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自称・料理男子

僕は料理が好きだ。それなりにおいしいものを作れるとも自負している。

上には上がいることは知っているから調子に乗ったことは言いたくないが、魚をおろせるし、パンも焼けるし、鶏肉をまとめ買いして塩麹につけて冷凍している。

自炊を始めたのは大学に入って上京してきた時だから、2年半前。それまでは母親の料理を少し手伝うことはあったが、たいした料理経験はなかった。

上京してはじめてのごはんは、さぼてんのとんかつ弁当だった。1300円くらい、一人暮らしの身には結構な出費だ。「とんかつ『新宿』さぼてん」という、いかにも東京らしい看板に惹かれてしまったのだ。

もう引っ越してしまったが、東京で初めて住んだ家は陽あたりだけが取り柄の、お世辞にも広いとは言えないワンルームだった。内見と契約をオンラインで済ませたから、上京してからはじめて部屋の中に入った。

実家の自分の部屋くらいの大きさしかない部屋の中で、段ボールに囲まれてとんかつ弁当を食べた。味は美味しかったのだと思うけど、あまり覚えていない。強烈な孤独と、味気なさを感じたのを覚えている。

次の日の朝、コンビニで買っておいたおにぎりを食べ、段ボールと格闘した。たまたまキッチン用品を最初に整理していたので、キッチンだけはなんとか使えるという状況になった。

そうだ、なんか作ってみよう。調理器具は一通り使ったことあるし、そんなにひどいものはできないだろう。母からもらったユニクロのトートバックを持って、スーパーに向かった。(ちなみにこのトートバックはまだ現役だ。2Lのペットボトルが10本くらい入りそうな大きさで使いやすい。折りたたんでもかさばるのが難点)

鶏肉は捌き方がわからなかったから、豚肉の中で一番安かったこまぎれ肉を買う。それと卵とキャベツなんかを買った気がする。

もう何を作ったかわかりますか?豚肉を炒め、キャベツを適当に切り、上から卵を落とし、醤油をかけた料理。名前もない料理。

見た目も良くないし、栄養バランス的にも微妙。そんな料理だけど、あの味は忘れられない。独り言いい放題という一人暮らしの特権を行使して、「うまっ」と口にしていた。

やっぱり自分で買った食材で、自分の好きなものを作れる。温かくておいしいご飯を食べられる。できれば誰か親しい人と味を共有できる。それだけで幸せな気持ちになれる。

その日から、毎食ごとにキッチンに立つのが楽しみになった。冷蔵庫の中身が減っていって、「なんも作れないじゃん!」と言うのも楽しい。普段行かないスーパーに行って、普段買わない食材(ゴーヤとか冬瓜とか)を買ってみるのも楽しい。

インスタでは友人以外をあまりフォローしないのだが、毎朝自家製パンを食べている「ハナの暮らし」さんに衝撃を受けてフォローしたり。https://www.instagram.com/hana_sunnydays/?hl=ja

恋人の誕生日に気合い入れた料理をふるまったり。料理は僕の毎日に彩を添えてくれている。今日は何を作ろうかな。

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