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真のニーズはユーザーに聞いてもわからない?少し先の未来の新サービスを企画するためのリサーチとは

こんにちは!株式会社NTTデータのデザイナー集団「Tangity」の内野です。主にリサーチを担当しています。

リサーチは、デザインアプローチを活用したサービスづくりの序盤に、「ユーザーを知る」ために実施します。
今回の記事では、「現在よりも少し先の未来(1、2年後)のユーザーに向けたサービスをつくるためには、どのようなリサーチをすればよいのか」について書きたいと思います。

少し先の未来のユーザーニーズを予測するのは難しい!

コロナ影響下でユーザー行動やニーズは大きく変化しました。

私自身も、自宅で過ごす時間が増えたことで料理への意欲が高まったり、部屋のインテリアに凝り始めたりと、さまざまな意識や行動の変化が生まれました。
去年の今頃は、今の自分の姿を想像すらしませんでした。料理苦手だった私が、まさか食材や調味料のお取り寄せサービスまで利用することになるなんて……。

今回のコロナ禍のようなイレギュラーな出来事はそうそう起きないにしても、現代ではテクノロジーの進化によって予測不可能なことが次々と起こります。その中で、少し先の未来のユーザーニーズを予測することは、非常に難しくなってきていると、業務を通じて実感しています。

ユーザー自身も、少し先の自分のニーズはわからない

例えば、小売業界の×年後を見据えて、少し先の未来の買い物客に向けた新サービスを企画することになった場合。

買い物客に受け入れられるサービスをつくるために、以下の考えのもとで買い物客にインタビューをしたとします。
・まずはとにかく買い物客のニーズを知るべし
・買い物客の声を新サービスに反映すべし

今の買い物客からはおそらく、

・「人が触った商品には触りたくない」
・「まとめ買い客が増えて、レジが混雑するのがうんざり」
・「レジ袋が有料になって不便」

……といった、今ならではの、さまざまな声が聞こえてくると思います。

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新サービスをつくるうえで、買い物客の今の声を反映することは重要ですが、×年後の買い物客が望んでいるのは、おそらくそれだけではありません
今の買い物客が想像もしないようなことを、×年後に強く願っている可能性もあります。

例えば「レジ袋が有料になって不便」といった声について。レジ袋有料化が義務化されることは2019年6月に決まりました。しかし、2019年11月の段階で、買い物客の6人に1人はその事実を知らなかったそうです。
つまり、買い物客の6人に1人は、それから約1年後の現在の自分が、「レジ袋が有料になって不便」と思う可能性があるなんて、想像もしていなかったことになります。

このように、買い物客は、少し先の未来の自分が、どのような買い物体験を求めるようになるかについて、あらかじめ予測することはできません
今後の自分の買い物体験に影響を与える外部要因(法律や最新技術の動向の変化等)について、すべてを把握しているわけではないためです。

まずは、エキスパートに聞いてみる

×年後の買い物客のニーズを知るためには、買い物客の体験に影響を与える可能性のある外部要因について知ることが重要です。
例えば、小売業界の動向に詳しいエキスパートに、これからの×年の間に小売業界がどのように変化するのかについて尋ねてみると、知りたいことに対する答えが得られるかもしれません。

・小売業界のビジネスを規制する法律や政治動向
・小売業界の景気動向や各企業の成長状況
・小売業界の流行・トレンドや世間の動向
・小売業界の最新技術の動向や技術の普及度

エキスパートから聞いた内容をもとに、×年後の小売業界をイメージしながら、きっとこんな世界になる!と絵やストーリーに起こしておくと、あとからイメージのすり合わせがしやすくなると思います。

そして、今のユーザーを観察してみる

次に、今の買い物客の行動を観察します。
観察の対象者は、一般的な買い物客と比較して、自分を取り巻く環境の変化に敏感で、やや極端な行動パターンやこだわりを持った買い物客のほうがいいと思います。

例えば、以下のような人たちです。

・スーパーで購入した商品のうち、人が触った可能性があるものはすべて洗浄や消毒をしている人
・完全キャッシュレス派で、カードが使えるお店だけを選んで買い物に行っている人
・フルタイム勤務のシングルマザーで、激務であっても必ず毎日自炊をしている人

×年後のサービスをつくるためには、まだほとんどの人たちが気づいていないような本質的な課題を発見する必要があります
何かしらのこだわりを持ったユーザーに注目することで、常識や固定観念に囚われない、思いもよらない気づきを得られる可能性が高まります。

こだわり派の彼らが、普段の買い物時に無意識的に行っている行動を観察し、これはちょっと変わっているな、何しているんだろう、と感じるような行動をピックアップします。

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その上で彼らに対して、インタビューしてみます。

・なぜ、そのようなことをしているの?
・どういったことがきっかけで、そのようなことをすることになったの?
・それは本当にやりたいことなの?
……などなど

ここまで来ると、少なくとも、こだわり派の買い物客の「今のニーズ」については見えてきます。

最後に、少し先の未来のユーザーを想像してみる

×年後の小売業界のイメージ」と「こだわり派の買い物客の今のニーズ」の両方が揃ったら、×年後の小売業界に今の買い物客が降り立ったと仮定して、買い物客のニーズがどのように変化するかを想像してみます。

今の買い物客が抱いている課題のなかには、小売業界自体の変化とともに、×年後には自然と消滅するものもあると思います。業界への技術の浸透とともに、新たに生まれるニーズもあると思います。
買い物客の体験に影響を及ぼす可能性のある外部要因と、買い物客のニーズや行動とをひとつひとつ紐づけ、「このような環境変化があれば、ユーザーの意識や行動はきっとこう変わるだろう」と想像しながら、今の買い物客のカスタマージャーニーを少しずつ修正し、×年後の未来仕様へとブラッシュアップしていきます。

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ここまで来ると、少し先の未来の買い物客に向けた新サービスを企画する際の、未来の買い物客のニーズを知るためのリサーチは(いったんは)完了です。
未来予測の精度を上げようとすればするほど、リサーチすべき対象は広く、結構(かなり?)大変だと思います……。

リリース後にユーザーの声を聞きながら最適化する

どれだけ未来予測の精度を上げようと試みても、今回のコロナのような予測不可能な事態が発生すると、その段階で企画の方針転換を余儀なくされます。
サービスづくりは、事前のリサーチをどれだけ念入りにやったとしても「実際にサービスをリリースしてみないと、ユーザーに受け入れられるかどうかはわからない」状況は常につきまといます。

そのため、仮にユーザーから100点満点中50点の評価しか得られなかったとしても、市場の反応やユーザーの声を聞きながら、持続的にサービスを改善するんだという割り切りで、まずはとにかく思い切ってサービスをリリースしてみることも重要です。

それでも私自身は、リサーチを担当する1人として、リリース段階でせめて70点の評価を得られるように、またリリース後も100点に近づけられるように、つねに市場の変化やユーザーの行動の変化に敏感であり続けたいと思いながら、日々業務に取り組んでいます。

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