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焦らせない。自発性をゆっくりじっくり待つ文化 【こんなガッコウ探検してみたvol.1】 東京コミュニティスクール編(2/7)

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おもしろいガッコウに出会うのって、なんでこんなに難しいんだろう? あちこちウェブサイトを見てみても、なんだかどこも似たりよったり…。説明会や公開授業に足を運んでみると雰囲気は多少わかるけれど、もっとリアルな声が聞きたいところ。

「こんなガッコウ探検してみた」では、各地の面白い学校やスクールに突撃訪問!在校生や卒業生、子どもの保護者やその学校を詳しく知る人などに案内してもらいながら1日密着し、その学校ならではのカルチャーや工夫を探していきます。

第一回は、東京・中野にある東京コミュニティスクール(以下TCS)を訪問。案内人は、娘さんをTCSに通わせている保護者の1人・ケイさん(仮名)。国立や私立の小学校をあちこち見学した上で、最終的にTCSを選んだというケイさん。どこが面白いのか、じっくり聞かせていただきました。

前回記事(1)はこちら

――朝8時30分から、子どもとスタッフ全員が一堂に集う朝の会。全学年で大きな1つの円陣をつくり、大人も子どもも円陣の中に並んで座っています。大人が前に立つのではなく、円陣の中にまばらに入っていて、フラットな雰囲気です。

ケイ:TCSに子どもを入学させる前に、見学に来た時にまず面白いなと思ったのが、この朝の会なんです。TCSに1日体験に来る子は、この朝の会で自己紹介をするんですが、シャイでなかなか喋れない子を、近くにいる上級生が様子を見てケアをしてあげていて、その姿がとても自然だったんです。無理に引っ張り出すのでも放っとくのでもなく、さりげなく気にかけてくれる先輩がいるっていうのが、すごくいいなあと。

子どもたちがそうできるのは、普段、スタッフや仲間から、そのように接してもらっているからだと思うんですよね。入学式でも、全学年で輪になって抱負を話す時間もあるのですが、マイクを持っているスタッフが喋れない子の肩に手を添えながら「今はまだ準備ができていないんだよね。準備ができたらまた来るから、教えてね」と焦らせずにあたたかく声をかけて、「だれかもう準備できた子いる?」と話をつなげていて。

そういう風に扱ってもらう体験をしたからこそ、子どもたちが自然とそうできるんじゃないかと思う。シャイで喋れないってことに対して、誰もバカにしないし否定しない。「今できないだけで、そのうち喋れるよね」って信じながら、成長を疑わずに変化の途上を見守っていてくれる。そういう感じがすごくTCSらしいなと思います。スタッフも無理に介入せず、ナナメ後ろからみんなを見守っているような感じですね。

あとこのスクールでは、授業を持つ大人のスタッフのことを「先生」とは呼ばずに、ニックネームで呼んでいます。前の校長先生は子どもたちに「おっちゃん」と呼ばれていたし、今の校長先生は「ソヒ」って名前で呼ばれている。そういう意味でもフラットな距離感ですね。大人も子どもも同じように変化の途上にある学びの同士だよね、という共通認識があるような気がします。

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――この日はちょうどハロウィンだったため、おばけに変装をしている子や、ドレスを着てメイクをしている子もたくさん。朝の会では、「ハロウィンだからお菓子を持ってきたよ!給食の時に配りまーす」なんて上級生の女の子が話す場面も。

公立の学校だと、「勉強に関係ないものを持ってきて〜」なんて怒られてしまいそうですが、だいぶ自由な雰囲気ですね…!

ケイ:季節ごとのイベントや、仮装やメイクは、学びに悪影響がない限り、別に誰も怒らないですね。なぜそれができるかというと、目的に対する合意があるからです。

このスクールでみんなで共有している概念がいくつかあって、ベースとなるのが教育理念「自和自和(JIWAJIWA)」です。自分の自に調和の和で、自分自身もゆっくりじっくり育つし、調和とか平和とか、周囲の人との関わりもゆっくりじっくり育っていく。ゴールを急がない。そういう基本的な考え方があります。

その次にあるのが、3つの約束。憲法に相当するもので「自分を大切にする、人を大切にする、モノを大切にする」の3つ。この3つの約束に関しては入学式から口すっぱく言われるし、守らないと退学の対象になるような鉄の掟なので、子どもたちも日々意識して過ごしています。

例えばハロウィンが行き過ぎちゃって、誰かの学びの機会を奪ってしまうようなことになったら、「人を大切にしていないし駄目だよね」というのが、スタッフにも子どもたちにも共有された判断基準となっています。だから、スタッフから指摘されることもあるし、子どもたち同士で指摘し合うこともできるんだな、という風景をよく目にしています。逆にこの3つの約束以外に細かい校則はなくて、話し合って決めていけばいい。

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さらに、スピリットと呼んでいる、6つの価値観というか、目標のようなものがあります。コンフィデンス、オーナーシップ、レジリエンス、ハーモニー、ラブ、プレイフルネスの6つ。「今のは自分を大切にしてなかったね」と自分たちでフィードバックしあったり、「今回の取り組みはレジリエンスが素晴らしかった!」とスタッフが言ったり、スタッフも子どもも大切にしている価値観です。たとえば、ハロウィンであれば、3つの約束をきちんと守れている範囲であれば、「プレイフルネスを発揮した行動だね」という風にみることができますね。

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