっていた。
お姉ちゃんは年が離れているからか、優しくて落ち着いていて大人のように見えたし、実際に喧嘩しないし仲良しだとAちゃんから聞いた。
上に兄弟がいない私はとても羨ましく感じていた。
ある時Aちゃんの家で、おやつにいちごフロートが出た。
赤いパッケージに『いちごフロート』と書かれたグリコのアイスである。
いちご味のかき氷がドーナツ状に入っていて、真ん中にピンク色のアイスが詰まっている夏にお馴染みの氷菓は、わたしも大好きだった。
わたしは、かき氷のシャリシャリ部分とピンク色のアイスをバランスよく食べるのが定番であったが、その時Aちゃんは、真ん中のとこだけ先に食べるといいよと言い、本当にピンク色のフロートだけを食べ始めた。
せっかく2種類のアイスが詰まってるのに、かき氷だけ残ってもいいなんて変わってるな〜と思いつつも、わたしも真似をして食べた。
真ん中が空洞になる頃、Aちゃんのお姉ちゃんが牛乳を持ってやってきた。
どうやらフロートのあった部分に牛乳を入れると美味しいらしい。
Aちゃんのお姉ちゃん発案で、Aちゃんの中では定番の食べ方だった。
アイスに牛乳??と思ったがせっかくなので試してみると、いちごのかき氷と牛乳が混ざって本物のフロートみたいになった。
角の取れたかき氷は、サラサラと口の中で消えていく。
こんな特別な食べ方を思いついたAちゃんのお姉ちゃんは頭がいいんだなと思ったし、最近仲良くなったばかりの妹の友達にわざわざ教えてくれるなんて、すごい人だなぁと感心した。
Aちゃんとは中学でクラスも部活も被らなかったため、何となく疎遠になりそれっきりだが、今でもいちごフロートを見かけると牛乳を入れた特別な夏を思い出す。