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MMTへの誤解と財政破綻論の嘘 その3

その3〜預金で国債が買われてる論のおかしさと、BIやJGPの事

このところ、BI、ベーシックインカムが話題に出るので、その事と、国債は私達の預金で買われてるという、よくある誤解の話を少々。ちょっとマニアックかも。
facebookに書いてたらそこそこの分量になったので、こちらに転載加筆します。

BIとJGP

このところ、BIベーシックインカムの話題をよく目にします。

BIが、政府から国民への手切れ金の様に使われはしないかという懸念があります。

政府はBI支給で十分責任を果たしているのだから、後は失業しても困窮しても自己責任、社会保障制度は廃止する。などと言う事になると、宜しくありません。

企業にとって社会保険料等はコストなので、無い方がよく、BIで費用を政府に丸投げ出来るなら、社会保障無きBIに反対しないでしょう。

企業は、人件費が高ければ、省力化、無人化を進めるので、人が労働市場からいらなくなり、失業者や、半失業、低賃金労働者が増える可能性があります。

その時に、それだけで暮らすには少ない額のBIと、社会保障制度が廃止された状況だと、詰んでしまいます。
こうしたBIは、企業や政府の責任放棄のためのアリバイと言えます。

JGP **就業保証プログラムの困難さ**

その意味で、政府には完全雇用を実現する責任がある事を明示し、完全雇用を制度化するJGPは、所得だけでなく、雇用も保証するので、より優れた制度と言えます。

JGPは、不況期には失業者が増えて、JGP利用が増えることで、政府雇用と共に政府支出が増えます。
好況期は、民間の労働需要が増えて賃金も上がるので、民間の就職が増え、JGPは減り、政府支出は減ります。
景気に対して、自動的に機能するのでビルトインスタビライザーとしての機能も優れています。

ですが、失業者が希望すれば必ず誰でも政府が雇用する、と言うとき、どの様な仕事を用意するのかで、制度の実装への議論が停滞しています。

サーファーの存在をライフセーバーの機能として、自治体が公益性を認めて、政府が給与を出す、と言うのは、理想的にも思えますが、運用の想像は、まだつき難いのが現状です。

既存制度の範疇、例えば介護の報酬

と言う事で、いきなり新しい実験的な事をするより、もちろん並行して進めてもいいのですが、とりあえず手始めは、介護ヘルパーの時給を2500円、フルタイムで月40万稼げる様にする所からが良いのではないかと、ALSの利用者の訪問ヘルパーでもある筆者は考えたりします。

低賃金労働者の移転を促し、それが賃金の水準を引き上げ、失業者を吸収するスペースを市場に作り出す。労働予備軍の機能は薄いですが、完全雇用に寄与します。

家族介護にまつわる不便や不幸、介護離職の機会損失も減らせます。
ヘルパー不足も解消に向かうでしょうが、それでも足りずに家族介護をしているケースは、政府による社会保障サービスの提供という責任、債務の不履行なので、家族にヘルパーと同額を支給しても良いでしょう。これはややJGPに近い発想です。

価値の問い直し

貨幣の実質価値を、生と死に関わる仕事に紐付ける事は、社会の質そのものを規定し直します。
命より利潤、という価値基準を逆転させ得るのです。

介護報酬などは、需要と供給からの市場価値とも、公益すらも無関係に、財政との兼ね合いで、政府が決めているので、現に今、介護従業者の所得が低いという事は、政府が介護に価値を認めていないという事になります。

BIの実験や、JGPや、給付付き税額控除等の、先々の議論もいいですが、新しいアイデアの議論の前に、既存の運用されている制度の、額を調整する方が、早いと思うのです。

介護報酬の引き上げとかは、予算をどう付けるかの話です。
定額給付金の継続や、消費減税などもそうですね。

国債と預金の鶏と卵

その際に問題とされる財源ですが、予算の財源は、政府支出が財源です。
政府支出額は事後的に国債で市中から回収しますが、民間の預金で国債を買い支えているのではありません。
政府が国債を発行し過ぎると、民間の預金がいつか尽きてしまう、と言うのは、全くの間違いです。

