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有料老人ホームで機能訓練以外をする、ということ

お仕事のひとつで、有料老人ホームに関わっている。

但し、個別の機能訓練は原則行わない。

…というと、どういうこと?となる方も多いので、個人的に思うことを現状を踏まえつつまとめてみる。

セラピストに求められていること

①入居者のアセスメント(身体状況・ADL)

②生活プラン、介護方法に関するアドバイス・指導

③入居者、サービススタッフに対する機能維持のためのアドバイス

④上記に付随する相談、記録、申し送り、ミーティング業務

要するに、セラピストひとりの,個の力で入居者さんを何とかしようとするのではなくて、アセスメントに基づいて、マネジメントやコーディネーターとして集団内で上手に立ち回ってね、ということ。

個人的には、これはとても良い働き方(働かせ方?)だと思っていて、理由としては、色々あるけど、

①セラピスト個人の独りよがりなアプローチを防止できる

②介護職、CM、看護師、それぞれの立場で考えることが要求されつつも、「では、入居者の方にとっての最善策は何か?」を考えやすい状況に自然と落とし込める(①に付随して、という前提で)

のが大きいかな、と。

実際に私が行っている立ち回り

①入居者のアセスメント(身体状況・ADL)

⇒アセスメントをすることが大事なのではない、というのがまず大前提。

 ただ、アセスメントができるのは、セラピストとしての強みである、というのも踏まえたうえで、以下。

・予後予測を立てる

・予後予測にまつわるリスクの周知とその回避のための対処法の考案

が恐らく求められてくる。但し、

・『現時点で現場で表面化している課題へのアセスメント』

・『現時点では表面化していないリスクの把握』

のどちらの要素が強いのかの見極めが大事。


②生活プラン、介護方法に関するアドバイス・指導

⇒これは主として『表面化している課題』へのアプローチが主。

但し、『現場の介護サービススタッフが問題だと感じている(表面化している課題)を鵜呑みにしすぎない。事の本質、原因をしっかりセラピスト視点で評価する』のが必要かな、ということ。

具体的に言えば、たとえば「外傷予防のためにトランスファーシートを購入するので、選定してください」という依頼があったとする。

でも、トランスファーシートって、『移乗を簡便にする』ことを主目的にナイロン素材で作られているから、『鬱血や圧痕を起こしやすく、ふとした接触による外傷リスクが高い方』に対してそもそもシートを使おうとすることは、余計にリスクを高めてしまう。

だから、『選定してください⇒はい、選定しました』ではなくて、

『選定してください⇒導入目的を踏まえると、現在必要なのはシート購入ではなく、移乗時の外傷リスクにあたる場面を共有して、移乗方法を統一することではないでしょうか?』って返し方をすることもある。


③入居者、サービススタッフに対する機能維持のためのアドバイス

⇒状況的には、訪問リハビリでの利用者様に対するセルフケア指導、ご家族指導に酷似している、と思う。ただ異なるのは、入居者を取り巻く環境は在宅でのご家族とのマンツーマンではなく1対多数の場面が常である、ということ。

まず、入居者本人へのセルフケア指導。

・『簡単で』『1日1-2分でできる』セルフケアか

・提案から1週間後に必ず本人に状況を確認する

説明したときは理解していた(ように見えた)けど、やっぱりひとりではできなかった、継続できなかった、未定着、では意味がない。

セルフケアが難しい場合に、「スタッフによる個別機能訓練」になることが多いけど、「個別で」「毎日」時間をつくってもらうのは当然難しい。

どんなに長くてもせいぜい「5分」、「週3日」くらいじゃないだろうか。

その時間を取れないのであれば、居室送迎やトイレのタイミングでできる30秒程度の何か、を考案する必要があるし、そもそも最初から個別でやってもらおうと思わずに「ながら」でできることを考えた方が、最近はスムーズにいくことも多い気がしている。

④上記に付随する相談、記録、申し送り、ミーティング業務

⇒①~③の流れを踏まえて、申し送りや記録は(既存の定期記録とは別に)基本パンフレットみたいに紙1枚にまとめてチームリーダーや担当に送る。

クラウド記録はデータの振り返りには向いているかもしれないけれど、共有すべき時に共有ができるか、というと日々の膨大な記録の中で埋没してしまうこともある印象。

その上で、『ご本人の状況を踏まえたうえでとりあえず作りました。但し、運用方法についてはお任せします』の一文は必ず入れることにしている。

仮に間違いのない最適なアセスメントやアプローチの考案ができたとしても、それを実際に運用するのは現場のスタッフさんたちなので、週1しか来所できないセラピストが運用方法に口を出すことはしないようにしている。それやってしまうと、お互いの職域を侵害することにも繋がってしまうのかな、と。

まとめ

特にまとめらしいまとめにはなっていないけど、こういう形での関わり方は今後どんどん増えていいと思う。

IoT化が進むほど、機能訓練による機能回復だけにセラピストがこだわる必要は少なくなってくると思う。

むしろ、IoTをうまく利用するためにはどうしたらいいか、という視点で考えるきっかけにもなるのではないかなーなどなど。


おわり。

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