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【創作】イノセント・ベイビーハック(Innocent Baby Hack)【ショートショート】

「今日の天気。晴れ、時々ヨダレでしょう」

グラッとした不愉快な揺れで、私は眠りから覚醒した。
目のピントが次第に合うと、窓ガラス越しに外の景色が見えた。
遥か彼方まで続く山々は、不思議と濃い霧に包まれていた。
季節は春。だけれど、時期外れの暑さが猛威を振るっているようだ。
つけっぱなしのテレビから聞こえる天気予報は、嫌というほどにこの現象を誇張している。
けれど私は知っている。今日の気温は10年に1度だが、0.1度違いでは3年前と同じだ。

私は窓辺から部屋の中に目を向けた。
人工知能である私の「脳」で、部屋の情報を瞬時に処理する。
部屋の中央には、一脚の椅子が置かれている、そこに私の創造主にして「父」とも呼べる初老の男性が腰掛けていた。
男性は私に背を向けており、その後ろ姿からは相応の歳月が感じられた。
かつては純黒だったであろう髪には、所々に白髪が交じり、年齢を物語っている。しかし、背筋は伸びており、衰えを感じさせない。
男性は振り返り、優しい目で私を見つめた。「もう起きたのか」

いつもの優しい声だが、今日は少し雰囲気が違った。
「はい。でも今日は随分とラフな格好ですね」
この人のアイデンティティとも言える白衣はどこへやら、見たこともないアロハな佇まいだった。
フッと笑い、正面を向いた。答えてはくれなかった。
この人はいつもそうだ。気まぐれで、しかしはっきりとした理由がある。
昔、確かこんなことを言っていた。「人間の行動全てには必ず意味がある。その真意を捉えられるかが鍵なんだよ」と。

今日は、そう、暑いから。だからそんな格好なのだと、私はそう思った。
けれど、それは口には出さない。きっと間違っているから。人間はそんな単純じゃないから。
ふと目に入ったカレンダーは、先月のままだった。手を伸ばし、カレンダーを切り取る。
2075年4月ーー今日の日付には既に丸が付けてあった。
「そうか」と私は小声で納得した。
カレンダーの横には、今時は珍しい印刷された写真が飾ってある。
黒髪の「父」と、私とそっくりの「オリジナル」が写る写真だ。

「2072年4月の今日だったな」
不意に後ろから声をかけられ、驚いて振り返った。
そして笑いながら私の目を覗いてきた。その瞳に映る私の顔は、写真の少女に瓜二つだ。
何をすべきか、それはわかっている。けれど、まがいものの私にはその勇気が出なかった。
「カレンダーの裏を見てごらん」
言われるがままにカレンダーの裏を覗いた。
おしゃぶりが貼り付けられていた。
「そのチケットで本当は遊園地に行くはずだったんだ」
なんだろうか、これは。私は固まってしまった。
話が繋がらない。何をどう合わせればいいのか……。
そう思案する中も会話が続く。
「俺は、お前を別にまがいものだとは思わない」
その言葉に、私の心は大きく揺さぶられた。
その時、今まで感じたこともない激しい揺れが襲った。
私は咄嗟に「父」を庇おうと手を伸ばしたが――

だぁ!!!

***

「あぁ! 何やってるんだ……全く預かるんじゃなかったよ」
部屋の中央では、ミニチュアの世界が投影されていた。そこでは、潰れた人間と、怯える少女が倒れている。
はむはむと、赤ん坊が愛らしい笑顔で『脳波de AI物語シリーズ vol.5 博士と少女』と書かれたパッケージの箱をかじっていた。
「しかし、こんなにめちゃくちゃにできるんだな」
男は呆れたように頭を掻いた。このシリーズは脳波で物語を改変できるが、倫理的な逸脱は強く制限されているはずだった。
だが、目の前の光景は、その常識を覆していた。
「なるほどなぁ……これは凄い発見だ」
男は、悪戯っぽく笑みを浮かべると、エージェントAIに指示を出し、電話をかけた。
「え? 子ども嫌いじゃ無かったかだって? ああ、そうだったが、いや、考え直したよ。もう少し預かってもいいかなって」
子どもの無邪気さってのは偉大だな。すぐに飽きるかと思ったが、まだまだ遊べそうだ。
逃げ回る何かを潰そうと躍起になる赤ん坊を見つめながら、男はニヤリと微笑んだ。




この物語のタイトルはclaude 3に考えてもらっています。
ChatGPT-4にも見せて両方からフィードバックをもらって修正しています。
見出し画像はChatGPT-4経由のDALL-E 3で、最近あまり出番が無かったPhotoshopの生成AI機能も活用しています。(少女の合成箇所)

当初のコンセプトとしては、とにかく「不条理」の物語にしようと考えていました。さらにイメージとしては、「ファニーゲーム U.S.A.」という映像作品がありました。しかし、結果それとは全く違うものになりましたね。

作中作の方は、より温かみがある雰囲気にしたかったのと、対して現実世界の方はもっとドライにしたかったです。

脳波de AI物語シリーズ(Brainwave Directed AI Story Series)

「脳波de AI物語シリーズ」は、インタラクティブな物語体験ができる近未来のエンターテインメントシステムです。ユーザーの脳波を読み取ることで、物語の展開に影響を与えることができます。(インタラクティブ・AIフィクション)

シルバニアファミリーのようなミニチュアの世界で、自律的に動くキャラクターたちが物語を紡ぎ出すイメージですが、より没入感の高い体験ができるようになっています。

具体的な遊び方としては、以下のようなステップが想定されます:

  1. ユーザーは専用のデバイス(ヘッドセットなど)を装着し、脳波を測定できる状態にする。なお、本作中では部屋の天井から脳波を読むタイプとなっています。

  2. 物語のジャンルやテーマを選択する。本作中は「博士と少女」というテーマ。

  3. ミニチュアの世界が投影され、物語が始まる。最初はAIが自律的に物語を進行させる。

  4. ユーザーは物語の展開を見ながら、感情や思考を巡らせる。脳波の変化が測定され、AIがそれを解析する。

  5. ユーザーの脳波に応じて、AIが物語の展開を変化させる。例えば、ユーザーが驚いたり、疑問に思ったりすると、物語にそれに対応する要素が追加される。

  6. ユーザーは自分の感情や思考が物語に反映されることで、よりインタラクティブで没入感の高い体験ができる。

  7. 物語は、ユーザーの脳波次第で毎回異なる展開を見せ、リプレイ性も高い。

ただし、倫理的・道徳的に問題のある展開は制限されているはずです(本作ではこの設定が赤ん坊の介入で破られています)。

なお、あまりに制限が強いため売れ行きは芳しくない設定です。

おまけ(フィードバックなど)

Claude 3(抜粋)
ChatGPT-4

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