ちょっとゼゼマデ
インプットしたことを3回アウトプットすると定着しやすい。
3回目のデートで告白をしないと恋愛対象と見られなくなる。
それと同じく。
3回縁を感じたなら、その土地に行ってみるべきである。
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最初にその地名を見たのは高校の模試だった。
成績優秀者がランキング形式で載っており、氏名の後に高校名が続いていた。その上位に、その名があった。
〇〇 〇〇(膳所)
「なんて読むねん。あと、どこやねん」
大阪で生まれ育った私と「膳所」の最初の出会いだった。
(内容が薄いので0度目の縁とする)
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3度の縁
それから2〜3年経ち、大学に入学した私は1人の男と出会った。
仮に「岩木」君とする。
入学当初、学部での集まりで出会ったのが岩木君だった。
最初に喋ることと言えば、その場の他愛ない感想と、それぞれの地元の話ぐらいだった。
そこで、岩木君が「膳所」高校出身だと名乗った。
そこで初めて「膳所」を「ぜぜ」と読むことを知った。
そして「膳所」が「滋賀」にあることを知った。
これが1度目の縁である。
2度目。
それは大学を卒業して6年後、今年の話だ。
私は読書が好きだ。
だが、流行っている本はあまり読みたくない天邪鬼だ。
そうは言えども自分の感性ばかりに頼っていると、どこか窮屈な気もしてくる。
というわけで話題の本を手に取ってみようと思った。
そして出会ったのが2024本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」だ。
この「成瀬は天下を取りにいく」になんと「膳所」が登場したのだ。
主人公の”成瀬あかり”は膳所高校に通う女子高生だったのだ。
”成瀬”は「奇想天外な変わり者」なのか「ザ・主人公」なのか悩む人物である。
「私はこの夏を西武に捧げようと思う」と言い、閉店を迎える西武百貨店を中継する地元テレビに毎日映ろうとしたり、幼馴染と漫才コンビ”ゼゼカラ”(*)を組んでM-1に挑戦したり、髪の伸びる速度を調査するために坊主にしたり…
詳しくは本を読んで楽しんでほしいが、とにかくまっすぐにバカな(賢い)人間だと私は感じた。
(*)「ゼゼカラ」は漫才のつかみ「膳所から世界へ」が由来
というわけで、最近読んだお気に入りの小説の舞台が「膳所」だった。
これが2度目の縁である。
そして3度目。
岩木君が結婚した。
そして何を血迷ったか、彼は結婚式の友人代表スピーチを私に依頼した。
あの出会い以後、彼とは「腐れ縁」という言葉が似合う、会うたびに罵詈雑言を浴びせ合い、足を引っ張り合う関係になっていた。
「奴の数々の悪事を暴露してやろう!」と思った私は「どうなってもしらんぞ」と伝えた上で引き受けた。
ただ、私は独身であり、結婚式の重みがよく分かっていない。
そこで考えてみた。
結婚式には親族はもちろん、職場の(かなり偉い)上司も多数出席するようだ。
私含む大学の友人も出席するが、中高から社会人時代まで数々の友人が集まるというのは人生で一度あるかないかの機会だろう。
岩木夫婦はお金も時間も精神もたくさん注ぎ込んで式の準備を進めているのであろう。
数日前に会った時、彼にしては珍しく弱音を吐いていたぐらいだ。
私が思っているより大変で、そして大切な場なのだろう。
・・・そう考えると、悪事をぶちまけるどころではない。
彼のため、いや、奥さんのためにも式が無事に成功してほしい気持ちが強くなってきた。
そして何より、あれほど意気込んだスピーチ作りが思うように進まない。(こっちが本音)
そう、実力不足である。
「何かの力を借りよう。でも友達に相談するとネタバレになる。となると、人智を超えた力を借りるしかない」
そこで思いつく。
「そうだ、膳所行こう。」
彼のルーツである膳所に行き、琵琶湖の力を借りれば何か思いつくはずだ。
これが3度目の縁である。(実質は1度目と同義である)
ちなみに「そうだ、膳所行こう。」は発音しにくい。
その点、「そうだ、京都行こう。」は口にしやすい。やはり傑作だ。
というわけで5月22日水曜日。
本番を10日後に控えた私は膳所に向かうことにした。
以後、旅の様子である。
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どう読む? 「放出」「膳所」
午前7時15分、快晴。
私は最寄りのJR「放出」駅に向かった。
ところで皆さん。
「放出」は何と読むかご存知だろうか。
答えはこうだ。
