見出し画像

第1回チキチキ!今年最もクサかった映画選手権!!『キリエのうた』

(C)2023 Kyrie Film Band

路上ミュージシャンのキリエは、歌でしか声を出すことができない。ある夜、過去と名前を捨てたイッコは、キリエの歌を聴きマネージャーを買って出る。彼女らは石巻、大阪、帯広、東京で歌を紡ぎながら、過去にとらわれた青年や、人の傷に寄り添う女性に出会う。

(C)2023 Kyrie Film Band


ネタバレ感想

 今年見た映画の中で最もクサい映画である。正直言って『バスジャック』のクサさが霞むくらいにクサい。広瀬すずと演じるキャラクターがマッチしていない様に感じ、演技、特に言葉づかいに非常に違和感を感じた。
 そして、アイナ・ジ・エンド(以下アイナ)が演じるキリエは引っ込み思案で、震災によるPTSDで声がでないというキャラクターなのだが、名刺等に書かれている文字がいちいち中二チックなのがクサさを際立てる。
 その上3時間近くあるのでハマらなかった自分としてはなかなかしんどいと感じた。
 作中を通して謎キャスティングが目立つ。樋口真嗣や粗品さらには武尊が物語の進行上関係なくチョイ役で登場する。過去には庵野秀明も出演していたが意味もなくそういったキャスティングをされると逆にノイズになってしまう。新海誠の登場もそう遠くないだろう。
 広瀬すずの女を武器にした生き方を否定していたにもかかわらず結婚詐欺という女の武器をフル活用した生き方をやっているというのは皮肉が効いていて面白かった。
 松村北斗の起用は『すずめの戸締り』由来でしょうな、どちらも震災テーマだし。

臭いの元

 この映画のクサさは一体どこから来ているのだろうか、その臭いの元について考えていきたい。
 メインキャストの広瀬すずとアイナが演じる役のキャラクターにリアリティを感じられず、言うなればアニメ的なキャラクターであり、実写で演じることで生まれるギャップが最も大きな要因であると考えられる。
 また、江口洋介やロバートキャンベルたちの意味のない謎議論、なんですかあれ。庵野秀明のようなハッタリ台詞を意識しているのかもしれないが、そこもなんともアニメ的でクサいですね。
 終盤で広瀬すずが暴漢に刺されながらもライブ会場へ向かうシーンがあるのだが、スローにしたり長尺だったり、音楽だったりとやけにドラマチックにしようとしてるのが逆にチープに見えてしまう。

個人的好きじゃないポイント

 この映画は3.11東日本大震災が大きなテーマの一つとなっている。キリエは当然被災するのだがその際のやり取りにとてもイライラした。津波が来てるのにも関わらず呑気に恋人がどうとかフィアンセがどうとか緊張感がなさすぎる。まぁその結果の、、、なんですけど。
 もう一点、終盤の路上音楽フェスで許可をとっておらず、警官からの撤去要請に抗いライブを決行するシーンである。自分たちの不用意が招いた結果のくせに止めに入った警官をスマホで録画したりと権力へのしょーもない反発が見苦し過ぎる。

まとめ

 この記事を読む人の中には「全然理解出来ていない!」などと怒りを露わにする人がいるかもしれない。私自身、岩井俊二作品は今作が初であるため、これが岩井俊二節だというのなら私には岩井俊二作品は向いていないのだろう。
 作品の好みは置いておいて、キャラクター造形や演出などから90年代サブカル亡霊の姿を垣間見ることができた。
 この作品は後にも先にも岩井俊二のフェティシズムの発散とアイナのキャリアアップのための映画でしょう。最近で言うところの『竜とそばかすの姫』のように。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?