『じゃない方大好き人』

『え〜!!そっちなの?』
『そっち選ぶんかいっっ!』
『じゃない方じゃん!』

友達や知り合い、姉や妹、はたまた母にまで言われる台詞。

人生においてNo.5には入るんじゃないだろうか。

そう、私はメインじゃない縁の下の力持ち的な方を選ぶ傾向にある。


保育所の年長の時だったろうか、同じクラスの女の子が6人程いた。
発表会近くになると、オペレッタや劇の配役決めがある。
私のクラスメイトはなかなか強い女子が多かったので、ほとんどの子がもちろん狙うは主人公。
私も主人公のお姫様になりたかった。

担任の先生は酷だ。こんなにもやりたい女子が居るのに結局はじゃんけんで決めた。

今の時代なら主人公が複数いたり、脇役にもたくさんスポットライトを当てるように努力するだろうが、約30年前の保育所の方針は『主人公は1人!!あとは脇役!!』のスタイルを崩さなかった。

この時の脇役は真っ黄色のひよこ役だった。

ピンクのフリフリのドレスとは縁遠い衣装と出番の少なさ。

私はまんまと負けた。

オペレッタの私の配役は『ひよこ』になった。

悔しかった。
今でも覚えている。家に帰って親にも祖父母にも姉にもバレぬように泣いた。

でも、私は諦めなかった。

『とにかく目立つ役をやりたい!!お客様の印象残る演技をしたい!!』

と心に決めたのだ。

次の日だっただろうか。今度は寸劇の配役決めが行われた。

忘れもしない。

『三枚のおふだ』

という寸劇だ。

オペレッタの主人公をゲットした女の子は寸劇でも主人公をやりたいと言った。

でも、考えてみてほしい。
三枚のおふだの主人公は寺の小坊主だ。

私は幼心に思ったのだ。
小坊主役だとピカピカの坊主頭のズラを被らされてしまうのではないかと…

それだけは嫌だった。なんかプライドが許さなかった。
まぁ、むちゃくちゃ小さなプライドなんだけども(笑)

次々に配役が決まる中、決めきれずにいた私に転機が訪れた。

誰もやりたがらなかった役がある。

『やまんば』だ。

やまんば役は1人だけの選出。小坊主は3人くらいの複数主人公。

そう!三枚のおふだにとって小坊主が持つ三枚のお札にも負けない力を持っており、最後には小さな小さな豆になってしまう最後を遂げる美味し過ぎる役。
『やまんば』とは影の主人公なのだ。

やまんば役が決まらずにクラス全員が下を向き、先生からの『誰かやってくれる人がいないと前に進まない感』に耐えている中、私は頭の中で熟考に熟考を重ね思い切って手を上げたのだ。

『やまんば』をやらせてくれ!と。

そこから、私はやまんばに徹した。

いかに怖く見せようか、いかに声の強弱・抑揚をつけ寸劇に華を添えるか、いかに観ている保護者や関係各位の皆様を惹きつけられるか。

自分なりの演技プランを先生に見せ、先生の反応を見ながら反省を繰り返しやまんばを習得した。

本番の日。

年長さんの出番は歌や楽器等たくさんあるが、私はオーラスの寸劇を早くやりたいという気持ちでいっぱいだった。

いよいよ。オーラス。

私は『やまんば』という役の集大成を見せられたと思う。

1番の見せ場は最後に小さな小さな豆になる場面。

3段くらいある階段の台の一番上から飛び降り小さく屈んで豆になるという演技だ。

上手くジャンプして豆になったが、誰も知らなかっただろうけど気合が入りすぎて足首をやった。

仕方ない。名誉の勲章じゃい。

私はやり切ったのだ。清々しかった。本当に気持ちよかった。

後から母に聞くと、どこかの園児の妹が赤ちゃんで寸劇寸前まではむちゃくちゃ泣いていたが、やまんばが出てきた瞬間泣き止み最後まで寸劇を観ていたと言っていた。

園長先生は発表会の後に私に称賛を送った。
両親は照れながら園長先生にお礼を言っていた。
クラスメイトの親御さんも『すごい迫力だったね!!上手だったよ!!』と次々に言われた。

あぁ、主人公じゃなくても努力すればスポットライトは当たるんだ…
と感じた瞬間だった。

そこから私は小学校にあがり中学生になっても、学芸会や何かを発表する時は、自らおいしい役を引き受けるようになった。

オズの魔法使いの『ライオン』
ごんぎつねの『兵十』
ルパン三世の『五右衛門』
因幡の白兎の『ワニザメ』
走れメロスの『英語ストーリーテラー』
となりのトトロの『中トトロ』

器楽演奏では専ら打楽器に徹し、おいしいところをかっさらっていった。

それが正解なのかは未だに分からないが、私の性格を間違いなく主人公よりではなく脇役を華々しくやり遂げるという思考にしたのは、この出来事の影響が強いと思う。


そういう性格なので芸能人を好きになるにも法則がある。

『じゃない方』が好きなのだ。

今ならば、

ティモンディの前田裕太さん。
純烈の後上翔太さん。
ゴスペラーズの酒井雄二さん。
TEAM NACSの安田顕さん。
ゆずの岩沢厚治さん。
Kis-My-Ft2の横尾渉さん。

等、主人公を引き立てる役割で尚且主人公にも引けをとらない魅力的な方々だと思う。

一般的には『じゃない方』と呼ばれる方々の魅力は凄まじいと思う。

だって、『じゃない方』がいなかったら花形が魅力的に思えないし、成り立たないんだもの。

アーティストならメインボーカル。
芸人ならキャラが強い方。

が好きなのは理解出来る。
人はどうしたって第一印象から入る。

私の場合

『おっ?気になるぞ?この人達?』

『へぇ〜。なかなかイイね!!』

『んっ?よくよく観たり調べると、この人むちゃくちゃイイ!!』

それが『じゃない方』

となる。


最初に戻ろう。

人生の中で5番目くらいに多く言われる台詞。

それは、私自体が『じゃない方』の人間だからこそ見えてくる『じゃない方』の努力や苦悩や葛藤、主人公をいかに印象強く魅せられるかを考えているであろう、人としての懐の大きさと、そこに見え隠れする『目立ちたいけど……ここは我慢して……』という野望を秘めた人間に魅力を感じる私だからこそ他人に言われる言葉。

『じゃない方』の皆さんに幸あれ。

何回も言って申し訳ありません。

先日、ティモンディの本を購入しました。

地元に女子野球部やソフト部があったら、是非とも入部したかったです。

希望ポジションはキャッチャーでした。

いつか、息子が野球をやりたいと行った時や学校の授業で球技をする機会がある時に教えてあげれるように何度も熟読したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?