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紀伊半島で『ワーケーション』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉑~ "

2024年。今年は毎月どこかでマラソン大会に参加しようと意気込んで、すでに上半期の分はすべてエントリーを済ませた。マラソン大会とはいっても、私が主にエントリーするのはハーフマラソンの部ではあるが。

1月の八丈島に続き、2月は和歌山に遠征することにしていた。11月ごろから仕事が立て込んで忙しく日々を過ごしていたので、絶好のリフレッシュ休暇になる。はずだった……

年明け早々、和歌山市での空き家再生プロジェクトに伴う「発酵酒場」のメニュー開発を引き受けることになった。これが思いのほか大変なのだ。なにしろ和歌山産のものを中心としながら、発酵食品をふんだんに使用したメニューを構築しなければならないのだ。

かくいう私は今までの人生で和歌山とは縁もゆかりもなく、あまりにも縁がないので6年位前にわざわざ「和歌山に行く」というだけの目的で訪れた(当時44歳)のが、私と和歌山の初遭遇だった。その後、熊野本宮大社に初詣でに来たり那智勝浦に仕事で訪れることはあったが、この地域の特色だったり地産品についてはまったくの門外漢なのだ。

そんな私が和歌山の地産品をがっつりと盛り込んだメニューを構成しなければならないのだ。今回、偶然の和歌山入りではあるのだが、これはバケーションを取っているどころではない。

2024年2月2日、金曜日。関西空港を降り立った私は、その足で和歌山の食に関する市場調査に向かった。

まず訪れたのは『産直市場よってって』。
産地直送を売りにした生鮮品を中心とした品ぞろえのスーパーだ。和歌山県だけではなく阪神圏や九州にまでその店舗網を広げている。

地元で獲れた野菜が大量に積み上げられている。POPもわかりやすくて、購買意欲をそそられる。

続いては、『黒潮市場』へ。

和歌山マリーナシティという、和歌山市街からバスで30~40分ほどのマリンリゾートの中心に存在している。こちらは海産物がメインで、買ったものをその場で焼いて食べられるバーベキュー場が併設されている。遠方からも多数の来場がある、地域有数の観光スポットだ。

和歌山市街に戻り、夜は和歌山ラーメンを試食。今ではお馴染みとなった豚骨醤油スープが売りの、有名ご当地ラーメンである。

味はもちろんのこと、「早寿司」とよばれる独特の風習がある。ラーメンを待つ間に、一口サイズの寿司を食べるのだ。寿司といっても江戸前ではなく、なれ寿司の発酵があまり進んでいないもの。これを「早なれ寿司」と称したりもするらしい。寿司以外にもおでんなどが当たり前のように地場のラーメン屋には装備されており、「これは面白い」とさっそく我が発酵酒場でも取り入れることに決めた。

食後は腹ごなしを兼ねて、和歌山城へ。

天守に上る階段のひとつが工事中で、えらい遠回りを強いられた。

一夜明け、和歌山駅から紀伊田辺駅に向かった。ここには仕事先が経営している飲食店があるのだ。視察がてら、この店でランチを済ませた。

ここからは完全にバケーションモードで移動を進めていく。バスで白浜駅に向かう。じつはこの先が、ハーフマラソンよりも楽しみにしている、旅のメインイベントなのだ。

バスに揺られながら、先月の和歌山出張のついでに足を伸ばして行った高野山について思いを馳せる。

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1月半ば、私は今度の仕事先となる和歌山市内の空き家リノベ物件をはじめて訪れた。仕事自体は一日で終わったのだが、現地の競合店視察なども行った関係で夜遅くまで活動したので、現地に一泊した。

翌日の予定は東京に戻るのみであったが、せっかく和歌山まで来たので観光でもしていくことにした。もちろん、行先は高野山。南海電車を乗り継いで、標高535mまで上っていった。

極楽橋駅の先はバスで進んでいく。駅前のコインロッカーに荷物を預けて、一気に奥の院の入口まで向かった。

何年か前の正月に視たNHKの番組で映し出されていた高野山はかなり山深い、人里離れた秘境のような印象であったが、実際に訪れてみると道路も整備されているし人もけっこう暮らしている日常的な風景も散見された。

