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[SaaS企業(秘)]作る前に売って、売ったお金で開発する

こんにちは。今日は前回のエントリーとは反対の(でも根っこではつながっている)プロダクトアイディアの出し方を紹介します。

共同創業者との数ヶ月にわたる新規事業ブレストを経て生まれたサービス

私の友人Kはアメリカで2社目のベンチャーを立ち上げています。彼は2社目を立ち上げる際、「誰とやるか」をまず決め、共同創業者と数ヶ月にわたってデザイン思考のフレームワークを使い、フルタイムで事業アイディアのブレストを続けました。

スタンフォード大学d.schoolが提供するデザイン思考メソッドの詳細についてはこんなのが参考になります:https://dschool.stanford.edu/resources/founding-principles         日本語版資料はこちら:            https://www.cmc.is.i.nagoya-u.ac.jp/~mase/lectures/bootleg.pdf

彼らがとったアプローチはこんな感じです:

1.各々、身の周りにある課題、解きたい問題のテーマを書き出す

2.3人の興味が重なり、そして10年後になっても飽きずに問題に取り組めると確信できた課題に絞る

3.その課題をデザイン思考のフレームワークを使ってユーザー理解からプロトタイプ作りまでのサイクルを回す

4.できたプロトタイプを売ってみる

このプロセスを5−10個の課題テーマに大して、数ヶ月間、フルタイム(=本業の仕事はやめて)で新規事業創出に取り組みました。

課題ドリブン(マーケットイン)か技術ドリブン(プロダクトアウト)か: 新規プロダクトを創出する場合、解く課題(世の中で困っていること、ニーズ)をブラさずに考えた方がいいのか、はたまた自社の技術・アセット(もしくは創業チームの得意なこと)をブラさずに考えた方がいいのでしょうか?これは、チーム(会社)と業界によるところが大きいと思います。新規事業は思った通りにならないことがほとんどで、いざ始めたら事業内容もプロダクトも様変わりしていきます。それを前提とした時にブレずに目指す先、北極星はどこなのか、「何があってもこの課題を解決したい」なのか、「何があってもこの技術を世に出したい」なのか、は事業を始める前に考え抜くべきです。どちらがブレない北極星であったとしても、事業が辛くなった時に歯を食いしばって頑張れるだけの強いゴールであれば、事業を続けることができます。そして続けた方が成功します。友人Kは10年後もワクワクする課題をノーススターにしましたが、技術ドリブンで成功しているプロダクト・企業もたくさんあります。

検討した課題の一つがユーザーから上がってくる情報を効率良くプロダクト改善に生かすのはいまだに難しい、というものでした。友人Kは一社目の起業で企業向けに社食ランチを配達するデリバリーサービスの会社を運営していたのですが、そこで毎日何百件とくるお客さんの問合せ・フィードバックから大事なものを抽出して商品に反映するところに苦労していたのが原点にあったそうです。

作る前にまず商品を売ってみる

Kたちは知り合いを伝って、様々なサイズの企業のカスタマーサポート部門やプロダクト開発部門にインタビューを申込み、実際のニーズを探ってみました。すると、一定の規模以上になると実際に苦労しているケースがたくさんありました。そこで彼らは「カスタマー問合せ内容をAIで分析し、インサイトをまとめてくれるサービス」を作る前から売ってみることにしました。始めはAIなどなく、裏の分析は全て人力です。そして、これはAIサービスの多くに言えることですが、少なくとも始めの分析はAIよりも人間がやった方がずっと精度が良い結果がでます。(人力で分析してみてわかった大事なパラメーターを拾って、そこからAIのアルゴリズムを作っていきます。)そこで、最低限のサービスのガワだけ作って、裏は人力でビジネスに長けた創業メンバーが分析して結果を返すサービスを売ってみたのです。

結果、良く売れました。一社目の顧客として、シリコンバレーで飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びていたSlack社がついたので、そこから一気に5社ほどお客さんがつき、会社として1年目で黒字化しました。そこから人力サービスの横でAI開発も進め、徐々に人力部分を置き換え、商品機能を足していきました。(ちなみにAIの場合は、データが手に入らないことには開発も満足にできないので、顧客をはじめからとることがますます重要になります。)

売ってから売る一番のメリットは開発コストをかける前に作る価値があるかどうかが明確にわかることです。まずは売ってみて、人力で追いつかなくなったものからコンピューターに置き換えていくわけですから、リソースを投じたのに使われなかった、売れなかった、というリスクが減ります。そして、収入が始めから入ることで、会社(事業)としての資金繰りに困らないのももちろんとても大きなメリットです。

前回会ったとき(起業から2−3年経った頃)、Kはまだ会社としてはプロダクト・マーケット・フィットを探っているところで、いろいろなプロダクト修正を繰り返しては検証を続けていると話していました。ニーズに刺さるプロダクトに至るまでには時間がかかるのです。その時に会社(事業)が黒字化していればそれだけ会社(事業)の寿命が伸びます。それでも最後、思うところまで伸びるかは分かりませんが、少なくとも長く続けるだけ、成功の確率が高まります

もし、考えているビジネスアイディア・プロダクトアイディアがあったら、とにかく想定しているお客さんに売ってみてはいかがでしょうか。売ってみたらそれだけで視界がひらけてくると思います。

プロダクト立ち上げ当初は全ての問合せに目を通すべき: 余談ですが、プロダクトをローンチした当初は社長・事業責任者が全てのカスタマーサポートに目を通すべきだと思います。可能なら全ての回答も自分でやった方がいいと思います。感覚的に1日100件くらいまでは自分で全てやった方がプロダクトへの反映サイクルが早くなり、CEO/事業責任者としても結果として質の高い経営判断ができるようになります。

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