”HANATEN”
そう。
「はなてん」である。
デジタル大辞泉の「出」には「シュツ・スイ・でる・だす・いず・いだす」しか読み方が載っていない。「てん」なんて読めるか。
「放出」から「膳所」へ行く。
これが読めたあなたは関西リテラシーが高いと言えるでしょう。
というわけで放出から新大阪へ。そして京都を経由して滋賀の「膳所本町」へ向かいます。
目的である膳所高校、膳所神社を目指します。
旅のお供の一冊は「みとりねこ」(有川ひろ)
岩木君も私も猫を愛し、飼っています。
というわけで猫がテーマの本をお供に選びました。
(帰り道、クライマックスを迎え電車の中で涙が溢れますがこれは余談なのでこれ以上触れません)
猫視点から描かれる物語を読み、
「我が家の能天気な猫たちはこんなことを考えてるだろうか」と思いながら滋賀へ向かいます。
(帰ったら聞いてみようとも思いながら)
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ヨリミチと言う勿れ(@近江神宮)
そして到着したのがこちら。
「近江神宮」である。
「膳所神社に行くって言ってたやんけ」
まあまあ、寄り道したっていいじゃないか。
「寄り道の数だけ人生は豊かになる」とは私が今考えた格言だ。
格言に従って生きようじゃないか。
ただし、ただの寄り道ではないのである。
近江神宮の御祭神は、大化の改新で有名な天智天皇。
天智天皇は学校制度や産業振興に寄与し「開運の神」「導きの神」として尊敬され、開運・厄除け・学業・文化・産業に関するご利益が得られると有名になりました。
と、上記は教科書的な説明だ。
私としては「成瀬は天下を取りにいく」に登場していたのが大きい。成瀬がかるたをしていたのだ。
あと昔にちょっと見た「ちはやふる」にも登場していた。広瀬すずがかるたをしていたのだ。
つまり、聖地巡礼である。
というわけで参拝。
ちなみに近江神宮は縁結び神社としても有名です。
というわけで願い事は「我が家に良い縁が訪れますように」と。
2024年、我が家族は災難続きでして。家族の幸せを願います。
さて、岩木君のことなどすっかり忘れていた私は、気を取り直して当初の目的地である「膳所」へ向かうことに。
この時点で9時。
「神社は午前中に訪れるべし」と聞いたので、2つの神社を巡るために早めに家を出たわけです。
朝から行動するのは非常に気分がいい。
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思てたんと違う。(@膳所高校・膳所神社)
さて、京阪「近江神宮前」から「膳所本町」へ向かいます。
大阪に住んでいると2両編成の電車に出会う機会もないので、小旅行気分です。
膳所本町へ辿り着きマップで目的地を探します。
「近っ」
なんと羨ましい膳所高校の生徒たちよ。
というわけで膳所高校の正門に向かって一礼。
「俺が代わりに君達の先輩を祝ってくるからな」と、思ってもないことを書いて次に向かいます。
途中に本屋があったので立ち寄りました。
学校近くなので、参考書や児童書などが充実していました。
「学校終わりに本屋に寄るのも青春の1ページですよね!!!」と、店員さんに話しかけれるはずもなく、代わりに一冊買って退店。
地元の本屋なのでしっかり「成瀬」の宣伝もしてますね。
ファンとしては嬉しい限り。
さて、本屋の目の前にあるのが膳所神社です。
高校も神社も超駅近です。
表門に回り、一礼して中へ。
調べたところ表門は重要文化財に指定されているようです。
中に遊具があるって珍しい。
ここは何をするところですか。相撲ですか。
奥に着いたので参拝を。
岩木君の結婚式、そして夫婦の明るい未来を願います。
思えば、他人の幸せを願って神社に行くなんて初めてかもしれません。
これまで願ったことなんて「受験に合格しますように」「彼女ができますように」「幸せに暮らせますように」「仕事がうまくいきますように」ぐらいです。
あとは、お礼だけするのがいいと読んだので「いつもありがとうございます。今日も元気に頑張ります」とも祈ったことがあります。(たしか「夢をかなえるゾウ」)
何はともあれ、ずっと自分のことばかり祈ってきた人生でした。
今回初めて、友人のことを祈りました。
そしてもし、自分が家庭を持てば家族の幸せを願うのでしょう。
「神に自分以外の人のことを祈ってからが大人だ」と新たな格言も付け足しておきます。
・・・・・・
さて、ここであることに気付きます。
この神社、「あれ」がない。
なにか。
そう。
「おみくじ」です。
先に言ってしまいますが、今回の企画のオチはこうする予定でした。
しかし!
