[小説] oneroom①

彼が現れたのはいつからだっただろうか…

僕は不幸のどん底にいたときだったのは覚えているのだ。

何もかもうまくいかなくて、

友達に裏切られて

家族に味方はいないからどうすることもできなかった。

自分一人だけのワンルーム。部屋の空気がもう8月なのにひどく寒いような気がした。

ふとテーブルの上にある鏡をみたいつから置いてあるのか
いつ自分が置いたのか覚えていなかった。

鏡を見ながら自分の顔をまじまじと見た。
なんともひどい顔をしていたのだけはわかる。
ふいっと顔を背けて外に目をやる。

あぁもういっそのこと
全部終わらせようか…
でも自分にそんな勇気なんかない。

いけない泣きそうだ…

すると頭の中で声が響いてくるような気がした。

「何をそんなに変な顔して思い詰めているんだよ。」

びっくりしてあたりを見渡す。
1人だけの部屋だ誰もいないはずだった。

「こっちだよこっち」

ふと近くにあった鏡に目がいった。

すると自分の顔によく似た誰かがにやにやと笑ってこちらを見つめていた。

「なにがあってそんな変な顔して思い詰めているんだよって聞いてるんだけど。」

何か…いやその彼は問いかけてきた。

半ば力が抜けた状態で彼の問いに答える。

「もう全部終わらせたくなったんだ。過去にとらわれるのももう飽き飽きなんだ。」

「へぇ。そんなに過去にとらわれているのか変な奴。」

彼の言葉に少しムッとする。
「君には分かりっこないさ。」

彼もその言葉に少し怪訝そうな顔をした。
「じゃあ過去に何があったか話してみろよ。俺が聞いてやるさ。」

「何を言ってるんだよ今日知り合った知りもしない相手に自分の過去を話したりするもんか。」

彼は続けていった、
「もう全て終わらせるんだろ。その前に少しでも話しておきたいこととかないのかよ。」

ふとその言葉に涙が出てきた

彼の言葉が優しかったか優しくなかったはさておき、
誰かに話を聞いてほしかったのかもしれない。
僕は一つだけ過去の話をすることにした。


「仕事がうまくいかなくてさ、
上司や先輩はすごく優しかったんだけど、
僕は全然仕事ができなくてさ、
ついにはいたたまれなくなって…
体も
ついていかなくてさ
お仕事頑張りたいのに
体調ばっかり悪くなっちゃって
ついには鬱になって仕事ができなくなっちゃってさ…
今はこうしてワンルームで一人無職でさみしく過ごしているのさ」


話している途中で息苦しくなってきた。
目がちかちかしてきた。
またあの感覚だ。
手足がしびれてる。
目の前が暗くなってきた。

彼が言った
「今は休んでおいた方がいい。明日また話そうぜ」

僕はそれに頷きゆっくりと目を閉じた。



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