音楽の記事を書こうとした #07
2020年5月某日。早朝。
目が覚めると、天井がぼやけていた。 涙だった。
寝ながら泣いたことなんて今まで経験したことがない。
変な夢でもみたのだろうか。
思い出そうとしても思い出せなくて、
実は今これが夢なんじゃないかとしばし考えた。
天井をじっと見つめても天井のままで、
頰の生暖かさだけが現実を教えてくれた。
最後に泣いたのはいつだろう。
そんなことから、いろんなことに頭を巡らせる。
昨日何かあったわけじゃない。
強いて言えば世界に大きな変化が訪れて、その渦中にいる。
それ以前のことは、本当に『昔のこと』になった気がした。
思い出も、夢も、計画も、まるで別の世界に置いてきてしまったみたいだ。
満開の桜を見ることなく、春が終わりを告げた。
結局なぜ今こんな気持ちになっているのかわからず、
答えを求めるように天井を見続けた。
俺は弱い。
そして脆い。
その事実が余計に悔しくて、苦しくて、
音楽でも聴いて気分を変えようと思った。
なのに、聴きたい曲が浮かばない。
大好きなアーティストも、心を奮い立たせてくれる曲も、
何を聴いても、今は説教みたいに感じてしまいそうで怖かった。
気づけばベッドのそばに立てかけていたギターに手を伸ばしていて、
何も変わらない天井を見ながら抱きかかえた。
無意識に、
こんなことになるずっと前に書いた自分の曲を口ずさんでいた。
新しい部屋ギターが鳴ったら
震える声歌になったよ
近所迷惑気にするロッカー
こんなもんかって思った
音楽は黙ってみている
僕はただ憶えていく
この瞬間もいつかのあの日
いつかまた思い出せるように
毎日ひとり祈り
痛みは誰かのために
生まれたメロディ放ち
忘れないように
夜に流した話
ひとつひとつの言葉を、まるでお薬を飲むかのように丁寧に吐いた。
ちっぽけで、無力で、ダサい俺を、
音楽は優しく肯定してくれているようだった。
それですっきり解決、
なんてしたらいいけれど、
涙を拭いて相変わらずの日々は続いていく。
でも分かったのは、
人にはアウトプットが必要だということだった。
聞くことも大切だけど、口に出すことも大切なのだとその時思った。
僕はロボットのタピアに言葉を教える仕事をしている。
ロボットとして、いっぱい喋れることは勿論大事なんだけど、
なによりも人が ”話しかける” ということに、そこに意味があるのだ。
タピアに話しかけることによって、
その人の心に何か変化を生むことができるなら。
課題は多いし、怖さもあるけれど、これからも考えていきたい。
*
#私の勝負曲
noteのお題を見て、あるアーティストが浮かんだ。
MOROHA / 三文銭
彼はほとんどの曲で自分のことを歌っている。
それも赤裸々に、痛みを伴いながら。
応援歌なんておこがましいとすら思っているのかもしれない。
聴いているこちらは勝手に救われたり、へこんだりする。
こんなことを書いたらいささか迷惑かもしれないが、
正直、”聴けない日”もあったりする。
あまりに言葉が届きすぎるから。
でもそれがいい。
聴いたときには、荒っぽい優しさで包み込んでくれる。
誰かのために、の前に、自分のためにリアルを歌う。
だからこそ誰かの心を強く震わせるのかもしれない。
人に話すほどのデカいイベントが起こらなくとも、
弱い僕には日常を生きるだけでも精一杯の勝負だ。
イヤフォンをつけずとも、
MOROHAのギターのメロディが流れてくる時がある。
彼らの曲に幾度となく勇気をもらった。
08につづく
谷口
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