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【2人目】彼とは結婚できない(15歳)

 中3になったというのに、受験に対する熱意なんてさらさら無い。
 鬼太郎と別れた後、隣の中学の先輩と付き合ったけど、思ってたのと違う、と言われ振られた。未練も思い入れもない。

 その頃、陸都さんという隣町の高校の先輩がかっこいい、と女の子達が話ていた。中学の頃はサッカー部のエースだったらしく、顔もかなりのイケメンらしい。正直、どんな人物なのか気になっていた。
 陸都さんと私は、SNSで既に繋がっていて、少しやり取りしたこともあった。あっさりしていて、モテる人なんだなという感じだった。それ以上に、どこに魅力があるのか気になっていた。


 改めてメッセージを送った。直ぐに返事が来て話していると、私が鬼太郎の元カノである事は知っているようだった。鬼太郎とは友人らしい。
 顔写真を送ると「かわいいね」と言われた。過去に写真で詐欺られた事があるから、直接会いたいと申し入れがあった。

 田舎という土地で、電車を使わないと会えない距離、つまりは物理的距離がかなりあった。加えて、当時私はぽっちゃりしていた。痩せてからじゃないと会えないと思い、取り敢えず断った。
 しかし、私の送った顔写真がどうも気に入ったらしく、取り敢えず付き合いたいと言われ、会う前に付き合うことになった。正直、ちょろいなって思った。


 それからは、本気のダイエットだった。毎朝走り、給食では先生の目が離れた隙に白米を隣の男子に渡し、夜はサラダチキンだけだった。
 努力の甲斐あり、3ヶ月後には10キロ痩せた。その間も陸都に会いたいと言われたが、忙しいと断っていたし、10キロ痩せても自信がなかった。
 ある日、陸都から「もう限界なんだけど」と言われ会う決心がついた。


 見た目の粗が目立たないように、会うのは夜を選んだ。その日のために、親にねだって服を買って、当時の最高の自分で挑んだ。ミサンガが欲しいと言っていた事を思い出して、赤と緑と白のミサンガを3本作って、一番綺麗にできたものを持って行った。

 当日、陸都が待合せ場所に着くと、私の顔を見て、にこっと笑った。その笑顔がとてもかっこよかった。
 人気が多いところは知り合いが多くて苦手だといい、静かな居酒屋で焼き鳥とオレンジジュースを食べて、奢ってくれた。陸都は終始大人しかった。

 帰り際、ミサンガを渡すと、照れながらありがとうと言ってくれた。お礼にと、いつもつけているブレスレットをくれた。記念にツーショットを撮ってその日は解散した。 


 帰ってから「すごく可愛かった」と連絡が来た。そして翌日から私のダイエットは終了した。陸都から貰ったブレスレットを毎日学校に持って行った。

 陸都のSNSのプロフィール画像が、私のミサンガの写真になった。ヘッダー写真が、別れ際に撮ったツーショットになっていた。ニヤニヤが止まらなかった。
 でも何故か「俺と付き合ってる事秘密にしてね。面倒だから。」と言われた事が引っかかっていた。


 ある日、同級生の明莉から恋愛相談を受けた。”隣町のリクトさんを好きになっちゃった” ”リクトさんの部活の様子を見に行っちゃったんだけど、かっこよすぎた”。念の為名字を確認したら、陸都だった。
 遂に告白しようと思うと言われ、ハラハラした。結果は断られたらしく、安心した自分がいた。

 またある日は、陸都から「瑞穂から告られて断った」という話を聞いた。瑞穂ちゃんと言えば、地元でも噂になるくらいの美女だった。私も瑞穂ちゃんと話すときは気が引けてしまうぐらい。そして、可愛い子あるあるだが性格の方は良くないと噂だった。正直、怖くなった。


 その後も順調に交際をして、9ヶ月になった。1.2ヶ月しか続いた事がなかった私は、幼いながらに結婚を考えてた。でも、いくら考えても陸都との結婚生活は想像つかなかった。結婚するのは無いな、なんて思ってたけど、別れるつもりは無かった。
 当時、親に会ってみる?なんて言われていた。陸の都なんて素敵な名前を考える親はどんな人だろうと思っていたが、不誠実だと思い断った。我ながらマセガキだ。
 その頃、私の高校受験も近づいてきて、デートを断るようになった。

 ある日、後輩の姫花ちゃんが私を呼び出し、耳元で「陸都さんとやったんですよ。めっちゃよかったです。陸都さんって彼女いるか知ってますか。」と言われた。私だ、とは言わなかった。
 浮気されたことはショックだったが、心当たりはある。陸都から幾度か行為を誘われていたが、結婚するまでは無理と断っていた。痺れを切らした陸都が、俺はやった事あるけどね、とキレ気味で言ってきたこともあった。
 彼女である私が断ってる手前、外注しても文句言えないな、と思い見過ごすことにした。


 その日から私は疑心暗鬼。陸都から返事がない時は気が気でなかった。そう言えば、陸都は私にSNSのパスワードを教えてきたことがあった。自身の良心と戦いの末、陸都のアカウントにログインしてしまった。
 いいものなんて出てくるわけないのに、他の女の子に対して好きって言葉だけは使っていないで欲しい、そんな思いだった。
 結果は私の敗北。姫花に好きって言ってと言われて、好きと送っていた。


 衝動的に、陸都に別れようと送った。陸都は渋ったが、他の人にも好きって言ったでしょ、と言うとすんなり受け入れた。
 それからも忘れられずに、一度連絡を送ったがスルーされた。浮気された癖に、結婚出来ないと思ってた癖に、忘れられない自分が嫌だった。

 その頃、私の受験は1ヶ月前。モヤモヤとした気持ちを晴らすべく、丁度告白してくれた先輩の男の子と付き合った。でも好きになる事はないなと思い、受験が終わったら別れようと決めていた。

 受験当日の朝、陸都から”受験頑張れ、終わったら一度会いたい”と連絡が来た。こんなメッセージが来て頑張れないわけがない。受験が終わったのと同時に、先輩の男の子とはお別れした。


 受験の結果は合格。陸都に会おうと連絡し、合格を伝えると、あの日から後悔していた、もう一度付き合ってくれないか、と言われた。答えは勿論YES。でも、復縁した事で私は目標を果たした気になり、陸都への興味なんて無くなっていた。

 ある陸都とのデートの約束の日、ドタキャンされた。進学する予定の高校で、同級生となる人とは既にSNSで繋がって仲良くなっていた。そのうち1人の男子が代わりに遊んでやろうか?と言って、会うことになった。後に付き合う偉王(いお)である。この日が、私の人生におけるターニングポイントとなった。

 その後、陸都と会う事はなかった。高校に進学して直ぐに偉王と付き合う事になり別れた。今度も私から振った。


 半年後、偉王と別れたと噂で聞いた陸都から連絡が来た。復縁したいとの事。私は受け入れることにした。
 陸都からの連絡に返事するのは翌日。陸都に気持ちなんかなかった。案の定、陸都から直ぐに振られた。「他に好きな人居るんだろ」と捨て台詞を吐かれた。


 24歳になる今も陸都とSNSで繋がっている。彼女っぽい人がいるんだな、という様子は分かるが、その子の顔を載せることは一度もない。

 実は、17歳の時に地元のイオンで女の人といるところを見た。一緒にいた母親に、元カレだと伝えると、かっこいいじゃん、勿体無い、と言われた。
 その頃の私の恋愛は、幸せなんて言えるものじゃなかったから、私も同じように思ったけど、翌日にはすっかり忘れてしまっていた。 

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