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直島への旅

昨日の夜、旅から帰ってきた。訪れたのは直島。

直島は香川と岡山に浮かぶ島で、オリーブで有名な小豆島から豊島を挟んで西に位置している。

瀬戸内海には大小無数の島が浮かんでおり、直島は香川県の離島でも5番目の大きさだ。東京ドーム170個分と言われると広く感じるが、自転車があれば1日で島を3周くらいはできる。

実は香川の離島を訪れたのは初めてではなく、去年の夏も高松経由で小豆島に行った。その時が僕にとって初めてのフェリー、離島旅だった。

ではなぜ今回も香川の離島を目指したかというと、小豆島旅でちょっと残念だったことがあったからだ。

去年の同じ頃、8月中旬に訪れた小豆島は、とても綺麗で名所もたくさんあって楽しかった反面、「観光地」という側面が強すぎる印象だった。

島内バスは観光客で満員で、どこに行っても人がいる。勝手に抱いていた「離島」の姿とはちょっと違っていたのだ。

ではそのすぐ近くの直島はどうだろうか。小豆島に比べたら知名度はそこまでのはずだし、アート作品もたくさんある。何より、自転車で回れるというのは魅力的だった。

というわけで直島を訪れたわけだが、予想を遥かに超えて素敵な島だった。

直島はアートや写真好きが集まる島で、観光客もなんとなく「物静かだけど密かに情熱燃やしてる」感じの方が多い印象だった。騒いだりする人はあまりいなくて、カメラを首から下げて自転車を走らせ、すれ違ったら「よっ」と挨拶する。

観光客だけでなく、地元の方も優しい方が多かった。あちらから積極的に関わってはこないが目を配ってくれていて、こちらから話しかけたり困ったことがあるとさっと対応してくれる。

直島の方の特徴なのか瀬戸内の方の特徴なのかはわからないが、口数は少なめな印象だった。それでもあちらの善意は伝わるから不思議だ。

僕が持ち手のついていない紙袋を持って通りを歩いていると、近くの店からおばちゃんが出てきて、無言で紙袋を奪ってビニール袋に入れて「持ちやすいでしょう(本当は方言だったのだが、忘れてしまった)」と言ってくれたり。

島にコンビニは一軒しかないし、信号は一機しかないし、レストランや居酒屋はgoogle mapに反映されてない。

けれどその分人と人の距離が近くて、あたたかくも決して煩わしくなくて、旅行で訪れるのにはこの上ない環境だった。

直島の海。たまに魚が跳ねる以外は静か。

夜、堤防の上で星を眺めながら、直島で生活することを考えてみた。家賃は安いが食料は高い、病院は少ない、都会に出るには船に乗らないといけない、何より小豆島に比べれば少ないとはいえ、観光客が身近にいる生活。

訪ねる側、頼る側しか体験していないからなんともいえないが、住む側にとって観光は諸刃の剣だとも思う。

それに比べて、空港とフェリーの発着で通った高松は感覚的に住みやすそうだった。やっぱり地方都市で育ってきたから、同じような地方都市は空気が合うのかもしれない。

東京に戻ってきて思ったことは、人の顔に余裕がないこと、なんとなく街がくさい気がすること、歩くペースも話すスピードもエスカレーターも速いこと。日本もまだまだ広いなと思えた旅でした。


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