おみくじがない!
どこにもない!
というか受付みたいなところも開いてなさそう!暗い!
なんでやねん!
(僕が見落としてたら本当にすみません)
・・・というわけで当初プランを諦めることに。
「もったいぶらずに近江神宮で引いておくんだった」
とリサーチ不足を反省しながらぶらぶら歩くことに。
せっかくなので膳所高校まわりをぐるっと歩くことにしました。腹いせです。
すると途中で黒猫に出会いました。ラッキーです。
すぐに逃げない猫だったのでしばらく睨めっこしました。可愛かった。
個人的意見ですが、黒猫って個体差が分かりにくいですよね。
我が家の一匹が黒猫ですが、この子と入れ替わってもすぐに気付けるかちょっと不安です。
それぐらい黒猫は見分けが難しいと思います。
「おみくじはなかったけど猫に会えたからいっか(なんならオチに使おう)」
なんて思いながら高校周辺を回ることに。
・・・意外と遠かった。
住宅の関係などで最短距離を回れるわけでもなく、良い運動になりました。
「駅が近い分、こうして遠回りして帰るカップルとかもいるんだろうなあ。微笑ましいなあ。
・・・でも、もし岩木君がそんな経験をしてたら俺は怒り狂うだろうな」
と不毛な怒りを抑えながら一周を終えました。
時刻は10時半ほど。
用意していたオチを潰された私は、次の目的地へ向かうことに。
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滋賀!そば!鯖!(@皿そば 渚庵)
さて、少し早いですが昼食を取りたいと思います。
ここまで私が口にしたものは、家を出る前に食べたプロテインバー1本と、近江神宮で買ったアクエリアスのみ。
なぜなら、お目当ての店があったから。
というわけで膳所本町駅から琵琶湖方面に向かって徒歩20分ほど。
たどり着いたのが「皿そば 渚庵」さんです。
「どうせなら滋賀の名産を食べよう」と思って色々調べていたのですが、私が一番惹かれたのは「鯖(さば)」でした。
どうやら、福井で獲れた鯖を京都へ運ぶ際、滋賀を経由していたのが由来のようですね。
「鯖そうめん」という心惹かれる料理があったのですが、それは長浜・米原とさらに離れた場所だったので今回は諦めることに。
膳所周辺で鯖を食べられる店を探して出会ったのが「皿そば 渚庵」さんでした。
というわけで開店の11時ちょうどを目指して到着。
1人で店に入るのが苦手な私、特に1人で並ぶのが苦手なので、入れる確率が高い開店直後を狙うこことに。
作戦が功を奏して、見事待つことなく入店できました。
「皿そば(出石そば)」がメインのようです。
出石そば自体は兵庫が由来ですが、それが滋賀でも食べられるようですね。
メインは鯖なので特に気にしていませんでしたが、そばも大好きなのでありがたい限り。
鴨ロースを付けるか悩んだ挙句、今回は鯖寿司と皿そばのセットを頼むことに。
鴨ロースはいつか何か成し遂げた時に付けることにします。
待つこと数分。やってきました。
皿そば、名前は聞いたことありましたが食べるのは初めてでした。
普段と違う新鮮な食べ方で楽しかったです。
薬味も、ねぎ・わさび・山芋・卵と豊富。
5皿なので「薬味なし」から始めて、1つずつ順に追加してく流れで食べました。
個人的には山芋を追加した時がいちばんの味変でした。うまかった。
そして合間に鯖寿司もいただきます。
予想してたより弾力があり、それでいて柔らかくて美味でした。
鯖が好きと言うとよく「おじさんくさい」と言われますが、そう言ってる間におじさんの年齢が近づいてきました。鯖が似合う渋い大人になりたいと思いながら味わいました。
