頑張りすぎる人が潰れてしまう本当の理由

頑張りすぎてしまう人ほど潰れてしまいやすいのは、多くの人が知っていることだ。

その理由としてはまず、無理をして頑張り続けてしまうと、正常な判断力が奪われ、仕事を休む、もしくは辞めるなど、本来あるはずの選択肢が見えなくなってしまう。

そしてある日プツリと糸が切れ、衝動的に自殺未遂に走ったり、もしくは本当に死んでしまったりと、一気に壊れてしまう。


この話は多くの人が想像できることだと思うが、実は、頑張りすぎてしまう人にはもう1つの落とし穴がある。


精神を病むと、多くの人は精神科の受診を勧められるだろう。

本来精神科は、精神的に弱った人をサポートする場であるはずだが、実はここに落とし穴がある。

これまで頑張ってきた人ほど、精神科でさらに追い詰められてしまうことがあるのだ。



その理由は、精神科医は客観的な「事実」を元に患者の状態を判断しようとすることにある。

事実というのは、例えば睡眠は取れているか、食欲はどうか(何キロの体重の増減があったか)などである。


私は大学時代に、人の輪に入れず友達が1人もできなかったり、人前で話す時に異常に緊張してしまったり、アルバイトをまともにこなせなかったりと、様々な問題があってうつ状態になり、学校に併設された精神科にかかったことがある。

色々な悩みを打ち明ける私に、精神科医はこう言った。

「でも、学校には行けているんですもんね」


要するに、学校に行けている程度ならまだ大丈夫、と判断されたのだ。


学校の授業では発表したりグループワークをしたりする機会があり、対人恐怖が強い私はもちろん支障をきたしている。

それでも単位を取らなければ卒業できないので、私としてはかなり無理をしてどうにか授業に出ているような状況だ。

自分としては相当頑張って無理をしているつもりでも、「学校には行けている」という事実から、まだ学校に行けている程度なら大して深刻な状況ではない、と精神科医に診断されたのである。


会社員になってから精神科にかかった時もまったく同じ状況になった。

人の話が理解できない、注意力がもたない、ケアレスミスをしてしまうなど、発達障害の特性によって仕事がうまくいかないことをいくら訴えても、「誰にでもそういうことはある」と軽く流された。

趣味が楽しめないと相談すると「その方がお金が貯まっていいじゃん」と言われ、抑うつ状態を訴えると「そんな気持ちじゃ次の仕事もうまくいかないよ」と説教までされた。


今思えば精神科医は、私が何を言おうと「有名大学を卒業してちゃんと就職して2年半は働けているんだし、まだ若いんだから大丈夫でしょ」の1点張りだった。

要するに、
あなたは仕事ができないと言うけど、有名大学を卒業できるくらい知能が高く、2年半も働けるほどの社会性もあるなら、そこまでできないことはないはず。発達障害だとか仕事ができないというのはあなたの思い込みだ
と思われていたのだろう。


・有名大学を卒業して正社員として就職できている
・入社して2年半は働けている

これらは確かに事実である。


しかし、それは私が普通の人以上に無理して手に入れたものだ。

高校時代には受験校をわざわざ聞き出されて「行きたい大学じゃなくて行ける大学に行くんだよ!」と完全否定されたが、宅浪してそれよりも上のレベルの大学に合格した。

高校時代も大学時代もどこに行っても馴染めず、1人も友達ができなかったが、ちゃんと学校には行って最低限の単位は取って卒業した。

どのアルバイトもまったくできず、露骨に無視されたり叱責されたりすることも多々あったが、それなりに多くのアルバイトを経験した。

カウンセラーに正社員での就職は無理だと派遣社員を勧められたが、ちゃんと就活して正社員に内定した。


他の人が私と同じ状況になれば、途中で折れてもおかしくはないはずだ。

それなのに、発達障害を抱えているためにあらゆる状況で障壁がある中でかなり無理をして頑張ってきたという経緯は無視して、有名大卒で正社員として2年半勤務できたという事実だけで判断されてしまう。


頑張るのをやめて学校や会社に行かなければ、本当に深刻な状況だと診断されたのだろう。

とはいえ、学校に行かなければ単位を取れずに留年してしまうだろうし、そうなると1年分の学費が余計にかかり、最低でも数十万、多ければ数百万の損失になる。就活では留年した理由も聞かれるだろうし、1年のブランクは確実に不利に働くだろう。

会社も欠勤が増えればクビになってしまう。精神的に最悪の状態で職も失えば、確実に生活は苦しくなる。

そもそも、学校や会社に行けないほどの重いうつ状態なら、そもそも自力で精神科を受診することすらできなくなるのではないだろうか。

学校や会社に行けなくなってからでは、どう考えても手遅れである。

しかし、手遅れになる前にちゃんと精神科にかかっても、これまで頑張れてきたことで揚げ足を取られてまともに取り合ってもらえないのだ。


ちなみに、障害年金の審査においても働いていた期間が長いと不利になり、それが原因で受給できなくなる可能性もあるそうだ。

無理をして頑張ってきた人を、「これまで頑張れてこれたんだから、これからも頑張れるでしょ」と突き放すのが社会である。


結局、ものすごく無理をして就活して正社員になれても、異常なレベルで仕事ができず3年で退職した。もう社会復帰はできないだろう。

「新卒でちゃんと就職して2年半も働けてきたなら大丈夫」と言われていた私も、無職になって1年半が経った。

無職のまま10年も経てば、精神科医にも同情してもらえるようになるだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?