新卒で「とりあえずフリーター」は甘え
「やりたいことが分からないからとりあえずフリーターになる」と言う人が一定数いるが、長期的な視点で見ればあまりにも安易である。
目指したい仕事があるが正社員としてその仕事に就くのがどうしても難しいとか、明確な目的があって正社員以外の道を選ぶのであればいいと思うが、特にやりたいことがない人は、「とりあえず」正社員を目指す方が得策だ。
面接が不得意だから受かる気がしない、という人もいるだろう。
私も面接がかなり苦手だった。その上、大学生活を通じて何のスキルも身に着けられず、クラスでも浮いてしまい、ゼミにも入らず卒業論文も書いていないので、面接で話す話題が全く無かった。
しかし、面接が苦手でも内定を取ることは可能である。
その方法は、人手不足の会社を受けること。
人手不足の会社であれば、面接がグダグダだろうと受かってしまうのだ。
ちなみに私は、ブラック業界として名高いIT業界を志望していた。
IT業界は求人が多い割に、学生にはあまり人気が無い。
確かにIT業界はブラック企業もかなり多いが、そうではない会社も中にはある。
幸い、私が入社した会社はブラック企業ではなく、残業時間がちゃんと管理されていて、人間関係も良好で穏やかな雰囲気の会社だった。
聞いたことのない大学や専門学校卒の人もいて、そこまで学歴が高くなくても入れるような会社である。それくらいの会社でも、年間数十万円のボーナスをもらえて、住宅手当や退職金があり、身体の不調があれば休職できる制度もあった。
実際に、私はメンタルの不調で休職制度を利用した。休職は、働かなくてもお金を貰える最強の制度である。
私は大学時代、学生相談室のカウンセラーに就職活動を始めた話をすると、呆れ顔で「あのさ、派遣社員になった方がいいんじゃないの」と言われたことがある。
カウンセラーになぜ派遣社員を勧めるのか聞いたところ、「人間関係が楽だから」とのことだった。
カウンセラーの呆れ具合からして、本心では「この子はどうせ就活しても内定が取れるわけがないのに、落とされてまた自己肯定感を下げるくらいなら最初から諦めて派遣社員になった方がいいんじゃないの」と思われているのが透けて見えていたけれども。
私は派遣社員を完全に否定しているわけではない。
確かにカウンセラーの言う通り、人間関係が気薄で気楽に働けるというメリットはあると思う。派遣社員であれば、残業もなく定時に帰れる仕事も多いだろう。
職種によっては、正社員での募集がほとんど無く、派遣社員やフリーランスという形態でしか募集していないものもある。どうしてもその職種に就きたいのであれば、派遣社員になるのもありだと思う。
しかし、派遣社員は基本的にボーナスが無い。会社によっては交通費すら出ないこともあるらしい。もちろん退職金や住宅手当などあるはずがない。メンタルの不調で会社に行けなくなれば、休職どころか即クビである。
派遣社員は、専門性が必要な仕事であれば高時給で給与も高いだろうが、そういう仕事でない限り、給与や福利厚生などの待遇はまず正社員に劣ると思っておいた方がいい。
私の場合、2年目のボーナスと住宅手当を足すと100万を超える。
カウンセラーの言う通り派遣社員になっていれば、その100万円は貰えなかったはずだ。
入社してからたったの2年でも、それだけの差がついてしまうのだ。
確かに、正社員とはいってもブラック企業なら、アルバイト以下の待遇になることもあるだろう。
それでも、フリーターは正社員を辞めた後でもなることができる。新卒でフリーターになった後に正社員になるのは本当に難しいのだ。
大学の学生相談室のカウンセラーは「派遣は楽だよ」と言った。
確かに、派遣の仕事は短期的に見れば楽である。
新卒で派遣社員となると、業務内容も、データ入力など誰にでもできて負担が少ない仕事が多いだろう。
履歴書を出せば仕事を紹介してもらえるので、時間をかけて面接に備える必要もない。
しかし30代、40代になった時にはどうだろうか。
簡単な仕事ほど、年を取ると能率が落ちてくる。データ入力の仕事なら、年を取るほど老眼は進み、タイピングの速度も落ちるとなると、できるだけ若い人を採用したいと思うだろう。
そういう時に、派遣社員は簡単にクビにできてしまう。派遣の仕事をクビになっていざ転職活動をするにも、30代、40代となるとそれなりのスキルが求められる。簡単な仕事しかしてこなかった派遣社員にそんなスキルが身に着いているはずもなく、転職できたとしてもロクな仕事には就けないだろう。
そう考えると、就活もせずに新卒で派遣社員という選択は、あまりにも安易すぎるのではなかろうか。
大学の学生相談室のカウンセラーからすれば、大学を卒業すれば2度と会うこともない私の将来など知ったこっちゃないと思って、そんな安易な選択肢を平気で勧めてきたのだろう。
今思えば、そのカウンセラーは私という存在を心の底からバカにしていたのだと思う。
ちなみに私の淡麺愛というハンドルネームは、そのカウンセラーの名前から取ったものだ。人生で一番許せない人である。
就職活動は、体力的にも精神的にもすごく大変なことだ。
何社も受けて全く内定が取れず、精神的に限界が来ているなら、正社員以外の道を探すのも悪くはない。
ただ、就活をする前から諦めるのはどうかと思う。
何のスキルも無くても正社員になれる、最初で最後の新卒カードを簡単に手放すのは、あまりにももったいないのではないだろうか。
最近は「嫌なら逃げてもいい」と言う人も多くいるが、それが許されるのは才能に恵まれた人だけだ。
しかるべきタイミングでしかるべき努力をしなかったツケは、後で何倍にもなって返ってくる。
逃げるのは簡単だが、逃げた先の自分を受け入れてくれる人は誰もいないのだ。
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