というわけで最高の昼食を終えて店外へ。
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俺の話は長い。だが聞いてくれ。(@琵琶湖)
店を出て徒歩数分。
すぐに見えてきました。
そう、琵琶湖が。
「琵琶湖を生で見るのはいつ以来だろう」
とおじさんの9割ぐらいが思いそうなことを口にしながら散策します。
思い出したのはたしか小学生の頃。父と兄達と。
船酔いか湖酔いか忘れましたがひどく気分が悪かった。
あまり心地よくない臭いが鼻の記憶に残っていました。
つまり、ここに書くべきではない、印象を下げるだけの思い出でした。
そんな琵琶湖ですが、今日はただただ気持ちが良い。
天気も良く、人も少なく、景色も綺麗で風が心地いい。
「最高やないか」と思わず口にしてしまいます。
トラウマもリベンジすると乗り越えられるのかもしれません。
さて、ここでようやく最後の目的を果たしたいと思います。
空いているベンチを見つけてパソコンを取り出します。
そう、スピーチの原稿作りです。
うまい鯖とそばを食って忘れていましたが、一番緊急度と優先度が高いタスクが残っていました。
というわけで湖を眺めながら、岩木君のことを思い文章を綴っていきます。
書くこと1時間半。
何度か琵琶湖に向かってぼけーっとしつつ、ある程度仕上げることができました。
出来上がった原稿を一度読み上げてみます。
「・・・俺の話は長い」
この文章もそうですが、私は話が長い。
かつて喧嘩をした際、私が有利だったのにも関わらず「話が長い!」と逆に怒られ、思わずお互いに笑って一時停戦したぐらいです。
だが、今なら話が長い理由が分かる気がします。
私は小学生からHIPHOPを聴いて育ってきました。父の声よりKREVAの声を長く聴いてきました。
「HIPHOP×大阪人」で言葉数が少なくなるわけがないのです。
と、この文章を書きながらようやくルーツが分かりました。
次誰かに言われたら、懇切丁寧に説明しようと思います。長ったらしく。
というわけでここから式本番までの時間は原稿を「削る」作業がメインになります。
いわゆる「引き算」です。美しさを作るのは「引き算」ですから。(そして何より難しい)
片付けをしながら、そんなことを考えました。
この時点で午後1時半。
予定していた3つの目的を達成してもまだお昼。
朝早くから行動することの素晴らしさをここでも実感。
ありがとう、膳所高校、膳所神社。そして琵琶湖。
君たちのおかげで私の原稿作りが捗ったよ。
あとは私が頑張るからね。
そんな気持ちを抱いて琵琶湖を後にしました。
というわけで、ここからボーナスタイム。
とはいえ本編には関係ないので早送りで。
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巡るよ、食べるよ。どこまでも。
さて、あとは思う存分「成瀬」の聖地巡礼である。
聖地巡礼はあくまでサブで考えていたので、候補としては「フレンドマート」だけだった。
フレンドマートは実家の近くにもあり、物語に登場した時から親近感があったのでぜひ寄ってみたいと思っていた。
そう思い、まずはフレンドマートを巡った。
「皿そば 渚庵」に着くまでに1店舗目、原稿を書き終えてから2店舗目、帰りの駅で3店舗目。合計3店舗のフレンドマートを巡った。
各店舗に成瀬が立っていた(働いていた)
中でも2店舗目、「フレンドマート 大津テラス店」である出会いがあった。
