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忘れたくない瞬間を、うんとたくさん覚えておこう。

あぁ。今日も娘はかわいかった。
こんなにかわいい生き物と、24時間一緒に過ごせるなんて。

在宅勤務with 3歳児、大変だと思うことはある。
そりゃ、ビデオ会議で私がパソコンに向かって話しかけていけば気になってしまうよねって思う。

でも私より娘の方が大変だ。ホールや園庭で駆け回ることもできず、一緒に遊べるお友だちもいないのに、私にも一緒に遊んでもらえないんだから。

おままごとキッチンで作ったお弁当をリュックサックに入れて、お人形さんを抱えて「ピクニックに行こう~」と寝室へ出発。レジャーシートに見立てたブランケットを広げて「着いたわよ~」と一人遊び。ふと寂しくなったのか「ママのお膝がいい」と言って、私によじ登ってくるのは、愛おしい。

パソコンの画面は見えなくなるし、キーボードも打ちにくくなってしまうんだけれど、娘のやわらかい髪が私の頬に触れ、子ども特有のあまい匂いがやってくると、そんなことはどうでもいいか、と思ってしまう。

あぁ。この髪の感触も娘の匂いも、忘れたくない。

***

昼休みに、すっかり葉桜になった桜並木を散歩した。先週までは、すっかり桜の花びらが絨毯みたいになっていた地面も、今日はもうほとんどなくて、花を失ったガクと軸の抜け殻だけ。

歩いていると、娘がガクの部分で折れてしまった抜け殻を拾い、こう言った。

「かわいそう。どうして、元気がないの?」

花びらもついていないような軸を拾うことも「元気がない」なんて表現することも驚いた。

「そうだねぇ、地面に落ちて誰かに踏まれちゃったのかもね」と答えると、

「そっか。お家に持って帰って、お水をあげるからね、待っててね」と、しおれた抜け殻に声をかけていた。

道端の花を「きれいだね」と手で撫でる姿を見たときも思ったけれど、この濁りのない清らかな世界はなんなんだよ…。

あぁ、忘れたくない。この言葉も仕草も、その表情も。

***

いつか憎まれ口を叩く娘に「昔は、こ~んなやさしい子だったのにねぇ」と投げて「そんなの知らない!覚えてないし、小さいころの話でしょ!?」と言い返される日が来るのだろうか。

私が母とよくやりあったような、あのやり取り。

でもそんな“小さいころの話”を、とっさに話に出していた母はきっと「忘れたくないなぁ」の連続だったんだ。いま、日々私が感じているような瞬間の。

娘との生活は、母が私に向けた眼差しを辿ることでもある。

よし。私も、おトシゴロになった娘に「そんなの知らない!子どものころの話でしょ!」と毎回言われちゃうくらい、うんとたくさん覚えておこう。

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