部室のない部活動

高校時代、私は部室に憧れていた。部活なんかしたくはなかったが、部室は欲しかった。仲間内だけで集まる場所なんてのは持ってて楽しいに決まっている。幼少期に誰もが秘密基地に憧れるように、高校時代の私は部室に憧れを抱いていたのだ。

高校2年の夏、僕は卓球部に入った。僕のような笑って過ごせれば一番良いじゃないかという考えの仲間ばかりだったからだ。それに、練習もしなくて良いという。まぁ、これは嘘であったが。
こんなことから部活動を始めたのだから念願の部室が手に入るものだと思っていた。

しかし、何故か僕らが着替える場所は体育館裏の階段の踊り場やら体育館の空いてるスペースやらなのだ!
このことを不満に思いY部長に話すと「あー、顧問の先生が鍵持ってんだよね。気が向いたら取り行こうかな。」などと言って全然取りに行く気がない。

彼は、部室の良さが何一つとして分かっていないようだった。階段の踊り場や体育館の空いてるスペースなんかは公的な場だ。それじゃダメなんだ。基本的に仲間しか行かない場所。それだから価値があるというのに。
・・・と言うふうに当時は思っていた。

しかし、今、あの楽しかった放課後を思い出すとあの階段の踊り場や体育館の自販機前のソファなんかを思い出す。あそこで彼らと愚にもつかない話を沢山した。

秘密であるということも大事なのだろうが、そんなことは仲間といたということに比べれば大事な要素ではないようだ。

あのくだらない話が出来さえすればどこでもよかったんだ。集まる場所が特別な場所になるんだ。

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