それがこれだ。
「成瀬は天下を取りにいく」の観光マップである。
正直サブ目的だったので自分の頭で覚えてるだけの場所しか考えていなかった。
それがマップを用意されたとなれば、巡らないわけにはいかない。
そうしてマップに感謝を告げて出ようとした時、後ろで楽しそうな声が聞こえてきた。
振り返ると成瀬の看板を前に、2人のマダムが写真の撮り合いをしていた。
看板を見つけて喜んでいる声だった。
・・・羨ましかった。ただただ。
誰かと一緒に巡るとああいう楽しみ方もできるのだな、と深く心に刻んだ。
さすがに初めての聖地巡礼をする男が「僕も撮ってくれませんか」と声をかける勇気は出なかった。
「人当たりが良いね」と言われることがあるが、内面はその評判を覆してお釣りが出る卑屈な人間である。
というわけでマダム達に声をかけるのを諦めて、1人店を後にした。
成瀬と撮影ができなかったのは残念だが、マップは手に入れた。
とはいえ疲れていたので、巡るのは少しだけにしよう。
そう思い近場の「ミシガンクルーズ」と「湖の駅浜大津」に向かうことにした。
「ミシガン」はクルーズ船で、作中ではとある青年と成瀬が乗っていた。
そして「湖の駅浜大津」はその後2人が食事をした場所である。
成瀬に一目惚れした青年の、淡い1日の話だ。
特にその話(レッツゴーミシガン)が好きだったので、KREVAの教え「行けるなら絶対行っとけ」に従い向かうことにした。
歩くこと数分。
ミシガンクルーズの近くにたどり着いたが、それらしき船がない。
さらに奥に進み、ようやく少し大きな船が見えた。
いや、
・・・よく見ると船体に「BIANCA」と書いている。
大卒の私が読むには「ビアンカ」である。
「ミシガン」ではない。
しかし、他に船はない。
ミシガンが改名したのかもしれない。
そう言い聞かせて、船場を後にした。
「最後に引きの写真でも撮ろう」と振り返った時、1枚の看板が目に飛び込んだ。
「やっぱミシガンって書いてるやん」
どうやら出航中だったようです。
というわけで、ミシガンに乗りたい方は事前に時間を調べた上で行くようにしてください。
(ビアンカが何の船なのかは知りません)
謎が解けたところで船着場のすぐ近くにあるのが「湖の駅浜大津」
たしかここで成瀬と青年は米がうまい店に行ったはずだ、と頭の中で物語をたどります。
とは言え、館内には店もたくさんあるだろうし、さすがに「成瀬がこれを食べました」までは案内していないだろう。
そもそも実在する店舗じゃないかもしれない。
そんなことを思いながら館内へ。
お土産コーナーのアイスを見て「甘いものでも食べて帰ろうか」と思った矢先。
案内していたのだ。
”成瀬のおすすめ「近江牛コロッケ膳」。ご飯はおかわり自由です!”
「実在する店舗だったのか。」
「そして、ちゃんと店側も宣伝してるのか。」
・・・食べたい。
だがしかし、私は2時間ほど前に「皿そば&鯖寿司」を食べた。
そしてここ数年、食が細くなってきている。
いや、せっかく滋賀まで来て、人生で初めての聖地巡礼をしているのだ。
成瀬がおすすめするなら食べるべきだろ。
2分ほど店前で立ちすくんだ。
一応、お腹に聞いてみる。食べてもいいかな?
腹(八分)「行けるなら絶対行っとけ」
私の全細胞はKREVA教に入信しているのだった。聞くまでもなかった。
・・・そして私は吸い込まれた。
「これが君のおすすめのコロッケか。」と奥のアクリル成瀬に心の中で話しかける。
そしてコロッケにかぶりつく。
熱い!そしてうまい!!!