さっそく奥の院を目指して進んでいく。

左右に様々な企業の慰霊塔やお墓などが林立している。その先はだんだんと道幅が狭くなり、道端の木々の背も高くなり、荘厳な雰囲気が醸し出されてくる。目の当たりにした奥の院は想像していたよりもコンパクトなつくりだった。

奥の院から大門に向かって戻るようなルートで歩んでいく。

しかし、これくらいの標高の山の中でこんなに広い面積の平地があるというのは、国内ではかなり珍しいのではないか? ここが山寺としていち早く発展した理由の一環を見たような気になった。

遅めのランチを釜めし屋で摂り、しばし味わった非日常から戻るとしよう。

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などと高野山のことを思い出しているうちに、バスは白浜駅前に到着した。

さっそく、駅前の至るところにパンダからの出迎えがあった。

ここでバスを乗り換えて、目的地に向かう。

バスの車内もパンダ一色だ。

到着したのは、もちろん『アドベンチャーワールド』だ。

あまりにも街がパンダ一色だったのでパンダしかいないのかと思っていたら、様々な動物たちがそこかしこに存在していた。

まず、鹿やらなんやらいろいろな動物たちが放し飼いにされていて、思い切り触れ合ったり餌を与えたりできるようになっている。

イルカやアシカのショーが開催されていたり、ジェットコースターや観覧車まであり、遊園地のようになっている。

そのためか、家族連れの姿が多く見受けられる。

施設の奥側に機関車を見つけた。

なんと、無料で乗れるらしい。これは乗るしかない!

機関車は出発し、サファリパークのようにライオンや象・熊などが暮らすエリアを悠々と進んでいく。

これは楽しい。しかも無料。

すっかりアドベンチャーワールドを堪能した私は、満足感を胸に次の目的地に向かうことにした。

いや、まだお目当てのものを見ていないではないか?? 

パンダ!

気づいたらあと15分でパンダが屋内に戻ってしまうではないか。さっそくパンダの元へ向かう。

いた。見学者もこの時間だとさほどおらず、ゆっくりとパンダの姿を追いかけることができた。

近い。

上野動物園では、なかなかこうはいかないだろう。

続いて屋内に入り、なおもパンダの姿を追いかけることにする。

屋内にも一頭。

多数の観覧者の姿もものともせず、パンダは悠々と過ごしている。

この旅の目的を達成しすっかり満足した私は、次に今夜の宿に向かった。

アドベンチャーワールドからバスで10分ほど、千畳敷の近くにあるホテルに宿泊する。

この宿を選んだのは、夕食が豪華だったからである。なんと鰻が出る。

ビールやハイボールも90分間飲み放題だった。最高だ。

翌朝、いよいよ今日はハーフマラソンだ。

会場へは紀伊田辺駅から無料バスで向かう。宿の前のバス停から7:22発の路線バスで紀伊田辺駅に向かおう。しかし時間になっても路線バスは来ず、観光バスのようなデカいバスが一台停車したのみであった。

心配になって調べてみると、なんとさっきの観光バス風の車両が田辺に行く路線バスだったようだ。なんたる不覚… しかしこんなことではへこたれない。急遽路線バスの運行を調べ、逆側のバス停に移動する。

ここから7:34発の路線バスで白浜駅に出れる。会場へは田辺よりも白浜からの方が近いのだ。ということで、無事に白浜駅前までは来ることができた。

さて、これからどうしよう。タクシーで行けばよいのだが、じつは私は現金の持ち合わせが400円くらいしかない。なのでキャッシュレス対応のタクシーを見つけねばならない。駅前のタクシー乗り場に停まっているのは一台のみ。聞いてみると。やはり現金会計オンリーだった。

途方にくれて駅前をウロウロしていると、先ほどのタクシー運ちゃんに声を掛けられた。そして、キャッシュレス対応をやっていそうなタクシー会社をいくつか教えてくれたのだ。電話を掛けると2社目がキャッシュレス対応可能であり、その場で予約を入れた。