簿記の見方で、借方の原因は貸方、というのがあります。

家計の事なら、借方の現預金を生み出すのは、貸方の給料だから、借方の原因は貸方にあるとするのはその通りですが、銀行などの通貨発行主体は、それが逆になります。

銀行は、借方に貸付金が発生するから、貸方に預金を発行できるのです。
言い換えれば、借り手の資金需要が、預金の発生の原因という事です。

政府支出から預金発生までの流れ

政府、日銀、銀行、民間の4部門の仕訳はややこしいので、本当は会計学者の方々にお任せしたいのですが、少し言葉で書いておきます。
以下は借方を資産、貸方を負債、と読み替えて頂いても構いません。

10万円の特別定額給付金のケースをモデルに、政府が国庫短期証券を日銀に引き受けさせる事、日銀が国庫短期証券を買って、日銀当座預金を政府に発行して、政府預金が発生するケース(OMF 明示的貨幣供給)を書きます。

①政府が発行した短期証券は、政府の貸方であり、日銀の借方に反映される。(政府負債増、日銀資産増)

②日銀は借方の証券の額を貸方に書き、政府の借方に反映し政府預金となる。(日銀負債増、政府資産増)

③政府は借方の政府預金を銀行の借方に移し、銀行の日銀当座預金が発生。(政府資産減、銀行資産増)※

④銀行は借方の日銀当預と同額を、自行の貸方に発行し、民間の預金発生。(銀行負債増、民間資産増)

こうして政府の赤字支出で、民間に預金が発生しました。鶏と卵の例えで行くと、政府支出が先で、預金が後ですね。
ここで締めてもいいのですが、一応国債を市中消化させた体裁を取るために、もう少し続きます。

⑤政府は国債を銀行に発売し、銀行の借方の日銀当預は国債と入換え。(政府負債資産増、銀行無変化)

⑥日銀は貸方の政府預金と日銀の借方の短期証券を相殺して締め。(政府資産負債減、日銀資産負債減)

⑦最終的に、政府は貸方に国債、銀行は借方に国債と貸方に預金。(③の日銀当預が国債に替わるだけ)

如何でしょうか。
銀行が国債を買うのは、借方の中身、日銀当座預金が国債に置き換わるだけの事なのです。
銀行の貸方である預金で、借方の国債を買っているのではないのです。
政府が国債を増発したからと言って、皆さんの銀行預金が減った事など、ありませんよね。
逆に、政府が国債を増発して、家計への給付に使ったら、我々の預金は増えましたよね。
そうゆう事です。

預金(預り金)、預け金、準備預金のワケワカメ

とは言え、確かに今ほど準備預金の超過(銀行が貸し出しに対して保っておくべき一定割合の準備預金額を超えて持っている日銀当座預金)が大きくない時代は、預金で買っていると言えなくもない時がありました。

顧客が日本銀行券(紙幣、一万円札等)を、窓口やATMで預けた場合、その紙幣は銀行が預り、日銀に預け、準備預金にカウントされるので、準備預金で国債を買うと言うと、顧客からの預金を元にして買っているとも言えるのです。
ただし、この、銀行が日銀に預けた「預け金」は、銀行が顧客へ発行した負債、貸方の預金(預り金)とは意味が違い、借方の資産に置かれる現金預け金です。

上の①から⑦までで見たように、今は銀行が日銀に預けている「預け金」(日銀からすると預り金、日銀当座預金)である準備預金を形成するのは、政府預金からの振替で発生する割合が、顧客からの現金の預け入れを銀行の負債に記帳した預金(預り金)より(預け金と、預り金、ややこしいですね)大きいので、銀行が国債を買う時の原資は、民間の顧客の資産である預金でなく、政府預金から振替えられた準備預金(日銀当座預金)である、と言うのが、正しいのです。

まあ、お金に色はついてないので、判りにくいですよね。

その2で予定してたのと違う内容になりましたので、その4は改めてお金の考え方の違いをしようと思います。

※⑥、書き間違いがありましたので訂正しております。
政府は貸方の日銀当預→日銀の貸方の政府預金

※更に、預り金、預け金の、ケとリを書き間違い発見、、、
訂正しております。

※政府資産の政府預金が銀行に移る理由は給付です。政府の借方の政府預金が、借方に給付費、貸方に政府預金となる動きが省略されています。
公共事業や介護報酬などの場合は、借方に事業費、貸方に政府預金です。

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