外は若干焼き目がついて、サクサク感がたまらない。
そして中はホクホクで肉肉しさも充分。
さらに米もうまい。最高である。
こんなにうまいコロッケを食べたのは初めてかもしれない。
一人旅という体験も込みで、人生一のコロッケに認定しておく。
成瀬への愛とコロッケ&米の美味さに支えられてなんとか完食。
ごちそうさまでした。
さすがに人と出かけて昼飯2回は食わないだろう。
寂しさは若干あるものの、こうした自由さは1人旅ならではである。
良い体験だ。
そんなこと思いながら大津駅まで歩くことに。
(そしてフレンドマート3店舗目に寄り、帰路に着く)
こうして私の滋賀巡り(原稿作り&聖地巡礼)は無事に終えたのである。
(帰りの電車で「みとりねこ」を読み終えて涙が少しこぼれたのは余談である。猫の健気さが胸を抉るのである。・・・結局触れてしまった)
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「半径nキロの旅」
今回、小さな旅に出たのには少しだけ理由がある。
(最初に書いた、縁とかスピーチとか抜きにして)
私は面倒くさがりだ。
できることなら自分の快適な範囲だけで生きていきたいと思っていた。
よく行く本屋、よく行くカフェ、よく行く飯屋。
それぐらいが自分らしいと思っていた。
だが、歳をとるほどに「本当にそれでいいのか」と思う気持ちも芽生えてきた。
快適な範囲は楽で良い。いわゆるコンフォートゾーンと呼ぶやつだろう。
そんな中、私の敬愛するラッパー”LITTLE”がこう歌っていた。
私はKREVA信者であるが、その総本山が”KICK THE CAN CREW”(*)である
(*)KREVA・LITTLE・MCUの3MCのグループ
そう、快適さの中にも、どこか少し不安があったのだ。
または。
友達の結婚式に参加した際には、必ず新郎新婦の思い出の写真が流れる。
どれも心温まり、かっこよく、美しいと感じる。
すべての写真に本気で思っている。
そして同時に、こうも思う。
「よくそんなに外に出かけてるな」と。
別に他人の価値観に合わせたいわけじゃない。
ただ、そっちを知らずに死ぬなら、知ってから選んだ方がいいんじゃないかなと思っただけだ。
自分の枠内で言い訳を並べるぐらいなら、少しだけ枠を広げてみようじゃないか。
私は、自分の半径を最大限幸せな空間にしたいと思っている。
近くにいてくれる人を大事にしたいし、自分がいるおかげで楽しいと感じてくれることが一番の幸せだ。
今はその半径が1mぐらいだ。
手が届く猫たちぐらいしかいない。
だから、もう少しだけその半径を広げたいと思った。
視界と世界と限界を、少しだけ広げていこう。
そう思い、少し気ままに移動しようと家を発った。
今回がその第一弾。
(要はちょっとぶらぶら出かけるだけです。なんてこたない)
ここまで読む人はいないと思うので、少しだけ心のうちを明かした次第。
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で、どうだったのか。
さて、滋賀に出向いてまで書き上げた結果はどうだったのか。
せっかくなので1枚だけ。
お偉い方々のご挨拶&凄すぎる余興の後という、非常にプレッシャーのかかる順番でしたが、なんとか終えることができました。
動画を見返すと色々反省点が出てきますが、終わった直後の皆さんの反応がとても暖かかったので、良しとします。
そしてホテルに戻り、無事に自分の役目を終えてホッとしているところです。
(式自体が成功したのかは新郎新婦やご家族の判断なので何も言えないですが、私としては素晴らしく彼ららしさが出た式だったと思いました)
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さて、オチはどうしようか。
・・・おみくじよ!!!
どうしてなかったのだ!
あれさえあれば、失敗でも成功でも着地できたのに。
今から近くの神社で引いてこようかしら。
もう手元に武器はない。
・・・やっぱりこうするしかない。
長ったらしい文章は、可愛い猫で締めときましょ。
猫よ。
また膳所に会いに行くね。元気でね。
(完)
「私も膳所に行ってみようかな」と思った方。またはその他全員へ。
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さて、次回は「誰にも理解されない私の1週間」です。
6/5(水)の更新。(基本的に水曜更新)
お楽しみに。