駅の待合室で迎えを待っていると、またまた先ほどの運ちゃんが現れた。「タクシー来たよ」。あまりの親切心に恐縮しながらお礼を伝え、私は迎えに来た方のタクシーに乗った。

そして、15分ほどで会場に到着した。

『紀州口熊野マラソン』。紀州口・熊野かと思っていたのだが、じつは紀州・口熊野マラソンだったと知ったのは、会場に到着してからだった。

口熊野とは古くから熊野古道の玄関口としてこのように呼ばれていた上富田町のことだという。熊野古道の山道を走るのかと思って身構えていたのだが、そうではないようだ。

気を取り直して、口熊野の一帯を満喫しよう。いざ、スタート!

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スタート地点から山側に向って進んでいく。なんか周囲にはガチ目のランナーたちの姿が目立つ。四年ぶりの開催だとタクシーの運ちゃんに聞いたが、彼らはこのレースを4年間に渡り待ちかねていたのだろうか?

彼らに引っ張られて序盤にスピードを出しすぎた。コースは緩やかな上りが続き、早くもスタミナが切れかかる。一旦スピードを緩めよう。

左右に木々が見立つようになって来た。

熊野らへんを走っている感が湧いてきて、気分が良い。また、2月初頭にしてはずいぶんと気候が温暖なので、快適だ。

コースは下りに入り、10kmを越えたあたりで街中に出た。沿道に応援する人たちの姿も目立ってきた。そして、脇道からスーツ姿のランナーが乱入してきた。

自主的にペースランナーを買って出た地元の方のようだ。胸にはゼッケンを付けているので、正式にエントリーしているのだろう。この人に付いていけば2時間以内にゴールできるだろう。ひと安心だ。

コースはそのままアップダウンもほぼなく街中を巡っていく。ガチ勢のランナーたちは、好タイム狙いでこのレースにエントリーしたのだろうか。

私も一気にスピードを上げたいのだが、序盤でスタミナを浪費してしまったため、ペースランナーに付いていくのがやっとだ。

それでもなんとか、2時間をギリギリ切るペースでゴールラインを通過できた。

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ゴール地点では、和歌山名物の茶粥が振る舞われていた。

軽く腹ごなしを済ませたところで、バスに乗り次の目的地に向かった。

ここからはまた少し仕事モードに戻る。目的地は『とれとれ市場』。

海鮮バーベキュースペースや温浴施設も併設している、西日本最大の海鮮マーケットとのこと。

いろいろな魚や水産加工品などを見て回った後、遅めのランチを摂ることにした。お寿司や魚料理にお惣菜などをセルフサービスで取り、レジで会計するスタイルになっている。

結局あまり魚は取らなかったが、気の向くままに食べたいものを手に取り、舌鼓を打った。

ここで風呂に入り汗を流したかったのだが、電車の時間が迫っている。バスに乗って白浜駅に戻り、特急で次の目的地に移動した。

1時間半ほどで、紀伊勝浦駅に到着。

ここがこの旅の最終目的地だ。

用事は明日に済ませるとして、今日は温泉に浸かり、ゆっくりと疲れを癒そう。

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旅の最終日。朝風呂をしっかりと浴びてから宿をチェックアウトした。雨模様の中を10分ほど歩き、魚市場に向かった。

もうセリは終わっているようで、市場内は静まり返っている。

そのまま市場を通り過ぎて、私はお目当てのまぐろ丼屋に入った。じつは去年の夏にこの店のオープンに携わったので、様子を見に来たのだ。

店内に入り、二色丼を注文する。料理ができたら呼ばれるので、カウンターまで取りに行くスタイルだ。サービスのあら汁もあるが、こちらも自分でよそうシステムになっている。

二色丼は、注文から2分くらいで完成した。早い!

盛付けはきれいで、生まぐろの仲卸業者がやっている店なので味はもちろん最高だ。あら汁も当初のレシピ通りで、煮詰まっているようなこともなく美味い。

私は大満足で、お店をあとにした。

さあ、後は特急に乗って天王寺に出て、関西空港から東京に戻るだけだ。和歌山市の店もこれくらいしっかりとした店にできるよう、気合を入れて頑張ろう。



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